少しは強くなったぞ!
いつもお読み頂きありがとうございます。
本日は12時の1回更新です。
宿屋の一室に戻った謙信は疲れ切っていた。
こう言うのを気疲れと言うのだろう。
ベッドに倒れ込むと大きく溜め息を一つ。
頭は混乱しぱなっしだ。
俺は異世界に飛ばされた。
つまり異世界転移。
この世界にもダンジョンがあって探索者が多くいた。
しかも街中にそれっぽいのがいたので日本よりも多い感じがする。
監視者のサフィが何故かいきなり日本でやっていたような動画配信を始めた。
この世界にも動画配信があり、配信者が多いようだ。
普通にネットのようなシステムがある。
文明の進み具合に対して、動画配信と言う分野においてのみ圧倒的に進化している。
サフィがおかしい。
こんな感じで謙信の頭の中では疑問が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していた。
『謙信様、初配信は好評でしたね。おめでとうございます』
『今回の配信で同接数54人となりました。またチャンネル登録者が50人になりました。達成したミッションがあります。ご確認ください』
『この宿にも魔導波映像受信機があるので頂いたコメントを見返す事ができます。返信も可能です』
『カードは残り27枚です。補充する場合はガチャを回す、ダンジョン内の宝箱で得る、魔物のドロップで得る、カードショップで買う、トレードで得るなどがあります』
『本日分の無料ガチャが残っています。忘れずに回してください』
謙信が返事しないのでサフィが延々と独り言のように話し続けている。
こいつは疲れないのかな?
そんな事を思いつつ、起き上がるとベッドに腰掛ける。
「はぁ……もういいよ。ステータス」
――――――――――――――――――――
◆◆◆ステータス◆◆◆
[種族]:人間族
[名前]:武田謙信
[性別]:男
[年齢]:27歳
[称号]:異世界人、灰燼に帰す者
[加護]:美女神の加護
[身分]:探索者
[価値]:UC
[位階]:14
[職業]:カード使い
[熟練]:3
[指揮]:☆☆
[個技]:‐
[戦法]:‐
[技能]:【カードⅠ】
[才能]:‐
[特性]:‐
[装備]:【鉄の長剣Ⅰ】
[等級]:【初心者・E級】
[HP]:118/118
[MP]:34/34
[SP]:79/79
[物攻]:99+100
[物防]:78
[魔攻]:33+200
[魔防]:57
[精神]:134
[知性]:155
[俊敏]:81
[幸運]:3+3000
◆◆◆能力◆◆◆
【カードガチャI】【カード化】【カード装備Ⅰ】
◆◆◆職業設定◆◆◆
[攻撃設定]:通常攻撃
[固有設定]:『カード』
[職能設定]:‐
[反撃設定]:‐
[支援設定]:‐
[移動設定]:‐
[特殊設定]:‐
◆◆◆カード装備◆◆◆
[装備コスト]:15(最大)
[攻撃カード]:‐
[魔法カード]:‐
[反撃カード]:‐
[支援カード]:‐
[移動カード]:‐
[道具カード]:‐
◆◆◆特殊ポイント◆◆◆
[AP]:200
[CP]:0
[TP]:200
◆◆◆ランキング◆◆◆
[撃破数]:121
[日本ランキング]:∞
[世界ランキング]:∞
[異世界ランキング]:∞
――――――――――――――――――――
「一気に上がったもんだな。これも炎龍王カードのお陰だな。これでスタートカードセットにあったSSRは無くなった。そもそも持てるカードが30枚って少な過ぎないか?」
『持てるカード自体は無限です。重要なのはデッキです。カードの山――デッキにある枚数が30枚だと思ってください。能力解放によってデッキの枚数の上限がアップします。熟練を上げると良いでしょう』
「そうなのか……だよな。そうしないと深層へなんて行けないもんな……」
『はい。昨日の無料ガチャはデッキに入れていないので入れておくと良いでしょう。本日の分も回しますか?』
忘れない内に引いておくとしよう。
ログインボーナスは日付が変わると同時にポイントが貯まるか、アイテムが出現するか自動で行われるので心配はない。
謙信はステータス画面とは別のウィンドウを表示する。
これも職業制度が出来てからの産物であり、能力を授かった者はそれで様々な設定を行う。習得したい魔法や剣技などを選択する際にもタップすればできるようになっているのだ。
取り敢えず無料ガチャを回すをタップすると、急に周囲が青い光に包まれてキラキラと輝き始める。ここが安い宿の一室だと忘れそうになる程の演出だ。
そしてウィンドウ上でガチャを回す様子が表示されて、昔のガチャガチャの機体のように中からカードが飛び出してくる。
画面に表示されたのは『Rミドルポーションが当たりました!』と言う言葉。
「ミドルポーションか。回復アイテムは助かるな。回復手段がないし、カードで引けないと詰むからなぁ……」
『ご心配には及びません。そこで解放されたカード装備の出番です』
「名前の通り装備するんだろうが、メリットはなんだ?」
『攻撃、魔法、アイテムカードは装備したものに関しては何度も使用可能です。反撃カードはカウンターで自動発動してくれますし、支援、移動カードは常時効果があります』
どうやらカード装備は職業設定と同じような効果があるようだ。
カード使いだけの設定なのだろうがコストがあるなら良く考えなければならない。カードには価値の他にもコストなどが設定されている。
今のところはカード数が少ないので選択肢もない。だからコストを気にせずに装備できるのだが……。
それでも心配はある。
いくらステータス自体は上がっていくとは言え、限られたカードだけで戦い抜くにはまだまだ不安感は拭えない。
日本でもカードがあったが、あれはかなり稀少なアイテムだった。
『問題ありません。こちらの世界テラーズは『カード使い』が使えるカードはダンジョン内でも見つける事ができます。地球……日本でもカードは存在してはいますが、どうやら排出率がかなり絞られているようです』
最早、当然のように心の内を読んでくるサフィの事はもう諦めた。
仮にも神が付けた監視者なのだから、超常的な現象を起こすのもおかしい事ではないから。
「(どうやら……? それって好きで確率いじってる訳じゃないって事か?)」
『……』
サフィは都合が悪いと黙る癖があるな。
沈黙を貫く彼女に謙信は質問する。
「疑問なんだが、そもそも日本じゃログインボーナスなんてなかったよな? こっちの世界だけの特典なのか? それとも俺だけ?」
『こちらの世界では職業を授かった者は皆、その恩恵を受けられます。地球にこの機能はありません』
「それってよくある世界の管理者が違うから世界の法則も違ってるって感じ?」
『そんなところです』
まだ異世界に転移して二日目だし、焦る事はないだろう。
自分の目で色々見て、体験して、理解していこうと謙信は心に決めた。
「んじゃ、動画のコメント確認してから外出するかー。この宿にもその装置があるんだっけ?」
『はい。魔導波映像受信機があります。この宿の一階の談話スペースに設置されているようです』
「ほいほい。まぁ初配信ならコメントなんてほとんどないやろ」
早速、談話スペースに向かうと昔ながらのブラウン管テレビにも匹敵する装置が置かれていた。何故か、嬉しい気分になって色々といじくり回して、側面から裏まで隅々を確認する。
「おお……なんか古過ぎての楽しいしかない……これが懐古厨か……?」
この宿では誰でも使う事ができるらしい。
新しい娯楽として定着してきていると、談話スペースにいたおじさんに教えてもらった。テレビやネットみたいな事もできるのか聞いてみたが、不思議な顔をされてしまう。どうやら現在はダンジョン配信やスローライフ配信などに特化しているようだ。
「あれ? 動画配信っていっても俺はアカウント持ってないんだが……」
『問題ありません。地球でのアカウント『とらドラちゃんねる』で配信しておりますので』
マジかー。
原理は理解できないが、これが異世界パワー!と言うヤツなのだろう。
早速、自分のチャンネルを開くとログインしてみた。
久々の画面に懐かしさを覚えつつ、動画を確認してみると確かに今日の日付でアップロードされているのが分かった。
「おおおお! 確かに登録者が増えとる! コメントも結構あるな。初めて過ぎて泣けるわ……」
今回は長い動画でもないので見返しながら、リアルタイムでついたコメントも確認していく。
ずっと見ていた謙信だったが違和感を覚えた。
考えながら心に引っ掛かった事を、探っているとふとある事に気付く。
コメントに一貫性がない。
日本の配信だと結構ふざけたコメントやネットスラングのようなコメントが多い印象なのだが、中に丁寧と言うか書き込みし慣れていないコメントが散見されるような気がしたのだ。
これは――。
『その通りです。ダンジョンでもご説明した通り、この動画はこの世界と地球の両世界から視聴する者がおり、コメントを残しております』
それで全世界配信と言う訳か。
と言うか異世界どんだけ発展してんだよ!
中世レベルに見えて一部が凄い進化している状態。
魔導具だからとか、そんなレベルじゃないような気がするのだが……。
何とも落ち着かないが、生存報告代わりになって良かったなと思う謙信である。
何しろオーガ戦で死にかけた配信を見たらしい視聴者からのコメントもあったからだ。
「ん? 雪華【公式】がコメントしてるぞ? 雪華と言えば人気の配信者だったよな……何で俺の動画なんて見てんだろ。俺の事を知ってるみたいだけど……おッよく応援コメントしてくれてた人もいるみたいだな」
動画のコメント欄にも書き込みがあったので、謙信は取り敢えず生存報告をしつつ感謝の意を伝えておいた。
雪華――玉響雪華にもちゃんと返信しておくのを忘れない。
理由は不明だが、必死にコメントしてくれていた事くらいは分かる。
縁があると言うのなら大切にすべきだと謙信が常々思っている事だ。
「おし、取り敢えずこれでいいだろ! ゲットしたもん売りに行くか。今回の戦闘の他にもあるんだろ?」
『その通りです。ミッションコンプリートによってアイテムが手に入っています。ただ貴重な物も多いので、貯めておくのも重要です』
「何が手に入ってた?」
『魔晶石の欠片、輝晶石の欠片、職業神の欠片(騎士)、感状、天賦×2』
どれも稀少なアイテムで、日本では入手は難しい。
これらはステータスにあるような項目を習得するために必要になってくるアイテムだ。すぐに売らない方が良いと判断する。
「ついでに散策がてら情報を取りに行くか! 探索者ギルドにな!」
『はい。こちらの世界には多くの猛者が存在しております。彼らとの友好は有意義であると考えます』
サフィの話ではこの世界では職業制度を授かるのは当たり前のようなので、5年前に世界大変革が起きて能力を授かった地球の者達とは年季が違う。それこそ100年以上生きた老人と生まれたばかりの赤ん坊、いやそれ以上に実力や経験に格差があるはずだ。
チートも嫌いではないが、謙信は努力で強くなるのも好きである。
とにかく女神が修行に行けと言うくらいなのだから、気に喰わないが言われた通り強くなってやろうじゃないか。
宿屋から飛び出す謙信の足取りは、もう軽くなっていた。
ありがとうございました。
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