第7話:新ランドセルは「宇宙(そら)」から降る
前回、自爆によって散ったランドセル。
しかし、一条蓮と天才プログラマー・零に「妥協」という文字はありません。
もはや小学生の持ち物とは思えない、オーバースペックの極致が登場します!
「……零。お前、僕の『重い』という苦情をどう解釈したんだ?」
給食センターの一件から数日後。株式会社ワガママの本部に届けられたのは、見た目こそ「至って普通の黒いランドセル」だった。
だが、その周囲には微かな重力波の歪みと、電子の唸りが漂っている。
「社長……前回の失敗は、すべての処理をランドセル内部で行ったことによる熱暴走だ。だから今回は、計算処理の99%を『外』に逃がしたよ」
モニター越しの零が、虚ろな目で笑う。
「『外』だと?」
「そう。昨夜、僕が勝手に打ち上げた自作の超小型衛星——『ワガママ1号』だ。このランドセルは、衛星と常時リンクして、重力制御と情報処理をクラウド上で行う。名付けて、『ランドセル・マークIII:サテライト・リンク』」
「……毒島。自作衛星の打ち上げ費用、どこから出した」
「私の退職金と、将来買うはずだったマイホームの頭金……あ、いえ、なんでもありません……。社長のわがままのためなら、家なんて、雨風さえ凌げれば……」
毒島は遠い目で、昼間から輝く一番星(衛星)を見上げていた。
蓮がランドセルを背負い、スイッチを入れる。
「……ほう。軽いな。羽のように、いや、羽そのものになった気分だ」
「当然だよ。衛星からの慣性キャンセルで、重さは常に『ゼロ』に固定されている。さらに、右肩のベルトにある防犯ブザー……それは実は**『衛星軌道からの精密レーザー照射』**の誘導装置だ。プレゼンのポインターとしても使えるし、邪魔なビルを焼き払うこともできる」
「なるほど。これで登校中にジャンプすれば、3階の教室の窓まで直通だな。階段を使うという無駄な時間が省ける。わがままの時短だ」
「社長……それ、学校の壁がレーザーで溶けると思うんですけど」
毒島の真っ当な指摘を無視し、蓮は重力制御を使って軽く跳躍した。
ふわり、と地上から3メートル浮き上がる。
「いいぞ。これこそ王の移動手段だ。……さて、零。例の通信チップの解析はどうなった?」
「……それなんだけど、社長。あのチップ、九条財閥のメインサーバーに繋がっているだけじゃなかった。発信源は、日本経済の心臓部……『東京中央銀行』の地下深くにある隠しサーバーだ」
蓮の瞳が、冷徹な光を宿す。
図書館で記憶した『日本の地下施設構造図』と、前世の記憶が重なり合う。
「……面白い。九条財閥の裏で糸を引く『蛇』の正体、そろそろ暴いてやるとしようか」
そこへ、再び高級車が横付けされる。
現れたのは、少しだけ蓮の顔を見るのを躊躇っているような、九条院だった。
「一条さん……。あ、あの、先日は、その……助けていただいたこと、感謝しますわ。……でも! この間の爆発でわたくしの髪が少しチリついたのは、一生許しませんからね!」
「ふん。礼なら毒島に言え。あいつのハッピーセット(恐竜)がなければ、お前は今頃操り人形だった。……それより院、お前の父親に伝えろ。今夜、遊園地を貸し切れとな。視察といこうじゃないか」
「……は、はあああ!? デ、デート!? 何を……不潔ですわ! 低俗ですわ!」
頬を赤く染めて叫ぶ院を横目に、蓮は衛星リンクで浮き上がりながら、不敵に微笑んだ。
第7話、ランドセルが宇宙と繋がりました!
もはや小学生の持ち物の概念を完全に破壊していますが、これが「株式会社ワガママ」のスタイルです。




