第2話:株式会社ワガママ、爆誕
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早くも蓮が現代社会の汚い大人と対峙します。
10歳の王子の「わがまま」が炸裂する瞬間をお楽しみください!
「……で、この書類にハンコを押せば、お父さんの工場は助かるの?」
放課後の夕暮れ。クラスメイトの佐倉サクラが、涙を浮かべて一枚の契約書を握りしめていた。
彼女の隣には、高級そうなスーツを不自然に着こなした、嫌な笑みを浮かべる男。コンサルタントを名乗る毒島だ。
「ええ、お嬢ちゃん。この契約書は魔法の紙なんだ。お父さんの借金が消えて、みんな幸せになれる。さあ、早く」
俺――一条蓮は、校門の影からその光景を眺めていた。
ランドセルの中には、図書館で一字一句記憶した『最新商法判例集』と『民法全解』が入っている。
「……ふん。魔法の紙、か。ずいぶんと安い魔法だな」
俺は静かに歩み寄り、サクラの手から契約書をひったくった。
「なっ、なんだ君は! 子供はあっちへ行ってなさい!」
毒島が顔を真っ赤にして怒鳴る。
俺は無視して、コンマ数秒で契約書をスキャンした。
なるほど。第5条の『債権譲渡の特例』と第12条の『遅延損害金の算定法』。これらを組み合わせれば、半年後には工場の特許をすべて奪い取り、家族を路頭に迷わせる仕組みだ。
「毒島さん。君の言う『魔法』には、ずいぶんと悪意ある呪いが込められているようだね」
「な、何を言って……」
俺は図書館で仕入れた知識を、帝王の威厳とともに叩きつけた。
「第8条の項目は『不当景品類及び不当表示防止法』のガイドラインに抵触している。さらに君の会社の登記簿、昨日調べたけど、資本金の出所が不透明だ。マネーロンダリングの疑いで金融庁に通報されたら、君の『ビジネス』とやらは即座にゲームオーバーだよ?」
毒島の顔から血の気が引いていく。
「な、なぜガキがそんなことを……。いや、ハッタリだ! 証拠があるのか!」
「証拠? ああ、君が昨夜、接待と称して経費で落とした銀座のクラブの領収書。その裏にメモした『キックバックの配分図』。今、君の鞄の右ポケットに入っているよね?」
「……ッ!!」
なぜ知っているのか、という顔だ。
簡単なことだ。君がさっきから何度もポケットを触って、ニヤついていたからだ。
人間観察は帝王学の基本中の基本。それに、俺の記憶力は君の表情のわずかな動きさえも見逃さない。
「ひ、ひいいいっ!」
毒島は腰を抜かし、地面に這いつくばった。
俺は泣きじゃくるサクラの頭を適当に撫で(家臣を労うのも王の役目だ)、毒島の髪を掴んで無理やり顔を上げさせた。
「毒島。お前、口だけは達者だな。気に入った」
「は、はい……?」
「今日からお前を、僕の会社の『奴隷社員第1号』に任命してやる。光栄に思え」
「ど、奴隷……? 会社……?」
俺はランドセルから、自由帳を破って作った一枚の名刺を毒島の口に突っ込んだ。
そこには、僕の新しい人生の第一歩となる名前が刻まれていた。
「会社名は『株式会社ワガママ』。経営理念は『僕がやりたいようにやる』。……さあ、最初の仕事だ。30分以内に、この街の全資産状況を暗記してこい。1秒でも遅れたら、お前の人生を物理的にデリートしてやるぞ」
「ひ、ひいいいいいいい!!」
夕闇の中、高級スーツの男が泣きながら走り去っていく。
それを見送りながら、俺はサクラに告げた。
「サクラ。お前の工場は僕が買った。今日からお前は、僕の専属の秘書(お世話係)だ。わかったか?」
「……う、うん! 蓮くん、かっこいい!」
……かっこいい?
ふん、当たり前だ。僕は王なのだから。
第2話、完封劇でした!
ついに「株式会社ワガママ」が動き出しました。
次は、引きこもりの天才プログラマーを「わがまま」にスカウトしに行きます!
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