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魔女と血吸いと百鬼夜行  作者: もみじ屋
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プロローグ

初めての投稿なのでつたない所があると思いますが、

楽しんでいただけたら嬉しいです。

妹と私は、昔、とても仲が良かった。


私より少しおとなしかったけど、

よく、町の色々な場所に連れていってくれた。


水のきれいな小川や、小さな森など。


冬になって、日が暮れるのが早くなってくると、

商店街の、街灯が綺麗な道を歩き回ったりもした。


治安は良かったから、空がまっくらになるまで遊んでいて、

教会の鐘の鳴る音で急いで帰ることも多かった。


ある時、川へ遊びに行った時に、道に迷って、

親切な近所のおばさんに家まで送っていってもらった事もある。


妹がどうやってそういう場所を見つけられるのか不思議で、聞いてみたこともあったっけ。


妹は、町一番の元気っ子として有名な男の子が教えてくれるんだと言っていた。


私も何度かその男の子と遊んだ事がある。


噂通りのすごく元気な子で、きれいな金色の髪をしていた。


私は自分のまっ黒な髪があまり好きではなかったから、正直少しうらやましかった。


いつもの様に、森の中で遊んでいた時の事。


鬼ごっこをしていたと思う。


「まてまてーっ!」

思い出した。私が鬼役だった。


「待つわけないじゃん!鬼さんこちらー!」

スピードを上げて、木のむこうに走り去っていく妹。


私も、スピードを上げて追いかける。


しかし、妹が走っていった方へしばらく走っていっても、妹の姿は見えないし、足音も聞こえない。


30分くらい歩いただろうか。

別れ道の前で、どこに行ったんだろう、と思ったその時、

右の道の方からガサガサという音が聞こえた。


近づいてみると見えたのは、小さな滝と池。


そして、血でまっ赤にかった妹の体と、手を血で染めた、吸血鬼の姿だった。


「妹を離して!」 吸血鬼はこっちを凝視したまま、ピクリとも動かない。


「離せ!」 強い口調で言う。


そうすると、その吸血鬼は何かを決心したのか、

悲しそうな顔をしながらもこっちを睨んだ。


私の意識はそこでブラックアウトして、

目が覚めた時に残っていたのは、

血の跡だけだった。


目が覚めてすぐ、私は急いで両親を呼びにいった。


両親が警察を呼んで、町の人達も総動員して妹を探してくれたけれど、結局、妹の行方は分からなかった。


両親は、私は悪くないって言ってくれたけど、

私があの時森に行かなかったら、鬼ごっこなんかしなかったら、

今も妹と仲良く過ごせていたんじゃないか、と思ってしまう事がある。


また妹と会いたくて、妹を探しに一人でこっそり森へ入ったりもしたけど、

結局、手がかりは何も見つからなかった。


吸血鬼退治に魔女が来たという噂を聞いたのは、それから一週間くらい後の事だった。


その魔女が、あの吸血鬼について何かを知っている事を期待して、

私は一人で、その魔女が泊まっているという、街の外れにある宿に行ったのだ。


「あの…ここに魔女がいると思うんですが…」宿の受付の人に聞いてみる。


「えっと…その方なら、208号室ですね。」


「ありがとうございます。」階段を登って、教えてもらった部屋の前へ。


ゆっくりと二回、ドアをノックする。



ドアが開いた。


「はい…どちら様?」その魔女は、お母さんより少し若いくらいに見えた。


「えっと、私、あなたがあの吸血鬼について、何か知ってるんじゃないかと思って、それで、えっと…」

緊張して、しどろもどろになってしまう。


「それで、私に聞きに来たのか。」


「…はい。」


「お嬢ちゃんは、吸血鬼に誘拐された子の知り合い?」


「姉、です。私が。」


「なるほどね…。でも、色々大変だったのは分かるけど、少し落ちつこうぜ。」


「そうですね。すいません。」


「気にすんなよ。とりあえず、立ち話も難だ。中に入りな。」


「ありがとうございます。」

中はあまり広くなくて、ベッドと、木のテーブルと椅子、他には冷蔵庫やテレビがあるくらいだった。


「何か飲むかい?」


「いえ、どうも。」


「そうか。まぁ、とりあえず座りなよ。」


お互い、椅子に座ると、魔女さんが話しかけてきた。

「嬢ちゃんの妹さん、いなくなっちゃったんだっけ。大変だったね…。」


「はい…。それで、妹は見つからないし、どうなったのかも全然分からなくて…。」


「なるほど…。」

(しっかし、上に言われたよりだいぶ大事じゃないか。

退治してくれとは言われたが…。

行方不明が出た、なんて話、私は聞いてないぜ。)



「でも、安心していいと思うぜ。」


「どうして…ですか?」


「吸血鬼ってのは、基本的に結構温厚なんだ。それに、人間からもらう血の量は、命に関わらない程度だよ。」


「でも、もしすごくお腹が空いてたら、たくさん吸う事もあるかもしれないじゃないですか。」


「吸血鬼だって、大体の栄養は普通の食事から得てるんだ。

ただ、人間とちょっとだけ体質が違うから、生命を保つ為に少し血液をもらってるだけなんだ。」


「だから、嬢ちゃんの妹さんも、その内帰って来ると思うよ。」

そう言いながらも、魔女さんは何か少し考えこんでる様子だった。


「それに、嬢ちゃんは襲われなかったんだろ?」


「はい。私を見た途端、逃げていっちゃいました。」

「そうか…」


「それはそうと、その吸血鬼の事を聞いて、お嬢ちゃんは妹さんを探すつもりだったのかい?」


「え?はい。」


「危ないから、やめといた方がいいよ。私に任せて、お嬢ちゃんは関わらない方がいい。」


「どうして私が探しちゃ駄目なんですか!?

魔女さんが言ったんじゃないですか。吸血鬼は危険じゃないって!」

堰を切ったように言葉が溢れ出した。



「お嬢ちゃんまで妹さんみたいにさせるわけにはいかないんだよ。何が起きるか分かんないし。」


やるせなさと苛立ちとで、私は頬を膨らませた。


「そんな顔すんなよ。」

呆れた様にため息をつく魔女さん。


「見つかったらちゃんと知らせてやるから、それまで辛抱してくれよ。」


「だって…」

「ん?」

「アロマがあんな事になったのは、私のせいでもあるんです!

…だから、私も妹を探したいんです!」


「落ち着けよ、嬢ちゃん。」

私の突然の剣幕を見て、魔女さんは目を丸くしていた。


「とりあえず、座ったら?」


「あ…えっと、ごめんなさい。」

いつの間にか立ち上がっていたらしい。座り直す。


「いいよ、分かった。

その代わり、無茶はすんなよ。親御さんに会わす顔がねーから。」

またため息。


「それで、だ。上の決めたルールで、仕事に付き合わせていいのは、

同僚とかタッグとか弟子とか、そういう関係を結んだ相手だけなんだ。」


「上、って何ですか?」


「まぁ、魔女とか魔法使いの社会にも、面倒くさい上下関係があんのさ。

こんな面倒な決まりを作ったのも、その上司なんだけどな。」

今度は、少し嫌そうな顔。



「そんで、これからしばらくは一緒に行動する事になるから、

立場上だけでも、私の弟子になってほしいんだ。

その方が後々めんどくさくないからね。いいかい?」


「はい。分かりました。」


「そうか。じゃあ、えっと…

この紙に、お嬢ちゃんの名前を書いてくれるかい?

それだけで師弟関係だって認められるはずだから。」 渡されたペンで紙に名前を書く。


「お嬢ちゃんはセレナっていうのか。私はフランメ=アーデルハイトっていうんだ。

調査の時はその腕輪の石を光らせるから、宿屋に来てくれ。」


綺麗な緑色の石のついた腕輪を渡される。


「…うん。ありがとう、フランメさん。」お辞儀をしながら、私は部屋を出る。


「またな。」


読んでいただきありがとうございました。

もしよければ、感想やご指摘などいただければ幸いです。

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