その頃女神様は……
お読み頂きありがとうございました。
本日は18時から3回更新です。
これでラストになります。
その頃、天界では――
女神ラフィーナは必死に行動を起こしていた。
まずは世界システムを管理している神のところへ行かねばならない。
そして何とかシステムを修正して職業を追加してもらう必要があった。
何故かと言うとサフィからの要請があったためだ。
考えると頭が痛くなる。
あの地球で言われている、所謂、『世界大変革』によって異世界テラーズと地球が一部リンクしまった。
全ては敵対している堕天使――魔神たちの仕業なのは疑いようのない事実。
それの危険性を他の神々に指摘しても自分の管理する世界じゃないからと危機感がまるでない。
しかも面白いからと地球に干渉してゲーム賭博まで始める始末だ。
これがまさに度し難い、始末に負えないと言うヤツなのだろう。
「でも異世界の方は地球みたいにあんな差別が蔓延した悪夢のような世界にはならなかったのに変ね……」
システム管理神の元へ急ぎながらもラフィーナは考えるのを止めない。
双方の一体何処か異なっているのか?
確かに地球には存在しない種族はあるが、人間自体は全く変わらない種族。
魔物がいて魔核や素材、アイテム、カードなどの地球にはなかった物が存在するのがテラーズであり、地球で言うファンタジーな世界。
地球で起こった『世界大変革』以後の世界の理は双方同じである。
ここまで考えてハッと俯いていた顔を上げる。
「そうか……民度……価値観……文明度の発展具合の差かしら……」
地球の人間達は醜悪なまでに堕ちてしまい、神の御子とは呼べない程にひどい状態だ。全ての人間がそうだとは言わないし、良識のある者もまだまだ多い。
そうこう考えている内にシステム管理庁舎に到着した。
ラフィーナは中に入ると受付嬢の天使に用件を伝える。
「地球管理神のラフィーナよ。テラーズのシステム管理神と面会の予定があるのだけど」
「お待ち下さい……あ、はい。ラフィーナ様ですね。アポイントが入っておりますので、このカードキーでお入りください」
受付の天使にお礼を言うと、ラフィーナはすぐにシステム管理神の元へ急ぐ。
武田謙信に同行させたサフィからの助言を実行すべく。
「ああ、ラフィーナ様、お疲れ様です。でも一体どうしたんですか? 僕に用があるなんて?」
「ええ、お疲れ様、タナトスくん。早急に対応して欲しい事があってきたんだけど聞いてもらえる?」
「まぁ、異世界テラーズのシステム管理神の僕にご用なんて一体何なのか気になりますしね」
自分の担当ではない世界に干渉するために世界管理神に接触する事はあっても、態々システム管理神に会いに来る者はいない。
それでタナトスは興味をそそられたのだ。
「ありがとう。助かるわ。お願いなんだけど、何とかしてこの世界に『カード使い』と言う職業を追加して欲しいの」
「それで今日はこちらにいらしたと言う訳ですね。しかし地球ではなくこちらの世界にですか? でもまたどうしてでしょう?」
訝しげな表情になるタナトス。
このような依頼は初めてなので彼は戸惑いを隠せないでいる。
「ちょっとテラーズに地球から一人、人間を送り込んだんだけど、その者に『カード使い』って言う新しい職業を与えたいのよ」
「ああ、世界管理神の方々がよくすると言うチート能力と言う奴ですか? なるほどなるほど……」
勝手に納得して頷いているが、そこはどう取られても問題ない。
異世界に転生させる際に神の能力の一端を授ける事はままあるからだ。
「うーん、まぁ違うんだけど別にいいわ。とにかくお願いしたいの。彼個人だけに適用してもらえればいいのよ」
「んーでも上司の世界管理神様にバレたら怒られそうなんですが……」
渋るタナトスを見て焦れる心に拍車がかかる。
本当はあそこで我を忘れて怒るなんて事をせずにもっと強い力を与えていれば良かった話なのだ。
武田謙信が想像以上に正義感が強かったのを見抜けなかった故のミス。
煽ったら煽り返されたせいである。
要はラフィーナに煽り耐性がなかっただけ。
では強い力を与えれば良かっただけと言うのは何故なのか?
それはテラーズの世界と地球のシステムはほぼ同じなのだから。
それなのに怒りに任せて【カード】の技能しか与えなかった。
ラフィーナは自らの過ちを悔い改める。
「本当に困ってるの……ねぇお願い……」
甘い声でそう囁くとタナトスは純情なのか、顔を赤らめてもじもじし出した。
本来ならばこんな事はしたくないのだが、時間がない。
色仕掛けで落とすしかないとラフィーナは体を張る覚悟を決める。
「ね? あたしを助けると思って……」
タナトスの隣に座ると身体を密着させる。
その豊かな胸と凹凸のついた抜群のスタイルで彼に迫る。
「(畜生……なんであたしがこんな目に……ってあたしが悪いっちゃ悪いんだけど……)」
「わ、分かりました……でも職業名はともかく仕様はどうするんですか……?」
「仕様は考えて来たわ」
聞かれる事は想定していたので仕様書にまとめていたのだ。
ラフィーナはデスクの上にそれを丁寧に置いた。
タナトスは手に取ると、すぐに目を通し始める。
「一気に導入しなくてもいいわ。能力や技能が解放される度に新しい機能が増える仕組みにするから。解放される順番が速い物から実装して欲しいの」
「ふむ……なるほど。力を手に入れるにはちゃんと手順を踏ませるんですね。チートじゃないのか……」
流石はシステム管理神だけあって仕様書には興味津々のようで、すいすいと読み進めている。
これで引き受けてくれるといいんだけど……。
地球を管理する立場として世紀末な状況を加速させる訳にはいかない。
ラフィーナはどんどん不安になる。
「分かりました! ラフィーナ様の頼みですしやってみます。僕の上司にはご内密に……今度デートしてくださいね」
タナトスはデートの事を思い浮かべたのか、その表情は緩みきっていた。
デレデレの顔を見たら彼に対する罪悪感と自身に対する嫌悪感に襲われて、ラフィーナの声が上ずる。
「え、ええ……ありがとう。近い内にね」
それに気付かないタナトスは仕様書に目を通しつつも専門的な話を始めた。
凄い嬉しそうに瞳をキラキラさせて話す姿は
「そう言えば、こっちの世界にも探索者配信システムを導入したばかりなんですよ。第一次ダンジョンブームに続いてブームが起きて欲しいですねぇ。あッコレは地球の動画配信を参考にさせてもらったんですよ!」
「え……そんな事しちゃったの? 大丈夫かしら……(地球みたいにならない事を祈ってるわ……でもまぁダンジョン実装時は混乱はなかったって聞いてるし大丈夫なの……かな?)」
「魔導具で映像配信用使い魔と魔導波映像受信機を開発させましてね。普及率も上がってきてます。いやーテラーズの世界にももっと娯楽をと思ってたんですよねー」
その後もタナトスによるシステム自慢が続き、ラフィーナはうんざりする程、話を聞かされたのであった。
技術者の性と言うヤツである。
全く彼らと来たら……。
ありがとうございました。
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是非是非よろしくお願い致します!!
6話目からですが、水晶球のサフィさんの配信で実況解説しております。
明日は6時、12時、18時の3回更新です。




