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銃火のオシナー  作者: べりや
終章 東方大演習
110/126

疑念【アウレーネ・タウキナ】

「失礼いたします」



 タウキナ連隊の司令部を訪れた騎士には見覚えがあった。

 確か、ヘイムリヤ・バアルと言う名のはずだ。



「夜分遅くに申し訳ありません。事態が急変致しました」

「と、言いますと?」



 重い口調に幕僚達も先ほどまでの眠気を吹き飛ばし、緊張した視線をバアル様に注ぐ。

 もしかして父上――現王陛下の無事を確かめられたのだろうか。



「モニカ支隊長を護送中だったホルーマ第三連隊が謀反に加担したようです」

「それは連隊ごと、と言う事ですか?」

「えぇ。捕虜の受け渡しを迫った所、拒絶してきました。その上、こちらの軍使に向けて発砲してきたので、逆賊である事は確かかと」



 地図に視線を向けてクワヴァラードの北に位置するホルーマに赤い駒を置く。

 確か、連隊の常備戦力はおよそ二千名。タウキナ連隊と東方第一猟兵連隊、そして近衛連隊を旅団へと編制変えを行えば数的有利が確定するだろう。



「敵は打って出て来ると思いますか?」

「恐らくは……。今はクワヴァラードの守りを固めて頂きたいと、殿下は仰っておられます」

「分かりました。ホールマ方面に重点的な陣地を構築しようと思いますが、作業はどうしても明日になるかと」



 「その旨、殿下にしかとお伝えいたします」とバアル様は司令部を後にされた。

 さて、防衛計画を一から策定しなくては。



「よろしいでしょうか、大公殿下」

「参謀長、発言を許可します」



 参謀長は一度、司令部の入り口に目を移して東方の関係者が居ないか探る様な挙動をしてから「自分は、東方第一連隊を疑っています」と言った。



「第一連隊は陛下の安否が分からなくなってからの動きが異様に早いと思います。その上、我々タウキナ連隊の騎兵があると言うのに、東宝辺境姫殿下は反逆者であるモニカ支隊の捜索は東方で行う、の一点張りです。

 もしや、モニカ支隊と接触されてはまずい事でもあったのでしょうか」

「……考えすぎでは無いでしょうか。それを断定する材料が足りません」



 だが、確かに不審に思う点はある。賊の砲兵陣地に回転式拳銃が残されていたと言うが、あのモニカ支隊がそのような下手を打つだろうか。

 それに東方は現王陛下の政策転換で未来が切り開かれたと言うばかりなのに、その陛下に背く理由が分からない。

 首謀者として捕らえられているオシナー様の事も気になる。何度か、お姉さまに面会を求めたのだが、やはりそれも取調中と言われ、その進展も報告されていない。

 あまりにも情報を閉ざしているように思う。兵に混乱を与えないため? いや、それにしても限度と言うものがある。



「明日、第三王姫殿下に色々と聞いてみましょう」



 今はそれしか無い。そして漠然とした不安を抱いたまま夜が明ける。

 兵達には念のためホルーマに通じる街道への警備の強化と野戦築城の実施を命じた。ここで疑心暗鬼になっても仕方がないし、上が立場を明確にしなければそのしわ寄せが部下に来てしまう。それだけは避けたい。

 そのため幕僚達も渋々とだったが、陣地転換に取り掛かりだした。その時、お姉さまからの使者が現れた。使者は東方第一連隊第二騎兵大隊長を務めるコレット・クレマガリー少佐と名乗り、お姉さまからの書状を差し出した。



「任務ご苦労様です。この書状――いえ、命令書によるとお姉さまがタウキナの陣地を視察されると記されているけど、最前線となるかもしれない場所をお姉さまは視察されるの?」

「あたしは命令書を殿下にお渡しするよう言われただけなので」



 その顔から嘘は読みとれなかった。

 昨夜は私からお姉さまの下に赴こうと思っていたのだが、視察の準備や調整を考えると出来そうにない。それよりもお姉さまがこちらに来られると言うのなら、その時にでも色々と聞いてみよう。



「分かりました。では返事を書くのでどこかにかけてお待ちください」

「失礼します」



 インク壷と羽ペンを雑多な机の上から探し出し、それから紙はどこかと探しているとクレマガリー少佐が身じろぎしながら座る場所を探している事に気が付いた。



「あら、ごめんなさい。この司令部だと手狭ね……」

「いえ、まぁ、司令部が小さいんじゃなくてアタシが大きいだけですし。――ここに暮らし始めた時は不便のあまりに脱走を考えましたよ」



 カラカラと笑う声は逆賊騒ぎで重くなっていた心をほぐしてくれるようだ。

 だが、彼女の言葉には他の種族と共存する上での難しさが滲んでいるように思えた。



「人間との暮らしは不便?」

「今はそれほどでも。まぁ、人間でも良い奴も居ますからね」



 『人間でも』と言う言葉に幕僚の一人が眉をひそめる。

 それに気づいたのか、クレマガリー少佐の顔に「やべ」と気まずさが滲むのを見て思わず苦笑してしまった。



「あの、何か?」

「いえ。他種との共存とは難しいものだと思いまして。それでも、いずれそれが叶う未来もあるのだろうなぁ、と」



 「そうですかね」と吐き捨てるような口調には先ほどの爽やかな笑みは無かった。



「この先、どうなるやら。モニカ中佐が謀反だなんて信じられませんが、それが本当なら、東方政策が再々転換されるんじゃって」



 そんな噂が流れている事に驚いた。

 だが、実際に彼女、彼らは人間による支配の時代を生きてきたのだ。

 それを多くの血を流して覆し、今の自由を手に入れた。

 故にその流れた血が無駄になる事を恐れている。



「それは、ケンタウロス騎兵での噂?」

「え? いや、さぁ? あたしの部隊では聞きますが、余所はどうだか。なんか、すいません。愚痴となってしまいましたね」



 「お気になさらずに」と返すと、ちょうど紙を見つけられた。

 それに必要な事を書き込んで封をする。



「確かにお預かりします」

「お姉さまによろしく言ってください」



 見事な敬礼をして去るケンタウロスの背中を見送ると、幕僚の一人が「連隊が怯えている」とこぼした。



「それは、どういう意味で?」

「東方政策が再々転換する事にです。そうなれば東方連隊の多くは奴隷とされるでしょう。

 故に連隊は逆賊となる事を恐れるはず――つまり王権の命令が絶対となるはずです」



 王権の命令が絶対。東方唯一の王の血を引く第三王姫殿下に確固たる忠誠が誓われる。

 なら、どうしてホルーマ第三連隊は裏切ったのだろう。

 逆賊となればそのもっとも恐れる奴隷となるかもしれないのに……。



「参謀長。司令部の歩哨を増やしてください。それと、司令部の天幕を閉じて外に話が聞こえないように計らってください」



 これは、何かがおかしい。






「野戦築城は順調か?」

「はい、第三王姫殿下」



 バタバタと青い外套の裾が揺れる。

 対してお姉さまは深紅のマントに白銀の鎧という戦装束。お寒くは無いのだろうか。

 寒さが緩んできたと言って、今朝はめっきり冷え込んで霜が降ってしまった。それが今日の太陽に照らされて泥へと変貌し、ブーツを汚す。



「塹壕のぬかるみが何とかなれば、部下の負担も減ると言うものですが……」

「フン。簡易の築城でそこまで高望みするな」



 グチャグチャと音を立てながら冷たい塹壕を歩いていくと、塹壕におかれた野戦司令部が見えてきた。

 木の板で周囲を囲っただけの急造の家屋だが、それでもこの泥達から解放される事に安堵する。



「任務ご苦労。頼むぞ。奮闘を期待している」



 その司令部に行く道すがら、お姉さまは敬礼をする兵一人、一人にそう声をかけていった。

 一国の姫君からかけられる声援に兵達の顔色も明るい。



「お姉さまのおかげで兵達の志気も上昇するでしょう。感謝を申し上げます」

「フン。姉と呼ぶな」



 野戦司令部の扉をあけると、ムッとした煙が流れてきた。

 生木を燃やして暖をとっているんだな。



「諸君。任務ご苦労である」



 開口一番に放たれたお姉さまの声にこの塹壕を守備する大隊司令部が一気に起立して敬礼をした。



「楽にせよ。状況はどうか?」

「僭越ながら自分がご説明させて頂きます」

「名は?」

「失礼しました! 第三大隊大隊長、クリューゲル・ハルトマン大尉であります!」



 ハルトマン大尉はタウキナ連隊の中で唯一のエルフの士官だ。彼の顔にはここで下手をすれば逆賊として処断されるかもしれないと言う緊張が見えた。



「現状は静かなものです。殿下の布告された戒厳令のため、商人も少ないです。ただ、ここを通る商人によるとホルーマ第三連隊は集結を完了し、南下していると聞いております」



 お姉さまは「そうか。任務に励め」とハルトマン大尉の手を握られた。

 それにハルトマン大尉の白い肌が紅潮する。



「一命に代えても、本陣地を守備する所存であります!」



 それに鷹揚にうなずくと、お姉さまは次の視察地に足を向けられた。

 野戦司令部を出て、それから兵が周囲にいない事を確かめて、切り出す事にした。



「お姉さま――」

「だから姉と呼ぶのはやめろと言うてろう」

「申し訳ありません。あの、お聞きしたい事が……」



 素っ気なく「なんだ」と言うと、お姉さまも周囲に視線を向けた。



「現王様を襲撃した賊が残した回転式拳銃ですが、お姉さまの手元にあるのですよね」

「それがどうした?」

「返して頂けませんか?」



 お姉さまが立ち止まり、「何故?」というう視線が私に突き刺さった。



「あれは元々、タウキナがモニカ支隊に試験として貸与(・・)したものです」



 ごめんなさい。正確にはモニカ支隊に試験採用してもらったものだ。

 だが、どうしてもその回転式拳銃を回収しなければならない。



「それに、あれも試作品が成功すればタウキナの商品として大々的に売り出そうと思っていたものです。

 それがモニカ支隊の反乱でその名に傷がついては……」



 言葉を濁すように言うと、お姉さまは「優しいだけのお前が銭勘定に執着するとはな」と笑われた。



「あれは近衛連隊に引き渡した。王都に持っていって議会で使うのだ」



 議会に?



「第二次東方平定だ。議会に東方の不義を打ち明け、討伐軍を派遣してもらう」



 そのための証拠を近衛連隊に――?



「近衛連隊の司令部は、今、どこに?」

「昨夜、クワヴァラードに移したが、どうした?」

「いえ、ただ、現王陛下の安否が知りたくて……。この視察の後、状況を聞きにいこうかと思っております」



 「父親思いだな」と皮肉るような答えが返ってきた所でお姉さまは歩みを再会された。



「そう言えば、オシナー様はどうなのです?」

「何度も聞くな。依然取り調べ中だ。だが、陛下を害した首謀者に相違無い事がわかってきた。明日にでも、処刑だな」



 次の野戦司令部が見えてきた。



「処刑? いくらなんでも、早いのでは? 司法卿に引き渡して、厳正な審議を経るべきではありませんか?」

「下手に長生きさせると新派が増えるやもしれぬ。仕方の無い事よ」



 その冷えきった言葉と共に野戦司令部の扉の前に立っていた歩哨が捧げ銃をしてくれた。

 それに答礼してお姉さまが司令部に歩み寄る。



「――? どうした。うぬは入らぬのか?」

「その司令部は手狭ですので、私は外に待機しております」

「そうか」



 そうして司令部の戸が閉まる。それと同時に近く兵用の外套を着込んだタウキナ連隊の幕僚が近づいてきた。



「回転式拳銃は近衛連隊司令部が保管しているそうです。連隊司令部はクワヴァラード近郊」

「了解しました」



 どうしても気になっていた。

 モニカ支隊が反乱を起こす可能性は低い。

 それなのにモニカ支隊が所持しているはずの回転式拳銃が現場に落ちていた。


 解せない。


 故にその証拠を改めなくてはならない。だからこうして幕僚を送りだした。



「――く、フハハ。では任務に励め」



 扉があけられると、どこか宰相閣下のような作りものの笑顔をしたお姉さまが出てきた。だが、宰相閣下のそれより自然に笑っている。

 きっと私以外なら見分けられないだろうな。



「アウレーネ。伝令を貸せ。第一連隊司令部にこの書状を届けてほしい」



 それはタウキナ連隊で使っている命令書を丸めた筒のようだった。なんの書状なのか気になったが、それでも蜜蝋による封がされていては中身を確認できない。



「わかりました。伝令! これを東方第一連隊司令部に」



 これで視察と慰問は終わりだ。

 後はタウキナ第一連隊の司令部に立ち寄って今日の日程は終わり。

 だが、出来るだけここに留めて近衛連隊の管理する証拠品調べがすむまで一緒に居たいのだが、仕方ないか。



「連隊長! 敵味方不明の者、およそ一個小隊分が接近中!」

「――!? 場所は?」



 伝令の報告によると第三大隊守備の地にモニカ支隊と思わしきエルフが接近していると言う。



「出たな、逆賊ども。戦闘用意を下令せよ。各連隊にも敵が接近しつつあり、と知らせるのだ」



 慌ただしく伝令が駆け、兵達が持ち場について弾薬を装填していく。

 緊張に包まれた空気の中、私達は元来た道を引き返して第三大隊の野戦司令部の戸を叩いた。



「殿下!」

「礼は良い。敵は?」



 その司令部にはハルトマン大尉以外のエルフが居た。

 軍服からしてモニカ支隊の者か。



「こやつは?」

「彼女はモニカ支隊のパウラ兵長です」



 どうやら、モニカ支隊の伝令として本陣地に来たと言う。



「ほぅ。反逆者がのこのこ現れるとはな。他のモニカ支隊はどこだ?」

「我々は身の潔白を証明するためにここに来たのです。他の支隊は、あそこに」



 そう言って指さした先には両手をあげた人影があった。

 司令部に設置されているカニの目のような遠眼鏡を覗くと、その人物がエルフであり、さらに後方に隊列を組んだ兵士達がいるようだ。



「ホルーマ第三連隊……!」

「身の潔白? 連隊を引き連れて何を言うかと思えば……。片腹痛いわ。だが、話くらいは聞いてやろう。おい、兵達に小銃を下げさせろ」

「よろしいのですか?」

「あぁ。構わぬ」



 緊張に包まれる中、命令が交錯しする。そしてパウラ兵長の声でエルフ達が歩きだした。

 その様子をお姉さまはただ不適に見つめて、そして急にパウラ兵長の元に歩み寄ると、腰に下げ居た拳銃をパウラ兵長に握らせた。



「え?」

「おい、何をする! この無礼者!!」



 肉を打つ鈍い音。そしてパウラ兵長の手からこぼれた拳銃を素早く拾い上げるお姉さま。



「余の拳銃を奪おうとするとはな。エルフの名が聞いて呆れる」



 カチリ。撃鉄が引き起こされた。



「お、お姉さま!?」

「これは罠だ。ハルトマン大尉、攻撃を命令せよ」

「え? え!?」

「早く攻撃を命令せよ! 部下が死ぬぞ!!」



 それと同時に銃声が司令部に響いた。

 むせ返る硝煙と血の臭い。

 その音に全ての時が止まったとうに思えた。



「それとも貴様、このエルフの仲間なのでは無いか?」

「ち、違います!!」

「なら、余の命に従え」



 ハルトマン大尉は空気を求める魚のように口を開閉させていたが、絞り出すように言った。



「こ、攻撃! 攻撃!! 目標、前方の第三連隊! 撃ち方始め!!」



 伝令が司令部を飛び出すと同時に発砲音。

 こちらに歩みよっていたモニカ支隊に血煙が上がる。



「う、撃ち方やめ! 撃ち方やめ!! 大公として命じます! 攻撃を中止しなさい!!」

「何を言う。奴らは反逆者ぞ。それを目前に攻撃をやめよとは、貴様も国賊か?」

「相手は両手をあげて攻撃の意志が無いことを示していました!! 戦意の無い者に攻撃するのは人の道に反します!!」



 だが、銃撃はやまない。その内、前方から銃弾が飛来しはじめた。

 これでは収集がつかない……!



「殿下! 殿下!! ご無事ですか!?」



 銃声に阻まれながらも、先ほど送りだした幕僚が司令部に飛び込んできた。

 その顔を見たお姉さまは舌打ちをすると、その幕僚を押し退けるように外に出ていった。



「殿下! 危険で――」

「それより攻撃中止を命じて!」

「で、ですが我々も攻撃を受けています! ここで反撃せねば――!」



 ハルトマン大尉との押し問答では意味が無い。

 すぐに問答の相手を変え、幕僚に向きなおると、彼は布に包まれたそれを無言で差し出した。

 その布をめくると、確かに回転式拳銃がそこにあった。

 だが――。



「これは、オシナー様に渡した物!?」



 間違いない。ドワーフに依頼して造られた一点物だ。

 これが現場に落ちていた? オシナー様に渡した回転式拳銃が賊の砲兵陣地にあった?

 そんな事――。



「――謀られた?」



 そうとしか考えられない。

 オシナー様はこれが一点物である事を知っている。もし、賊にオシナーさんが通じていて、これを渡したとしても暗殺を行う者にこのような一点物を渡すはずがない。



「お姉さまは!?」

「先ほど出られました。自分と一緒に東方のバアル様も来られていたので、合流されたのでは?」



 お姉さまのように幕僚を押しぬけて外に出ると硝煙の香りと濃霧のような白煙の世界が広がっている。

 その白い世界に視線を彷徨わせると、陣地の後方に二頭の馬が駆けて行く姿が見えた。

 逃げられた。

 まさか、幕僚を近衛連隊に派遣した時、お姉さまが書状を渡してきたが、その時点で真実が解き明かされる事を懸念してバアル様を呼んでいたのだろうか。

 だが、今はそれを考える時では無い。



「攻撃中止! 撃ち方止め! 撃ち方止め!!」



 司令部の外に出て直接命令を伝え、ようやく双方の銃撃が止んだ。

 そして司令部にあった白っぽいシーツと、一丁の小銃を借りる。



「殿下! お待ちください! まさか殿下、御自ら軍使となられるおつもりですか!?」

「それ以外に、この場を納められません。大隊長。医療用の布をと湯を。それと連隊司令部に伝令。現在の全部隊は守備陣地を放棄。総員、兵営守備を固めるように伝えて。それと医療の魔法が使える魔法使いを呼んで」



 小銃に白い布を結びつけ、それを銃床を天に掲げて私は塹壕を出る。

 お姉さまは復讐を止めて、変わられたのだと思っていたが、それは大きな間違いだった。

 お姉さまは何も変わっていない。変わらずに、淡々と復讐の機会をうかがっていたのだ。


 どうして、どうして私はそれを見抜け無かった。

 血の香りする戦場に立って、私は後悔で押しつぶされそうになった。

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