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【掌編小説】猛暑すぎるから夏の新しい名前考えてみた

掲載日:2026/11/08

 高校生の頃は小遣いで間に合ってたけど、大学生になったら、アルバイトは必須。でも、接客業なんて嫌だし、力仕事はかったるい。どうしようかなって思って探してたら、運よく伯母が経営するクラブのホームページの運営のバイトにありつけた。


 ホームページ作成サービスの会社もあるから、最初は業者に頼んだらしい。でも、ホームページ作成ソフトなんかも普及して、僕のようなド素人でもラクにホームページが作れるようになった。定期的に、いくつかのファイルを更新するだけだったので、やり方さえ覚えれば簡単。週に一度、まだお客さんのいないうちに、クラブの奥の控え室で作業した。早めに出勤してきたキレイなお姉さんたちにも会えて、お姉さんたちから高級なお菓子をもらったりして、楽しい仕事だった。


 中でも炎夏(ほのか)さんは、パソコンが好きみたいで、よく、僕のそばに座って、更新作業を見学する。僕に顔を近づけて画面を覗き込む。そして、たまに、質問したり、思い出話をしたりした。

「かなり前なんだけど、私、『ハル』っていう映画にハマってさあ」

「ああ、パソコン通信の映画ですよね。何年前だったっけなあ」

「歳がバレちゃうけど、私が専門学校に行ってた頃だから、平成8年かな」

「え、そうなんですか? 平成8年なら、僕まだ小学生ですよ。炎夏さんって、平成8年で専門学校生?」


「え〜、よくわかんな〜い」

 炎夏さんは笑った。年をごまかしたつもりらしい。

「大丈夫ですよ。うちのホームページ、女の人の年齢載せてないし、炎夏さん、まだアラサーだし」

 伯母と炎夏さんの両方に、左右から小突かれた。


 8月に入って初めてのメンテの日。その日は伯母しかいなかった。

「炎夏さん、夏はプロフィールの閲覧数が落ちるよなあ。暑いのに炎夏だもん、無意識に避けられるよね」

 伯母が画面をのぞき込んだ。


「炎夏ちゃんだけ落ちてるってこと? そんなことないでしょ。ニッパチって言葉があるくらいで、二月、八月は、水商売は、客が減るんだよ」

「へえ、そうなの? でも今は地球温暖化で、夏の暑さがハンパないから、名前くらいは暑苦しくないほうがいいじゃん。僕、直接本人に『穂花とかに変えたら?』って言ったことあるもん。炎夏さん、なんで本名なんだろうね?」


 この疑問に対する伯母の解説は意外だった。

「本名を知ってる男に捜してほしいんだよ」

「えっ?」

 僕が聞き返したので伯母が重ねた。

「あんたのお父さんが好きな、小林旭の『昔の名前で出ています』聴けばわかる」

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