判明する力の片鱗
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『セレンティア・サ・ガ』
~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~
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ドアをノックする音で自分が眠ってしまっていた事に気が付いた。
訪ねてきたのはアリアだろうと思い、謙信はすぐに入室の許可を出す。
部屋に時計はないし、謙信も持っていないため時間が分からないが彼女なら時間通りに姿を見せるだろう。
控えめに中を窺うようにしてドアを開けて入ってきたアリアは謙信からの返事が中々返ってこなかったため心配だったのだ。
「もしかして、寝てらっしゃいましたか?」
「いや、ごめん。ちょっとウトウトしてた」
慌てて謝る謙信に、アリアは責めるどころか心配している様子だ。
「やっぱりあの影響なんでしょうか? 精神に疲れが溜まっているのかも知れません……」
「大丈夫だよ。今日は助かる。ありがとうな!」
そう言われて赤くなって俯く彼女に謙信も心配になる。
「アリアも顔が赤いぞ。風邪気味なのかな? 熱があると大変だから今日は止めておこうか?」
「え、ええっ! いえ、だだ大丈夫です! それでは始めますよ~!」
急に慌て始めるアリアの態度に疑問を抱きつつも、それならと尋ねる。
「どうしたらいい? 服脱ぐとか?」
「ふっ服を脱ぐ!?」
更に顔を赤くして手をぶんぶかと振る彼女。
もしや、自分と同様に何か異変があったのか?と思わず謙信は彼女の肩を掴んで揺さぶった。
「あうあうあうあう」
「これはもう見てもらってる場合じゃねーな……病院とかあるのか?」
『謙信様、彼女は健康的に問題はないと判断します』
見かねたサフィが口を挟んでくるが、彼女はいつも正確な情報しか言わないし信じてもいいだろうと謙信は考える。
「えッ……そうなのか? まぁサフィが言うなら間違いないか……」
「で、では、はりめらる~」
「っておい!」
「はっ! はいすみません。始めます! うーん、【精神感応Ⅱ】!」
彼女が技能を使うが、謙信には何も感じられない。
彼は解析系の技能を持っていないため分からないのだ。
「何か見えるのか? 俺の精神が丸裸にされるのか……どうなってんだろうな。俺の精神は……」
『……』
サフィがずっと黙っているのだが、何を考えているのか気になるところだ。
アリアは訝しげな顔をしており、何処か腑に落ちないと言った感じだ。
「うーん……特に異常は見当たらないですね……正常時と同じです」
「異常があったらどんな風に見えるん?」
「精神系の異常が表示されますね。『精神高揚』とか『精神錯乱』とか。でも私としては今の謙信さんからも変な感じがするんですが……おかしいなぁ」
アリアもこんな状況は初めてなのだろう、眉を寄せて困惑顔だ。
「こう言うのって【鑑定】とかで分かるもんなのかな?」
『【鑑定】は分かることが多いですが、恐らく【解析】の方が適しているかも知れません』
そう言って口を挟んだのはサフィだ。
彼女が言うなら確かなのだろう。
「もう1度潜って魔物と戦ってみますか? えっと……良かったら私も同行しますし……戦っている時に技能を使えば別の結果になるかもです」
「そうだなー。あ、そっか。まずはあいつらに会いに行くって言ってたよな」
『そちらが先かと』
「あいつら?」
起床時にサフィが言っていた4人組のことである。
彼らから能力を奪ったと言うのなら、現在の彼らのステータスを見れば、それが消えているはずである。となれば、奪い取ったのが謙信であると確定するのではないか、と言うことだ。
「アリアは宿にいなよ。俺はあの4人のところに行ってくるから」
「なるほど……あの人達の事を調べるんですね……私も行きます!」
「無理する必要はない。会いたくないだろ?」
「いえ、謙信さんも居場所知らないでしょうし、私ももう気にしてませんから大丈夫です!」
アリアは頑張るぞいとでも言いたげな態度で、ついて来る気満々でさる。
仕方ないかと思った謙信が承知すると、彼女はとても嬉しそうにはしゃぐのであった。
「(なんで嬉しがってんだろ……この娘)」
アリアの案内で拠点にしていた宿屋へ到着する3人。
いや2人とカメラ1台。
「結構良い宿に泊まってんだな」
「羽振りはよかったですね……」
早速、案内してもらい部屋の扉をノックするとすぐに反応があり、誰がが顔を覗かせる。
その人物は何を隠そうあのミヤポンであった。
その表情が驚愕と怒りと困惑が混じったものに変わる。
混じり過ぎて合っているかは分からないが。
「テ、テメェ……よくも顔を出せたもんだな!」
「いや、悪いのはお前らだろ。ギルドから懲罰もんじゃねーの?」
「うぐ……」
ぐうの音も出ない正論にミヤポンが押し黙った。
別に彼には用はないので、魔導士2人を部屋に呼びに行かせる。
「あっ!」
「お主ッ!」
暗黒導士と付与術士の2人が謙信を見た瞬間、驚いたかと思うと、すぐに怒りの形相に変わった。
あっと言う間に詰め寄ってくる彼らの顔を見て、流石の謙信も少し怯む。
「貴様ぁぁぁ!! 貴様だなッ! わしの能力を奪ったのは!」
「そうよ! アンタのせいで付与魔法が使えなくなったんだから!」
「あれはお前らから売ってきた喧嘩だろ。それに悪い事をしたのはそっちなんだからな。またギルドに報告しとくから覚悟しとけよ?」
食い下がる2人に自身の過ちを自覚させてやろうとする謙信。
しかしかなり必死な様子で抑え付けても抵抗を止める事はなかった。
やはりそうなのか?と謙信が質問する前にサフィから声が飛ぶ。
『ステータスを提示しなさい。どうせ貴様らの能力がなくなったのでしょう? それを確認します』
有無を言わせぬ程の怒気を孕んだ言葉だ。
謙信はその怒りの表情が見えるような気がした。
「は、はい……」
あまりの迫力に腰を抜かしたのは暗黒導士。
だが付与術士の女に促されてステータスを表示させる。
大喝で腰を抜かさせるなどどれ程の覇気を持っているのかと、謙信の中でますますサフィの謎が深まる一方だ。
『やはり……謙信様。こやつらから能力の【暗黒魔法】【付与魔法】が消えています。職業が暗黒導士と付与術士であるにもかかわらず』
サフィの言いたい事は分かった。
彼らは転職しない限り、自分の能力を扱えないと言う事だ。
『聞いた話では漆黒の龍を宿す者は全てを喰らうと言うそうです。それに謙信様が仰った「能力を喰らい尽くせ」と言う声。これが原因である可能性が高いと判断します』
「つまり俺の中に眠る漆黒の龍が能力を奪ったと……参ったな。俺は普通の人間のはずなんだが?」
『これは明らかな異能です。世界の理に適っていない。いや私が知らないだけかも知れませんが……とにかく謙信様は漆黒なるオーラを取り込み、相手の能力を奪い取る事ができると断定致します』
「困ったな。カオス種に対して有効な攻撃なんだろうが、あの狂気に飲まれたら俺自身がどうなるか分からねーのがな……制御できるか疑問だ」
「ちょ、ちょっと待って……私達はこれからずっと魔法が使えないって事? 能力を返してもらうことはできないの!?」
謙信とサフィのやり取りに割り込んできた付与術士の女が焦りを含んだ上ずった声で聞いて来るが、そんな事は誰にも分からない。
2人?が顔?を見合わせるも謙信には苦笑いする事くらいしかできなかった。
『現状は難しいと判断します。謙信様に絡んだ自分達を恨んで下さい』
サフィから残酷な宣告を受けて魔導士2人はその場に崩れ落ちた。
それを茫然とした顔で見つめる仲間達。
転職するには大枚はたいて魔導具を使わせてもらうか、転職士の職業に頼むか、特殊な技能などを使うかなどで選択肢はあるが実際にできると言われれば難しいかも知れない。
一番地道に行くならばアイテムの『職業神の欠片』を集めるくらいだろうが、それも気の長い話である。
「まぁ、スマンが俺も悪気があった訳じゃないし巻き込まれた側なんでな。諦めてくれ。それともう一度ギルドに顔出せよ? じゃなきゃ突き出すからな?」
4人共、探索者ギルドにはもう一度、出頭するように言われているはずだ。
「はぁ!? もう事情は話しただろ! 何で俺達が突き出されなきゃならねぇんだよ!」
「お前は自分がした事の重大さを理解してねーのか? 都合の悪い事は忘れるタイプか? アリアを見捨てて囮にして逃げたのは探索者規約の重大違反だと思うんだがな」
抵抗しようとした彼らの機先を制して、謙信は瞬く間に制圧した。
一人ずつ縄で縛り上げると、探索者ギルドへと向かう。
後はもう一度、突き出しせばこの件は終了だ。
動画にも彼女が逃げてきたのは映っているいるし、4人がアリアとクランを組んでいた事は調べれば分かる。
問題はこの件が片付いた後。
謙信はこのままダンジョン探索を行って良いものか考え始めていた。
ありがとうございました。
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明日は19時30分の1回更新です。
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