ボクニ伸ビル手
このお話はフィクションであり、実際の天使の名前とか登場いたしません!
バタバタ、とただただその音しかないこの世界。
美しいはずの天使の羽は、うるさいだけの道具にしか成り立たない。
はぁこの世界を飛び出してっ地球に行きたいなぁ。まぁ無理だけど。
今頃彼女はどうしてる。死んでる。もし生まれ変わってたら、僕のこと覚えてない。きっと。絶対。
神様の愛しかないこの世界。本当に暖かく、幸せいっぱい。
だけど、何だろう。虚しすぎる。なにかが、足りない。
「やぁ、久しぶりだな、ルシエル」
「皇帝王様・・・!今宵も大変麗しゅうございますね。」
「はっはっはっ。すっかり鈍ってると思ってしまったよ。」
にっこり微笑む皇帝王。しかし、皇帝王様のようなお方、なぜ、ここに?
「ルシエル、お前、暇だろ?」
「え、えぇ。そう、言われればそうですが・・・?」
「なら、地球大国に行かんか?ルシエル」
「ち、きゅう、こく?」
「あぁ。そこで、日の本の国、日本の高校生として三年間、地球国にいってきて欲しい。まぁ私らにとっては短いがのう。」
「そうですか、そのご依頼、謹んでお受けいたします。」
「さっそく、今から行ってきて欲しい。よろしくな。」
皇帝王様の声が響き、周りが暗くなっていく。
「―――――ぃ。おい、あんたっ!!!」
耳に響く鬱陶しい声。眼界に映る男。体をむくりと起こせ、周りを見渡す。
どうやら、ここはだれかの部屋らしい。しかし、図書館で見た写真より汚い・・・。
これが一般人と言われる人間の住処か。なーんてのんきに考えてたら、
「このクズが!突然人の家の玄関前に倒れて、何してんだ!」
怒鳴りうる、容姿と似つかない言語能力。きれいな容姿に汚い中身だな。
対応する気にもなれない。
「聞いてんのか!」
「えぇ、聞いてます。そのことに関しては大変申し訳ございません。僕もまさかここで倒れるなど、予想外でしたので。すみません。お助けいただき心から感謝いたします。これで僕も退散いたしますね。」
めんどくさい。こういう野蛮な子は嫌いだな。言うなりなんなりしててよ。
ポカンとする男をほっといて部屋から出ていき、僕は街を歩いていく。
歩くたびに痛い視線を無視して、気のまま、本能に任せ歩いていく