第4話 私
「あ、みんなぁっ! 愛ちゃんね、帰ってきたよぉっ」
教室に残っていた女の子が帰ってきたクラスメートたちに声をかけた。
まさか、そんなはずない。
絶対ないよ、私を探してただなんて。
あの子――教室に残っていた子――は、騙されてるんじゃないの?
クラスメートたちはきっと、探すふりして遊んでたんだ。
だって、会えないはずがない。
ここの学校はそんなに、大きくないもん。
絶対におかしい。
絶対絶対おかしい。
私はクラスメートたちを睨みつけながら、ため息をついた。
とりあえず……プリン騒動は収まったのかな。
よかった。
面倒くさいことは嫌いだからね、私。
そんなことするくらいなら友達なんていらないし。
「愛ちゃん、どこ行ってたの?」
実留の、責めるようなきつい眼差しに、私は思わず目をそらした。
すると実留は私に向かって大声で叫んだ。
「どこ行ってたのって聞いてるじゃんかっ! 無視とか超感じ悪いっ!」
私は一方的にキーキー言われるのが嫌で、実留は苦手だ。
だからそういうの本当にやめて欲しい。
ウザいし。
「じゃあなに? 私がどこ言ってようがあんたには関係ないでしょ。そんなに知りたいんだったら私にGPSでも付けとけばいいじゃん」
私は吐き捨てるように言うと、私は実留の目の前にいたくなくて、走って逃げた。
なんで私が逃げなくちゃいけないんだろうと思いながら。
でも嫌だった。
実留の前にいたくなかった。
あれ以上いたら、きっと私は気分が悪くなっていたと思う。
今も、気持ち悪いんだけどね。
実留って、見てるだけで吐き気する……って言ったら失礼だけど。
でも本当にそうなんだ。
実留は、評判が悪い。
……なのに、美紀、どうして?
美紀はどうして実留の方についたの?
それくらい私のこと、嫌になっちゃったのかな……。
実留の方に行ったほうがいいと思うくらい、私のこと、嫌いになった……?
って、どうでもいいんじゃなかったの、私っ!
美紀なんて結局はその程度の人間だったってコトじゃない。
てか、なんでケンカしてるんだっけ。
えーっと、あぁ、プリンか。
私トラックに轢かれかけたんだよ?
美紀もみんなも、もうちょっと心配してくれてもいいじゃん。
先生だって、何にもしてくれないし。
そんなんで先生名乗るなっつの。
結局人って、そんなもんなんだよね。
先生に頼るやつが悪いって言ういじめっ子もいるし。
自分のことは自分でやれ。
大人になったら誰も守ってくれない。
いつかお前らは一人になる。
先生たちはいつもそんなことを言う。
矛盾してる。
道徳の時間、先生は人は助け合って生きていると言った。
じゃあ、一人になるってどういうことなの?
どっちなんだよ。
ってか、小学生に一人になるとか言うなんて、教師失格じゃない?
そんな夢のないこと言うなんて。
でも、私には関係ない。
私は最初から最後まで、一人だから。