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第三話「宴の準備と強欲」

ああ、どうしてこうなったのか。

いやわかってる。僕がこの世界において必要なスキルを持っていることは。

ただ、皆がどのように不眠に対抗してるのかの詳細を聞いたり、皆と一緒に行動をして仲良くなりたいと思っていた僕にとって、今の状況はあまり良くない。

嬉しいしありがたいけど、良くない。

僕は今、ヒュードさんに明らかにホテルのスイートルーム的な場所に通され、好待遇を受けている。

母がママ友を呼ぶときの10倍はお高そうなカップに、飲んだことが一度もないけど美味しいと本能で感じるお茶が入っている。

今夜、宴をした後にの後に僕の<快眠>を使って、村の皆様を眠らせるらしい。

僕にも……宴の準備をさせて欲しい。誕生日のような祝福される実感のないイベントなのに、とソワソワする気持ちが溢れ出る。


白髪のメイドらしき美少女が、不安そうにこちらを眺める。



やっぱりこの子にも、深いクマがある。それにそこそこにふらふらしていて、心配だなぁ。

「ミョウジョウさま……寝具が貴方様の世界よりも粗雑なものとおもわれます。申し訳ありません。なにしろはるか昔か不眠が続くゆえ、睡眠の文化が諦められているもので……。」

 

 確かに家のよりも、何だかザラザラしてる気がするけど、それでも用意してくれたことに感謝だ。むしろ超浅く2時間しか眠れない世界で、ここまでいい寝具ができるのか。なんて上から目線だな。

 もはや1秒でも良い眠りを得ようと、寝具を発展させることすら諦められているのか。早く、皆を寝かせてあげたいな。


「えっと、僕も宴の準備に行きたいんですけど、いいですか?」


 すると、彼女は少しだけ目を見開き、


「えっと、ヒュードさんからはあまり居場所がわからなくしないようにと言われているのですが―。魔水晶で報告するので、少々お待ち下さい。」


「すみません。ありがとうございます。」


 少々手間をかけさせてしまったが、交渉の段階には進めた。よかった。

 「……あ、はい。ハデッサです!はい!ヒュードさん!はい!あ、レクリエーション方式、あ、分かりましたはいありがとうございます!…五賢人さまたちのお手伝いを、順に回ってく方式なら良いようです!」

 

 要人の外出だから慎重なのは当たり前なんだけど、社会見学かな?なんてふと思う。


「えっと、ありがとうございます!」


「いえいえ。ヒュードさんもあなたがこの村を拠点にする確率が上がると大喜びでしたよ!楽しんできてください。」


よかったぁ。皆のこともっと知りたかったし。

ハデッサさんが開けてくれた扉から外に出ると、お宿の前にヒュードさんが待機していた。


「よろしくお願いいたします!わたくしは各村に買い出しに行っておりました!メインの買い物は終わりましたので、ゆっくり参りましょう!」


ヒュードさんが丁寧にお辞儀をして、そっと手を差し伸べてくれる。


「えっと、よろしくお願いいたします」


僕は……彼女の手を指先だけで取り、彼女に着いていく。


「少し、この村の話でも。この村はですね、王国に登録してないんですよ。」


穏やかな語り口のまま、彼女は歩む。


「えっと、本来は登録されるんですか?」


「……いいえ、と言っておきましょう。ここ一帯を統治しているニアー王国への町村登録条件は、20名以上の『住民』と、4件以上の『住居』。この村には、『旅人』と、『宿』しかございません。宿が密集してるだけ、旅人たちの仲がいいだけの場所です。」


良いのかそれで。良いのかそれで!?

かなりのグレーゾーンな気がするが。


「あとついでにわたくしがやっているギルドは国立法人ギルドを真似した個人商売です。」


ねえ本当にいいのそれで!?!?


「あれ、でも、王国の保護というか、サポートというか、なくても大丈夫なんですか?」


保険に入ってないような状態なのだろう。大丈夫なのだろうか。


「確かに、大変なこともあります。しかし……。」


彼女は村の中心にある石塔に入り、草に覆われた床の扉を開ける。地下に続く階段がそこにはあり、ソレを2人で下っていく。


「これが、隠せる。」


ふとヒュードさんは、ぐるんと首を回してこちらをみてきた。

狂気、恍惚。そんな顔で。


そこにはこんこんと湧き出る、金貨…だろうか。―の泉があった。


「金貨、ですよ。国との交流ができて、これがバレたら、豚…貴族様のエサにしかならない。わたくしはねぇ、国をつくりたいんですよ!誰かの力を借りることはあっても、食われるような真似はしてはならない!力もあった!金もある!でも、国として認めさせる強大な何かがなかった!!…それが、」


ヒュードさんは僕の手首を掴み、彼女の方に引き寄せる。


「それが、貴方様です!神となりうるそのスキルで、圧倒的な権利を、利権を、力を、わたくしに下さい!!!」


なんか、すごく、怖い。近くてドキドキするとか、言ってられないくらい、怖い。


「えええええ、と。えと、具体的には、何をすれば、」


「……この村に永住すると、約束してください。今、ここで。」


「他の村とか国とか見てから、は、ダメなんですよね。」「はい」


僕は、はじめに拾ってくれたこの村で過ごすことに、抵抗感はない。けど。


「なぜ、国を作りたいんですか?」


「……………欲しいんです。全部。この世の宝石、スキル、権利、土地、人、人心、武器、防具、神器、神獣、天使、悪魔、神、冥界、異世界までも。」


この人に力を貸していいのかと思った。

けど、ソレ以上に。


「まだ皆に力を使っていない僕を、ここまで信じてくださり、ありがとうございます。」


底なしの強欲に魅入られて、魅入ってしまったから。


「上手く、使ってくださいね。」


気づけば、僕は彼女に掴まれてない方の手で、彼女の手を掴んでいいた。


「ふふっ。じゃあ、行きましょうか。」


泉から無造作に、必要な分だけ金貨を取り、僕らは地上に戻る。


「そういえば、他の村は行ってもいいんですか?このむ……宿の集落がバレたり――」


「ああそういえば。大丈夫です。そもそも結界に認められなければ、この村は見つかりさえしない。見つけても、なぜだか入ろうとも思えない。でも、王国の統治下になればその結界は剥がさなければならないので、宿の集落なんですよ。ここは。」


初めて聞くものが出てきたんだけど、結界とは?


「け、結界って?」


「あー。すみません。あなたが入村してくれるまで、言わないほうがいいかなーと。」


「あはは。えっと、結界に認められる、とは?」


すると彼女はすんと真顔になり、こう言った。


「死を望むほどの、悲劇を経験すること。」

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