第3話:引きこもりには「城」が必要だ
第2話での毒島(奴隷)の加入、いかがでしたでしょうか。
今回は、現代社会の裏側を支配するための「武器」を手に入れに行きます。
10歳の王子が、不登校の天才をどう口説くのか……お楽しみください!
「社長、本当にここでいいんですか……? 相手は数々の大企業をハッキングしたとされる、伝説の不登校児ですよ」
泥だらけのスーツ姿で、俺の重いランドセルを抱えた毒島が怯えた声を出す。
目の前にあるのは、築四十年のボロアパート。その一室から、異様な電子音と冷却ファンの回転音が漏れていた。
「ふん。伝説? 僕の前ではただの『ログインしていないプレイヤー』に過ぎないよ」
俺はノックもせずにドアを蹴り飛ばした(足が短いので、正確には踏みつけただけだが)。
「おい、氷室零! 出てこい! このアパートのサーバー、今から物理的にシャットダウンするぞ!」
「……は? 誰、あんた……ガキ?」
奥から現れたのは、目の下にどす黒いクマを作った、幽霊のような少年だった。
部屋の中は十二枚のモニターが怪しく光り、複雑なコードが滝のように流れている。現代の魔法使いの工房、といったところか。
「お前、こんな暗い部屋で一人、何をしている? 暇なのか?」
「暇じゃない……。僕は、このクソみたいな世界のシステムを書き換えてるんだ。……帰れよ、お坊ちゃん。ここは君みたいな幸せな奴が来る場所じゃない」
零が吐き捨てるように言い、キーボードを叩き始める。
俺は迷わず、そのキーボードの上にランドセルを叩きつけた。
「……ッ!? 何をする!」
「書き換え? 笑わせるな。お前がやっているのはただの『落書き』だ。本当の書き換えってのはな、現実を支配してから言うもんだぞ」
俺はランドセルのサイドポケットから、一本のLANケーブルを取り出した。
図書館で暗記した『最新ネットワーク脆弱性レポート』。そこには、この地域一帯の通信インフラが抱える「致命的な欠陥」が記されていた。
「零。お前が三ヶ月かかって突破できなかった九条財閥のファイアウォール。……五秒でこじ開けてやる。見ていろ」
俺は零の椅子を蹴り飛ばして座り、神速のタイピングでコードを打ち込む。
一度読んだプログラミング言語の辞書は、すべて脳内の『ライブラリ』に最適化されて保存されている。
「……え? 嘘だろ……。そこ、バックドアなんてなかったはず……」
「五年前の初期型システムに残された、開発者さえ忘れた『歴史』だ。お前は最新の技術に溺れて、過去を軽視しすぎたな」
画面に【ACCESS GRANTED】の文字が踊る。
零は呆然とモニターを見つめ、次に俺を見た。その瞳に、初めて「恐怖」ではない「光」が宿る。
「……お前、何者?」
「一条蓮。株式会社ワガママの社長だ。零、お前のその腕、僕の『わがまま』のために使え。お前が一生かけても手に入らない『最高の処理速度(権力)』を、僕が用意してやる」
「最高の、処理速度……」
「そうだ。僕に従えば、お前のキーボード一つで国を動かせるようにしてやる。お前には『暗い部屋』じゃなく、『王の右腕』がお似合いだ」
零の口角が、わずかに上がった。
「……いいよ。面白そうだし。でも、僕、学校は行かないからね」
「当たり前だ。あんな無駄な場所に天才はいらない。……さあ、最初の仕事だ。僕のこのランドセルに、世界経済をいつでも破滅させられる『核のボタン(ハッキング端末)』を仕込め。排気熱でカレーが温まる機能も忘れずにな」
「……何それ、最高にクールだね」
「ひ、ひいいい! 恐ろしい組織になってきた!」
毒島の叫びをよそに、現代の魔法使いが俺の軍門に降った。
これで、知略、実務(奴隷)、技術の三本柱が揃った。
「さて……次は、僕の『わがまま』を邪魔しにくる、あの高飛車なお嬢様にご挨拶といこうか」
俺の脳内ライブラリが、次の標的――九条財閥の令嬢のデータを弾き出した。
第3話、最強の技術職が加入しました!
ランドセルがどんどん兵器化していく予感がしますね。
次回、いよいよライバル・九条院が登場します。
「わがまま」対「お嬢様の規律」。勝つのはどちらか?
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