予期せぬ強敵
今更ながら明けましておめでとうございます。
長らくお待たせして申し訳ございません。
不定期ですが、更新していきますのでよろしくお願い致します。
いきなりの戦闘に勝利した謙信たちはすぐに歩き始めた。
目指すは階層守護者の間であり、道のりは遠いだろうがウォーサイトがいるので問題はないだろう。
先頭にウォーサイト、次にアリア、最後に謙信が続く。
「あまりエンカウントしないな……珍しいものだ」
ウォーサイトがどこか警戒感のこもった声で言った。
石の壁がずっと続くのみで、目に入る光景に変化がない。
もしかしてまた、モンスターハウスでもあるのかも知れない
「どこかの部屋にモンスターが集まってるかも知れませんね」
アリアも謙信と同じ思いを抱いたようで、不思議そうな顔をしている。
別にモンスターに合わないに越した事はないと謙信は考えているのだが……。
『こらーーー! モンスターは何してやがるッ! 撮れ高が悪いだろうがぁぁぁ!! こちとら収益が掛かってるんだぞ!』
:がめついサフィちゃん
:収益wwwww
:撮れ高を気にする天使www
:天使も厳しい社会なんだなぁ
:今日はそこまで多くないな、同接数
:わし、参上
「あーサフィの上司が『とらドラちゃんねる』の収益とかガメてるからな? もっと稼げとか言ってたわ」
あまりにも暇だったのでボードを見ながら歩いていた謙信が事もなげに言った。
:この天使よwww
:それでも2000万ほどいるんだぞ!
:その上司は何なんだよww
:こっちから見ててもお金入るの?
:天界が上納社会っぽくて草
:えっ謙信に金入らねーの?
:草なんだ
『はん! 稼いでナンボの人生よーーー!!って上司が言ってましたよ。私が言ったんじゃないですよ? それにアースがマズい事に……あっ』
:失言多いよ何やってんの!
:繋がったら俺らの世界にも影響あるの?
:地球がどうなるんだよ……
:流 石 の サ フ ィ さ ん
:やらかしキタ―(゜∀゜≡゜Д゜)ムハァ―!!
:テラーズは大丈夫なんですか?
:また気になる事を言う
謙信とサフィが視聴者と盛り上がっていると、ウォーサイトが少し厳しい声を上げる。
「部屋に出るぞ。注意してくれ」
それを聞いたアリアが【SR・モーニングスター】を強く握り締める。
聖女の血が騒いだのかな?
謙信も【SR・神秘の剣Ⅲ】を抜き放った。
カードメインとは言え、接近されると厄介だ。
殴り飛ばせれば良いのだが、カオス種の場合は触れるな危険!である。
薄暗い通路から出ると視界が開けた。
壁も床も天井も巨石で組み上げられた造りになっている。
今更ながらに思うが、一体どんな仕組みで出来あがったのか不思議だ。
しかも階層ごとに全く素材も建築様式も違うのだから。
『お、いたいた! 魔物の群れがきたーーーーーー!! サイクロプスが2体、ヒュドラ1体……あれはヴァンパイア!?』
サフィが驚きで声を震わせている。
向こうには、確かに漆黒のマントを纏った貴族風の男が立っていた。
地球時代にネットで調べた事はあるが、会ったのは初めてだ。
その強さはピンキリらしく、神祖ともなれば討伐推奨位階は80以上とも言われていたはずだ。
「全員、待て! まずはカードで攻撃するからギリギリまで引き付けてくれ!」
1人なら楽なのだが、強いとは言え近接戦闘特化のウォーサイトと、なんちゃって後衛、狂気の前衛聖女アリアがいるので、一旦白兵戦になると攻撃用のカードが使いにくい。
早速、突撃しようとしていた2人が動きを止める。
いや、アリアも普通に突撃しようとしてたのか……。
「カードッ!」
謙信の周囲にデッキのカードが展開し周囲が虹色に輝く。
空から流れ落ちる星々のように煌めきながら一枚のカードが目の前に出現した
カードの種類は――技能カード【韋駄天】
「は? 技能カード? こんなもんあったか?」
『いつの間に手に入れてたんだーーー!! それは誰かに技能を付与できるすっごいカードだぞーーー!! またこんなところで運を使いやがってぇぇぇ!!』
そんなカードがあるなら自分を簡単に強化可能だ。
しかも技能があるなら、他にも才能、特性カードなどもあるかも知れない。
いや、あるはずだ。
「そりゃいいな! おし! 発動!!」
喜び勇んでカードを発動させる謙信だが――
何も起こらない!
「な? おい、何も起こらねーぞ!?」
『そりゃそうですよ。能力の『カードステータス付与』を覚えてないですからね』
「先に言えよ!」
:(´・ω・`) 知らんがな
:また漫才やってる……
:はよ戦えよwww
:魔物来てんぞ
:今日もサフィはサフィだぜ!
:ウォーサイトが見てるぞ
近くに佇んでいる2人に目をやると、確かにウォーサイトが如何にも「早くしてくれ」とばかりにため息を吐いている。
謙信は泣く泣くカードを墓地に捨てると、再度カードを引き直す。
「カードッ!」
カードの種類は――アイテムカード【R・エテルの雫】
「[精神]の増幅か……! アイテム化だ!!」
すぐに使うよりも一旦、アイテムにして必要な時にステータスを上げるべきだ。
『おーーーっと! 謙信様の引きが悪いぞーーー!! 久しぶりの更新だからかーーー!?』
「更新って何だよ!?」
:はよ引け!
:わし、また光弓が見たいんじゃ
:メタい
:ちんたらしてんなよ
:メタタァwwwww
:アリアたんもこれには困惑
その時、ヒュドラの口からブレスのような光線が迸り、ジャリっと言う音を残して近くを薙ぎ払う。
ウォーサイトとアリアは何とか躱したようだが、魔物はもう目前だ。
2人も焦り始めて今にも飛び出さんとしている。
「カードッ!」
カードの種類は――魔法カード【亜極雷陣】
「やっときた! 発動!!」
『やっときたけど果たして効くのか―――――!! 第4位階の広範囲雷撃魔法だーーー!! とは言え範囲が広い分、力は落ちるんだなこれが』
それくらい謙信も理解しているが、引いたからには使わねば勿体ない。
深階層で効果はあるのか――
魔物たちを巻き込んで雷撃が撒き散らされる。
派手なエフェクトで荒れ狂うが、効いている様子は見られない。
特にヴァンパイアは平然として、笑みさえ浮かべている。
:効いてねぇwww
:待った意味なし!
:突撃決定www
:やっぱ深階の敵は強いな
:引きが悪いと言うより、カードセットの中身が悪いのでは?
:一応、4位階だろ?
:効いてなくて草
『やっぱし効果がなーーーい!! どうした謙信! オメーの力はそんなもんかーーー!! その程度なのかーーー!!』
「効いてない! 俺が行く!」
「私も行きます!」
「待て、【轟火撃】」
突撃の前に謙信が魔法を連発して放つと、大きな火の塊が何発も魔物に向かって降り注ぐ。
効果はともかく、やらないよりはやった方が良いはずだ。
この【轟火撃】はカード装備にセットしてあるため、習得していない謙信でも使用可能なのものだ。
やばて爆炎が治まると煙の中から魔物が飛び出してくる。
迎え討つのはウォーサイトとアリアだ。
:轟火撃も効いてねーな
:結局は近接戦かぁ
:ウォーサイトが狂化で戦うぞ!
:あのヴァンパイアが強そうな件
:人材出せば?
:謙信、殴り殺せよ!
『謙信様は今回、全く役に立っていないーーーい!! 本当に主人公なのかーーー!? そう……皆、誰もが主人公……あなたの人生の主人公はあなた自身……』
サフィが何やら語っているが、謙信は気にする事なく人材を呼び出した。
「人材召喚、『R・剣豪王ジャムシード』、『UR・剣王アルトリア』」
見慣れた魔法陣が地面に描き出され、2人の人材が出現する。
謙信の指示を受けて、ウォーサイトたちの援護へ向かう。
そして自らも剣を片手に魔物へと突撃した。
:確かに謙信役に立ってない
:サフィちゃんがポエム言ってて草なんだ
:いや、謙信は殴ってこそだろ
:アースの人はウォーサイトを舐めてるよ?
:人材呼び出せる時点で十分じゃね?
:やっぱ引きが悪いと、サフィのキレも悪いのな
:アルトリアちゃん、きゃわわわわ
「ウラララララララ!!」
『狂化』を発動したウォーサイトが、巨大な大斧を振り回して暴れ回り、あっさりとサイクロプスを叩き斬っている。
アリアも神聖魔法で牽制しながら自慢のモーニングスターを振るっていた。
流石に物理聖女が心配なので、アルトリアには支援に回らせている。
謙信はサイクロプスの背後で戦闘を見守っているヴァンパイアへ【轟火撃】を放ちつつ、距離を詰める。
だがその体を霧と化して、あっさりと魔法は躱されてしまった。
「あんなん攻撃当たらねーだろ! くそ【付与魔法Ⅲ】が使えたらッ……」
そう思いながらも謙信は霧化を解いて現れるヴァンパイアへと斬りつけるが、何度やっても余裕で躱され続けていた。
【付与魔法Ⅲ】の能力はアリアの元仲間パーティの付与術士から奪ったものだが、魔法を習得していないため謙信には扱えない。
まさに無駄、死に能力なのだ。
「【暗黒閃光】」
ヴァンパイアの掲げた右手がチカッと煌めいたかと思うと、黒い光線が謙信の肩を撃ち抜いた。
思わず呻き声を漏らして片膝を付く謙信の口から舌打ちが漏れる。
恐らく通常の魔法も、物理攻撃も効かないだろう。
精神系は有効だと思うのだが……。
「アリアッ! ヴァンパイアに神聖魔法を使ってくれッ!」
「了解です!【神聖神柱】」
既にサイクロプスを狩り殺したウォーサイトはヒュドラの首を斬り落としている。
アリアは魔物から距離を取るとすぐに魔法を放った。
しかし命中するギリギリのところで霧化し回避されてしまう。
精神系統にダメージを与える魔法は発動が速い上、実体化していなくても効果を発揮しやすい。
『こんなところで手間取っててどうするんだーーー!! そんなんじゃ第56階層など行けんぞーーー!! 地球を……現実を舐めるなよ……!』
勝手な事を言いやがると謙信は心の中で毒づいた。
ウォーサイトがヒュドラを苦も無く葬り去った。
やはり強い!
アリアもヴァンパイアに向けて、神聖魔法を連発する中、謙信はカードを引き続ける。
そして――
「カードッ!」
カードの種類は――召喚獣カード【SSR・ピッコロリ】
『おおおおお!! セットに召喚獣カードが入っていたーーー!! これは……通るッ!!』
「やっとか! 喰らいやがれ! 発動!!」
謙信は自らの焦りを吹き飛ばすように、発動を叫ぶ。
魔法陣から巨大な悪魔の目玉が出現したかと思うと、その瞳から漆黒の怪光線が発射された。
凄まじいまでの大出力の光線だ――霧化して逃げられるとは思えない。
:うおおおおお
:うおおおお!
:極太光線www
:目から怪光線だwww
:流石にこれは効くでしょう
:本当にこんな怪物は何処にいるんだろうな
:テラーズとアースの他にも世界があるのかな?
衝撃で暴風が吹き荒れ、全員それに耐えるのに必死だ。
やがて嵐のような豪風が治まった後には、空中で実体化して漆黒のマントで身を隠すヴァンパイアの姿が。
「チッ……手応えありかと思ったんだがな……」
「謙信殿、あれはかなり上位のヴァンパイアではないか?」
「余裕そうに見えますね……」
全員が焦りに汗を浮かべる中、低い笑い声が部屋に響き渡る。
「ククク……暇過ぎてここまで上がってきたが……まぁまぁと言ったところか。だが――足りぬ」
魔物が流暢にしゃべった!?
知性がある魔物は人語を解するとは聞いていたが、ここまでとは。
地面に降りたちそう言い放ったヴァンパイアの言葉を、誰もが測りかねていた。
地下迷宮を上がってきた?
意味が分からないし、どうやって上がってきたのかも分からない。
ウォーサイトたちも訝しげな顔をしている。
『……』
「驚いておるようだな。私はこの迷宮の王。ヴァンパイアの王――神祖ダルヴァーグ」
瞬間――圧倒的なまでの覇気が解放され、衝撃となって謙信たちを襲った。
誰1人動く事も話す事もままならない。
これまで相対して来たカオス種以上の圧力に謙信は、心身共に押し潰されそうになる。
サフィは何故か沈黙したまま何も話さない。
都合が悪くなると黙るのが、サフィの分かりやすいところだ。
:いきなりのピンチで草
:これ死ぬパターンやで
:え?ガイナスダンジョンの主って事か?
:はい、負け
:倒したらどうなるんだよ
:教えてサフィちゃん!
:\(^O^)/オワタ
「来ぬのか? ではこちらから参ろうか」
溢れ出す喜悦がその言葉から漏れ出ている。
ダルヴァーグが右手を前へと突き出した。
謙信は剣を鞘に収めると、心を落ち着けるように大きく息を吐いて両拳を握った。
連携攻撃を仕掛けて、直接殴る!
「アルトリアとウォーサイトは近接攻撃を頼む! アリアは隙を見て神聖魔法を。ジャムシードはアリアを護ってくれ!」
張りつめていた空気が肌を刺し、ピリピリと刺激となる。
一気に緊張感が高まる中、ダルヴァーグが不敵な笑みを浮かべた。
サフィは沈黙を貫いている。
「主はどうする?」
アルトリアの言葉に謙信は決意に満ちた声で言った。
「俺は……殴る!」
ありがとうございました!




