前へ目次 次へ 9/10 黒鳥の影Ⅱ~黒鳥の旅 幻と現世(うつしよ)の架け橋は夢 溶解剤のように境界を溶かし 緩衝剤のように衝撃を和らげる 暗い道のりを旅する日々は 覚醒しながら見る夢のようだ 闇に埋もれそうな 赤い提灯の連なり 知らない言葉で 手招きする娼楼の女 しみじみと悲哀を歌う つま弾きの音色 初めて見る未知の光景が あたかも既知の情景のように 懐かしさを呼び覚ます ようやく帰って来た ここに 闇の中に見たあの色は 半世紀前の亜細亜の一隅の 小さな村に咲いた幻花 寂寥に潜む 歓楽の緋色だった