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銃火のオシナー  作者: べりや
終章 東方大演習
107/126

東方大演習

 東方諸族と人間。その双方が共存できている都市がケプカルトにいくつあるだろうか。

 現王陛下ご来臨を前に活気づくクワヴァラードを見ていると、そのような疑問が浮かんだ。



「どうしたんですか?」



 隣を歩く元副官のユッタが俺の顔色に気づいて述べた問いに、俺は言葉を選びながら答えた。



「いや、なんて言うか、大きな戦を経たのに、東方諸族と人間とで、上手くやっているんだなって」

「全員が、全員ではありませんよ。父上も人間と出来るとは何事かって――。いや、別になんでもありません!」

「ん? ま、その、クワヴァラードは王都とは違うと思ったんだ」



 王都にも東方諸族の姿を見ることが出来る。

 現王様の奴隷解放を端に東方から仕事を求めて出てきたもの。人間より優れた技術を買われて招致されたもの。そして故郷に帰れない元奴隷達。


 特に奴隷解放は政策の方が先行してしまったため、中には着の身着のまま追い出された者も居たという。

 そのような元奴隷は故郷に帰りたくても帰るための旅費が得られず、貧民街(スラム)で暮らす羽目になっている。

 それに王都の人々は未だに東方諸族に対する意識が変わっておらず、店で雇われても低賃金で働かされるため、帰郷の目途どころかその日の暮らしも危うい。

 それでも故郷に帰る事を夢見る者は多く、その苦しい労働環境でも文句を言わない姿勢のため人間よりも東方諸族を雇用する店も増えているとか(そのせいで人間の雇用が落ち込んでいると財務卿が言われていた)。



「ただ、そこに居るだけじゃ、共存とは言わない。それが行われている街の多いこと……」

「確かに、ケプカルト本国から帰れない諸族の窮状は知っています」



 ユッタは左腕を押さえながら、つぶやくように言った。

 そう言えば、彼女は実際に王都に来て、それを見たのだったか。



「ドワーフの方の中には王都への招致の条件に元奴隷の方を東方に帰す事を盛り込んでいる方も居ると聞きます。それなのに、わたしと来たら……」

「ユッタは……。よくやってくれている。その結果が、今なんじゃ無いのか?」



 全てが始まったアムニス大橋。その全てが報われた西方戦役。

 幾多の屍が積み重なって山となり、幾多の血が流れて河を作ったろう。

 その屍山血河の果てに手に入れた自由がこのクワヴァラードだ。その成果だけでも、彼女には胸を張って欲しかった。



「さて、俺はケヒス姫様に呼ばれているんだけど、ユッタは?」

「そうですね……。よろしければわたしもご一緒しても?」

「別に良いけど……。良いのか? 訓練とか」



 確か、ユッタは大隊長を経て、浸透戦術研究用支隊――戦線を密かに抜け、オオヅツや螺旋式小銃等で後方攪乱を旨とする実験部隊であるモニカ支隊を率いていたはずだが。



「モニカ支隊は今夜、夜間演習なので今は非番なんです。それに準備も滞り無く済んでいます」

「……わざわざ非番なのに、俺に付き合う事なんてないんじゃ――」



 だが、ユッタは絶対付いていくと言う決意が瞳からにじみ出ていた。

 なんか、東方に帰ってきてからユッタが暇を見つけてては俺の所に来るのだが、一体なんなんだ。

 もしかして三年前のユッタの故郷に一緒に行くのをドタキャンしたのを根に持っているのか? どうしよ。どうやったら俺は埋め合わせが出来るんだ……?



「どうしました?」

「い、いや、ナンデモナイ」



 ジトッとした視線を受けながらも足早に総督府に向かい、その謁見の間に向かうと程なくして謁見が叶った。

 従者がケプカルト諸侯国連合王国第三王姫ケヒス・クワバトラ様の名を告げると共に金色の髪、意志の強い赤い瞳を輝かせたその人が現れた。



「どうだ、市井の様子は?」

「大変、活気づいております」



 フン、と鼻を鳴らして玉座に付くと満足そうに、そして不適に笑われた。いつ見ても変わってないな。



「当たり前だ。まぁ、ここまで作るのに苦労したものだ……」

「王都ではそう上手く行ってませんよ」

「王都はあれだけの人口だ。辺境の領都とは訳が違う」



 所で――と、ケヒス姫様はユッタに冷たい視線を向けた。

 ユッタは恐々としながら頭を下げるが、視線が緩む事は無かった。



「どうして貴様が居るのだ? 確か夜間演習のはずだが……?」

「まだ時間がありますので……」

「あの、明日にでも現王陛下が来られるのですよ。それから大演習ですし、わざわざこの時期に演習をしなくても――」



 ケヒス姫様は「だからだ」と言われた。

 まぁ、現王陛下の御前で演習を行うのだから不備があってはならない。

 やるからには全力で事に当たるべきだ。



「そう言えば、まだうぬには伝えて無かったな。モニカ支隊には夜間演習の後、大演習に伏兵として参加させる。調整を頼むぞ」

「……はい?」



 軍務次官として演習の調整役を命じられているため、演習が滞り無く進行するよう取り計るのが俺の仕事だが、まさに初耳だった。

 モニカ支隊の支隊長を睨むと「口止めされていて」と消え入りそうな声が帰ってきた。


 くそ、おかしいとは思ったんだ。


 参加兵力と演習の日程、大まかなタイムテーブルや両連隊の兵站計画などは詰められたのに、連隊の布陣に関してはお茶を濁すような話しかされて居なかったし、その話題になってもケヒス姫様が「後で話す。それに東方の兵站は全て余の自費で賄うから心配いらぬ」と言うばかりだったから、嫌な予感はしていたんだ。



「不味いか?」

「……。いえ、まぁ伏兵を禁じていませんでしたし、その可能性に思い至らなかった俺や軍務院の失態です」

「そう落胆するな。なに、予定は変わらん。要は王都のボンボン共を叩きのめせば良いのだろう?」



 まぁ、その通りなのだが、徹底的だな、もう。

 これじゃ、きっと士官学校の奴らは対応出来ずにぼろ負けするはずだ。

 てか、伏兵が居ると損害の判定とかで判定で出た負傷者の収容とかもろもろのせいで予定が大幅に変わってしまうんだけど……。


 でも、モニカ支隊の有用性を示すにはちょうど良いかもしれない。

 それに、ここで螺旋式小銃の有効性が確かめられれば否決されていた螺旋式小銃の導入に政界や財界が動き出すかもしれない。

 そう考えるとモニカ支隊の投入はメリットが生まれてくる。デメリットは演習当日まで寝ないで働く事になる事くらいだろう。

 だが、釘を指しておく必要はあるな。



「あの、演習はある程度は予定調和で行わないと混乱が――」

「その混乱を立て直すのが士官の役目だと余は聞いたぞ」



 その通りなんだけど、その通りなんだけど初めての演習でそれをやられるとグダグダになるかもしれないんだよなぁ。

 まぁその調整をするのが軍務次官の仕事だし、いざとなれば進行上の都合として俺が直接近衛連隊の指揮を執って立て直せば良い。

 後はケヒス姫様の言うとおり、士官の技量次第だ。



「それにうぬの起案した螺旋式小銃の採用案だが、通算で三回も否決されておるらしいな。

 周辺国との通商協定で螺旋式小銃を売り込んでは居るが、その量も微々たる物だ。王領のような大口の顧客が欲しいからな。癪だが協力してやる」



 宰相閣下からの話だが、ケヒス姫様はここ三年で精力的に他国に赴き、良好な外交政策をしていると聞いたが、嘘では無いようだ。



「ご助力、悼みいります。今回はモニカ支隊の伏兵を認めますが、有事の際は仕方なくても、演習の時はあらかじめ俺に言ってください」

「事前ではあるぞ」



 ニヤリと笑みを浮かべたケヒス姫様にため息を付きつつ、確認の意味も込めて聞いた。



「それじゃ、演習の参加兵力はクワヴァラード第一猟兵連隊。内訳は歩兵三個大隊と二個騎兵中隊、独立重野戦砲中隊。伏兵としてモニカ支隊ですね?」

「そうだ。布陣図に関しては後ほど人を送って説明させる」



 東方総督とクワヴァラード第一連隊以下の東方の全連隊を統べる姫君がクイクイと手を振る。俺を呼んだ用件はこれだったか。

 そう思いながら退室の礼をしようとして、止められた。



「そう言えばうぬに伝え忘れていた。モニカ支隊と時を同じくディルレバンカー支隊が門を出る」

「え? これも伏兵ですか?」

「いや、治安維持任務だ。北レギオ方面の街道の最終安全確認のために中隊を派遣しようと思ってな。そやつらの任務はあくまで治安維持だ。演習には参加しないから、この支隊に関しては無視して良い」



 はぁ、と返事を返して謁見の間を後にすると、ユッタがげんなりとした表情をしている事に気が付いた。



「どうした?」

「ディルレバンカー少佐と共に門を出ると思うと……」

「てか、誰なんだ? そのディルレバンカー少佐って」

「第一連隊の二線級部隊である第三十六大隊の大隊長です。顔に真一文字の傷がある元傭兵なんですが、素行が悪くて……。それで少佐の率いる大隊は傭兵団をそのまま再編したような有様でよく問題を起こすんです。それこそコレット少佐が可愛く思えるくらいの事を起こしていて……」



 ユッタの剣幕に思わず引いた。まぁ、傭兵って素行が悪いなと思わない事も無い。

 近衛連隊でも傭兵から引き抜いた下士官と新米の貴族少尉との衝突が後を絶たないし、その争いに親が介入して審問会が開かれる事もあった。

 と、言うか元歴戦の傭兵であるスピノラさんのような人は少数派だったという事を噛みしめたものだ。



「最終的に演習で伏兵を演じられれば良いんですし、今からでも夜間演習内容を変え――」

「――られないよ」



 まったく。人の気も知らないで……。



「ですが、東方の戦力が増強されて、人員も増えるとディルレバンカー少佐のような問題を起こす人も増えましたし、エルフだ、ドワーフだと種族間の反目も出てきました」



 それまで東方解放のために一心に戦ってきたために問題にならなかった事が、解放を経て問題となってきている。

 東方も四個の連隊を抱え、師団を形成する戦力が揃うと、どうしても問題児を抱えるようになるし、反目する余裕も生まれてくる。



「それはこれからの課題だな。あぁ、王都に帰ったら、そう言うものの対処もしなくちゃいけないのか」

「……やはり、王都に行ってしまうんですね」



 その問いに、俺は言葉が詰まった。

 どう、返事をしてもユッタを悲しませるような気がしたからだ。

 俺はどうしても、、この軍制改革を進めさせないといけないし、それを途中で放り投げよとも思わない。

 だが、ユッタ達と共に過ごしたいとも、思う。

 答えに窮して固まっていると、ユッタも困ったような顔して言った。



「過ぎたことを申しました。お許しください。では、わたしはこれで。失礼します」

「あ、あぁ」



 俺はただ、ユッタの背中を見送るしか無かった。

 確かに様々な事にだんだんと余裕が見えだした。

 軍制改革半ばとは言え、この三年でその基礎は築いたつもりだし、士官教育もすでに一期生と二期生を士官として近衛連隊に組み込んでいる。

 様々な事が一段落したから、東方で大演習を行う運びになったのだ。

 俺にも、余裕が出きるだろう。俺も、今後を考えても良いかもしれない。そう、思った。



   ◇ ◇ ◇



 その日、クワヴァラード第一野戦猟兵連隊の兵営は熱気に包まれた。

 まだ近衛連隊は現れないが、ケプカルトの最高指導者である現王陛下を一目見ようとクワヴァラードの市民や周辺の村の住人達が解放された兵営に足を踏み入れて歓喜している。

 おまけにその観光客を目当てに露店も出ており、さながら祭りのようだった。



「盛況でたまらんな」

「それは嬉しい悲鳴ですか?」



 営庭にもうけられた観閲席から下々の民をヘイゲイするように言うケヒス姫様の横顔は冷めているの一言で、寒々しい風と相まって観閲席の温度を下げているようだった。



「ぬかせ。それで、タウキナ連隊はいつ来るのだ?」

「先ほどの伝令によりますと、残雪のせいで多少の遅れが出ているそうですが、午後にはクワヴァラードに到着する予定だそうです」



 演習には参加しないが、儀礼としてタウキナからも一個連隊が東方に向かっていたのだが、道中のトラブルでその到着が遅れていた。

 だが、近衛連隊に遅れは無いようで、昼にはクワヴァラードに到着すると早馬から報告を受けた。



「そう、か」



 短く答えると、これまた短く息を吐き出した。

 もしかして、緊張している?


 いや、まさか、な。


 そう思っていると、顔色を変えた元騎士のような風体の男が観閲台を上ってきた。

 元東方辺境騎士団の人か?



「殿下、よろしいでしょうか」

「……。なんだ?」

「ディルレバンカー支隊より伝令。『日は落ちた』」

「そうか。確かに日は落ちたのだな?」



 そう、聞き返すと、騎士は深々と頭を下げた。

 日が落ちたって、まだ午前中なんだが……。

 そう疑問に思ってケヒス姫様になんの事か聞こうと思って視線を向けると、その口元がニヤリとワラっていた。



   ◇ ◇ ◇



 その日、北レギオから東方都クワヴァラードに向かう街道には一糸乱れぬ――とは言いがたいが、それでも揃った歩調で近衛連隊が行進をしていた。

 残雪が溶けて泥に足を取られながらも野を越え、丘を越え、そして今、橋を渡る一行は黙々と緊張に耐えながらクワヴァラードを目指す。


 二列縦隊で進む歩兵と騎兵達。

 大砲や補給物資を牽引する馬匹。

 それらを緊張した顔で指揮する若い士官達。


 この一行が緊張する理由はこれから自分達の教官に会うから、と言うより同行してる現王陛下や宰相閣下に自分の粗末な指揮を見せまいと必死に命令を飛ばしていた。

 とくに現王陛下と宰相閣下それぞれの乗る馬車が放つ重圧に耐えなければならないその周辺の士官達は演習を前に疲弊を覚え始めるほどだ。


 タウキナとの国境を分かつ大河――国分河の上流に架けられた橋を渡る際に吹き付けて来た寒風があったが、その重圧のすぐそばにいる彼女の額に汗が滲む。

 その彼女の背後に控えるようにのしのしと歩く巨体――ドラゴンが急に立ち止まった。



「どうした、タンニン? 飛びたいのはわかるけど、我慢してくれ」



 タウキナ大公家の公女ヘルスト・ノルトランド中尉は愛龍をなだめつつ、手綱を引く。だが、タンニンは頭をもたげ、不安そうに周囲の空気を嗅いでいる。



「どうしました中尉?」



 そう声をかけてきた軍曹にヘルストは「タンニンの様子が変だ」と返しつつ、一生懸命になだめる。このまま立ち止まっていると行軍の列が止まっていずれ陛下の馬車も止まるはめになる。特に陛下達の馬車は橋のど真ん中。風に煽られて馬車が倒れる事はないだろうが、それでも足を止める事だけは何でも避けなければならない。こうなっては指揮下の小隊全員でタンニンを列から移動させなければ――。


 そう考えていた時、ボン、ボンと落雷を思わせる音が響いた。

 違う。落雷では無い。砲声だ。

 そのあまりにも突然な声に近衛連隊が足を止める。

 そして二列縦隊の中心――現王陛下や宰相閣下の馬車が止まる橋の周囲で着弾の水しぶきがあがった。



「て、敵襲! 敵襲!!」

「な、何が起こった!?」

「それより陛下をお守りしろ!! 士官どもは落ち着け!」



 慌てふためく若手士官を怒鳴る元騎士達の声。だがそれは先ほどの砲撃を元にした修正射によって掻き消えた。



「く、砲撃はどこから!? 分かる者はいるか!」



 その砲声の下、ヘルストは声を張り上げて部下達に聞くが、その答えを持つ者は居なかった。



「軍曹! 小隊の指揮を頼む! 自分はタンニンと共に上空から敵の砲兵陣地を探してくる!」

「了解! お気をつけ――」



 その時、鼓膜を引き裂くような轟音が響いた。

 ヘルストは振り向くと、水柱と共に橋が悲鳴をあげながら崩れ落ちる所だった。

 そこ上にいた兵士も、大砲も、馬も、そして現王陛下や宰相閣下を乗せた馬車も、川面に消えていく。



「陛下!! うあ!」



 雪解けの水で増水した河は自身に落ちてきたものを平等に飲み込み、流し去る。

 それを追おうにも間近に砲弾の直撃を受けたヘルストはその衝撃で意識を失ってしまった。



   ◇ ◇ ◇



「第三王姫殿下!! 火急の案件にございます」

「……何事だ?」



 現王様達の到着が遅れていた。

 予定の時刻になっても現れない。何かあったのかと思って居た所にクワヴァラード第一連隊を現す肩章を付けた少佐――顔に真一文字の傷からして、この男がユッタの言っていたディルレバンカー少佐か――が現れた。



「謀反にございます」

「なに?」

「街道の途中で近衛連隊は何者かの砲撃を受けました」

「陛下は無事か?」

「それが、橋を渡っている最中の襲撃で、敵の砲撃が橋に命中して橋が崩落。その崩落に巻き込まれて安否は不明にございます」



 謀反? どうして――。いや、誰が――?



「その後の捜索で砲兵陣地と思わしき地点に木砲――オオヅツと言うのでしたか? それが残されていました。その上、これが――」



 そう言ってディルレバンカー少佐が差し出したのは太い銃身に三つの銃口を持つ拳銃だった。



「これはモニカ支隊で試験採用されている物だな」

「では、そのモニカ支隊が謀反を!?」



 何を言っている。いや、待て、展開が早くて付いていけない。

 襲撃があって、その現場にモニカ支隊でしか採用されていない回転式拳銃が残されていた?



「それを、貸してくださいませんか?」

「あぁ。どうぞ」



 少佐から受け取ったそれが異様に重く感じた。無意識のうちにその動作を確かめながら俺は自問してしまう。

 どうして、ユッタ? どうして反乱なんか――。

 ん? あれ? この回転式拳銃――。



「残念だな。オシナー」

「え?」



 突如、回転式拳銃が奪われる。

 それに驚いて顔をあげると、そこには凄惨な笑みをたたえたケヒス姫様が居られた。



「モニカ支隊をけしかけ、大逆を起こすとはな」

「な、何を言って――!?」

「あぁ、なんと言う事だ。街道の治安維持のために兵を派遣したのに陛下をお守りする事叶わず、なんと責任をとれば良いのか――」

「どういう事ですか!?」



 ケヒス姫様が手を叩くと一人の騎士が数枚の作戦計画書がまとめられた物を持ってきた。



「オシナーの自室から見つけたものです」

「は!?」



 騎士の言葉に俺はその計画書を奪い取った。

 違う。俺の字じゃないし、そもそも俺はこんな計画――。



「この者に縄を打て」

「おぉ! 殿下! この作戦計画は一体どういう事でしょう!?」

「少佐、貴様には黙っていてすまなんだ。実は余の調べでオシナーは陛下に叛意を抱いている事が分かったのだ。

 それも、実らぬ軍制改革と亜人政策のためと言う。

 それでこの大演習で陛下を害そうとしていたのだ。その計画書は数日前に余の部下が発見してな。

 泳がせて、仲間が姿を現した所を一網打尽にしようと思っていたのだが、余の判断が甘かったようだ」



 違う。違う違う違う! 俺はそんな計画なんて練っていない!!



「予防策としてディルレバンカー支隊に街道の警備をさせていたのだが――」

「ディルレバンカー殿は襲撃の後に合流して、陛下の捜索に当たってもらっております」



 そうか、と小さく悲しむように言うケヒス姫様が冷たく「この者を捕らえろ」と命じた。



「違う! 俺じゃない! 俺じゃ――」



 はめられた。

 その計画書は偽物だし、その回転式拳銃は――。



「ケヒスッ!! 貴様ッ!!」



 あらん限りの絶叫が喉を震わすが、その声は誰にも届かなかった。


よくここまで読んでくれた。残念だが、冷血姫は改心など初めからしていない。だまして悪いが、仕事なんでな。死んでもらおう



実は冷血姫のヘイトが半端なかったのでこの路線に変更致しました。

いや、感想欄を読めばお分かりですが、これをヒロイン枠に押し込む事は私には不可能です。

ヒロイン枠が無くてもそこにエネミー枠があるじゃろ? と言う魔の声に逆らえませんでした。





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