ラジオの中の世界
彼女が幼かったころ
ラジオが食卓にあった
誰かが流行りの歌を唄ったり
ニュースを読んだりしていた
彼女にはそれが不思議だった
モザイク柄のラジオの
その小さな四角の空間が
それぞれの家になっていて
人が住んでいるのかなぁ
なんてカワイイことを考えていた
「ここに小さな人が住んでるの?」
と尋ねると
母親はただニンマリとほほ笑んだ
どうすれば
こんな小さなところに住めるのだろう
子どもにとってはなかなかの難題だった
大人の答えは曖昧で
なのに
「誰も住んでいない」と否定はしなかった
だから
とてつもない仮説を立ててしまった
一軒だけでは寂しいから
この中には小さな町がある
そして病院もスーパーもある
やがてラジオの中には
彼女が想像した世界が
すっぽりと収まった
わたしには見えないけれど
みんなこの小さな世界で
仲良く生きているんだ
幼い創造主は
地球に似た星を
ラジオの中に
つくり上げていった
赤い屋根
青い屋根
庭には花が咲いて
蝶が舞っていた
森には泉があって
小鳥が鳴いていた
平和な世界そのものだった
青い空と白い雲
太陽と月と星
暗闇にバラまかれた
星くずの煌めき
美しい宇宙そのものだった
ラジオの本当の中身を知るのは
ずっと
先のことだった




