カオス種、現る
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謙信はとうとう目的地である地下第20階層に到達していた。
ダンジョン内は鬱蒼とした木々が林立した大森林系の階層である。
大抵は通路と大部屋からなる階層だが、まるで外にでもいるかのような様々なマップが存在するのがダンジョンの特徴でもある。
「皆さん、えっと目的の第20階層に来る事ができました。これから探索していきたいと思います。その前に……ステータス」
――――――――――――――――――――
◆◆◆ステータス◆◆◆
[種族]:人間族
[名前]:武田謙信
[性別]:男
[年齢]:27歳
[称号]:異世界人、灰燼に帰す者
[加護]:美女神の加護
[身分]:探索者
[価値]:UC
[位階]:20
[職業]:カード使い
[熟練]:5
[指揮]:☆☆
[個技]:‐
[戦法]:‐
[技能]:【カードⅠ】【完全分身Ⅰ】
[才能]:【剣の才能Ⅲ】
[特性]:【幸運】
[装備]:【ブラチナソードⅡ】
[等級]:【初心者・E級】
[HP]:203/203
[MP]:103/103
[SP]:199/199
[物攻]:145+100
[物防]:100
[魔攻]:102+200
[魔防]:82
[精神]:203
[知性]:200
[俊敏]:232
[幸運]:10+3000
◆◆◆能力◆◆◆
【カードガチャI】【カード化】【カード装備Ⅰ】
【カード付与合成】
◆◆◆職業設定◆◆◆
[攻撃設定]:通常攻撃
[固有設定]:『カード』
[職能設定]:‐
[反撃設定]:‐
[支援設定]:‐
[移動設定]:‐
[特殊設定]:‐
◆◆◆カード装備◆◆◆
[装備コスト]:15(最大)
[攻撃カード]:【演舞のカードⅡ】コスト3
[魔法カード]:【轟火撃】コスト5
[反撃カード]:【鉄の短剣Ⅰ】コスト1
[支援カード]:【熟練強化Ⅰ】コスト3
[移動カード]:‐
[道具カード]:【ミドルポーション】コスト3
◆◆◆特殊ポイント◆◆◆
[AP]:1050
[CP]:0
[TP]:880
◆◆◆ランキング◆◆◆
[撃破数]:278
[日本ランキング]:∞
[世界ランキング]:∞
[異世界ランキング]:∞
――――――――――――――――――――
:職業設定に加えてカード装備もあるとか反則じゃね?
:まぁそこはまだ他の職業になってないし、ある程度はね
:おお位階20になっとる!
:謙信さん、ここ数日で一気に強くなったような……
:幸運を掴む男
:幸運だらけじぇねーかww
:魔法カード装備ってまさか何回も魔法使えるのか?
:技能欲しいよね
『早速ですが、敵です。オーク3体、オークジェネラル1体、ハイリザード2体、リザードキング1体です』
「また多いな……いつもこんなに多いのか?」
『いえ、普通はもっと少ないはずなのですが……』
珍しく言葉を濁すサフィ。
その言葉からは困惑が感じられる。
謙信は接近される前に魔法カードを引くべく直ぐにカードを展開した。
「カードッ!」
『おおおおおおおおお!! 早速のカード攻撃がくりゅぅぅぅぅぅ!! 神の手は一体何を掴み取・る・の・かーーーーー!!』
:演出キターーーーー!
:煌めく夜空
:演出の中で一番好きやわ
:何が出るかな~
謙信の周囲にデッキ内のカードが展開し周囲が虹色に輝いた。
カードがぐるぐると回転し煌めきながら流星の如く降り注ぐカードを選ぶと一枚のカードが目の前に出現した
カードの種類は――物攻強化カード。
「発動!!」
謙信の体がオレンジ色の光に包まれる。
武器も強くなっているし位階も上がってステータスも強化されている。
とは言え、出現した魔物はCランクからB+ランクまでおり強力だ。
直ぐにもう一度引き直す事に決める。
『物理攻撃強化は出来たが相手は強者揃い……謙信様、即断即決ぅぅ!!』
「カードッ!」
カードの種類は――魔法カード【爆撃烈風】
謙信が引き当てたのは第4位階魔法【爆撃烈風】。
大規模範囲内の敵を爆風で吹き飛ばす魔法だ。
『やはり神引きだーーーー!! いいもん持っとる!! これで敵の数を減らしたいところだーーーー!!』
魔物の群れ7体も謙信を見つけて襲い掛かってくる。
間合いまであと少し――」
「ここだ! 発動!!」
刹那、凄まじいまでの豪風と共に破壊の足音が近づく。
木々をなぎ倒し焼き払い、その中にいた魔物をも巻き込んで爆音と暴風の協奏曲を奏でる。魔物達は連鎖的に大爆発を起こして体が弾ける者、火達磨になってのたうち回る者など様々だ。
:派手過ぎて草しか生えない
:また第4位階魔法かよ……
:引きもいいがドロップもいいんだよな
:また勝ってしまうのか。敗北を知りたい
:視界が利かんな
:すげー
:そして誰もいなくなった
爆炎と煙で視界が遮られる中、謙信はどうするべきか考えていた。
新たに追撃するか、脱出してきた魔物を剣で殺るか。
まだまだ圧倒的に戦闘の経験値が足りていないだけに魔物のランクが頭に入っていてもどの程度で倒せるか分かっていないのだ。
『一撃必殺、魔物よ。勝てない事を学ぶんだな……。今回も圧勝かーーー!!』
そこへオークジェネラルとリザードキングが飛び出してくる。
流石はBランクのオークジェネラルとB+ランクのリザードキングである。
謙信はカードを使うのを止めて剣で戦う事に決めた。
交わる剣と剣。そしてリザードキングは銛のような得物で攻撃してくる。
お互いの剣撃が火花を散らし、大した膂力なので直接受けるのは危険だと判断して剣でいなす。
「鬱陶しいんだよ!!」
流石の魔物達も強力な魔法攻撃によってかなりダメ―ジを負っていた。
オークジェネラルの剣を根本で叩き折った謙信は、役に立たなくなった得物を捨てて殴り掛かってきたところに合わせて脇腹を薙ぎ斬る。
更にリザードキングの連続突きを何とか躱しながらオークジェネラルの背後に回るとバッサリと斬り捨てた。
やはり【剣の才能Ⅲ】が付与された事で明らかに動きが良くなっているのが理解できる。
自らの不利を悟ったのか、残る1体が逃亡を開始するが逃がしてやる程甘くはない。すぐに追いつくと、大ジャンプしてガラ空きの背中を大上段から斬りつけた。
だがリザードキングの硬い鱗は容易には抜けないようで、強引に前を向かせると柔らかい腹部を狙って剣を繰り出す謙信。
『意外と粘るのは赤コーナーのリザードキングだーーー!! 速い! 速過ぎてついて行けなーい!! お互いの連撃が激しくぶつかりあっているーーー!!』
謙信は蹴りを使ってお留守になっていた足元を狙い、見事に地面に転がす事に成功する。
仰向けになったリザードキングの腹部、胸部へ剣を突き刺していった。
血がほとばしり、鮮血が周囲を赤く染める。
やがて動かなくなると、リザードキングは消滅して魔核とドロップアイテムに変化した。
『カンカンカンカーーーン!! 武田謙信! またしても勝利だぁぁぁぁぁ!!』
:カード使いって攻撃力も補正値高いのかな?
:魔術士系のような気がするけど
:補正値って何?
:強いわ
:補正値とか成長値とかあるんだよ
:カード装備の魔法使えば良かったのに
:初耳だな。詳しく教えて欲しい
:デッキに技能カード入れて引けば技能習得できるんじゃないの?
「あーそれができたら楽なんだけどなー。デッキに技能カードを入れても俺自身には使えないんだよ。人材カードがあればその強化には使えるんだが」
『流石にそこまで人生甘くありませんよ。まぁ能力解放され……ボソボソ』
:これでも甘々なんだよなぁ
:カメラが何か言ってて草
:できるのかな?
:うp主聞こえてないよね
:良く考えたらハイスペックよな主は
:剣の才取ったし最悪殴って勝てるからね
:結局付与できるんじゃねーかwww
取り敢えず謙信が魔核とドロップアイテムを拾い始めた。
これって高火力で破壊されないのかななどと考えつつ。
「キャアアアアアアア! 助けてぇぇ! 死ぬっ死んじゃう……」
回収を終えた謙信は、その悲鳴を聞いて思わずサフィと顔を見合わせる。
水晶球のサフィに顔などないのだが……。
すぐにイベントの臭いを嗅ぎ取った謙信はすぐに声のした方向へ走り出した。
これは小説で良くある救出イベントと言うお約束だと直感して。
声が反響する森を何とか抜けて、記憶を頼りに探しに探す。
その先には3体の魔物に襲われそうになっている一人の女性らしき影があった。
あれは――
謙信の脳があの時の記憶を鮮明に思い起こさせる。
あの時――そう、謙信が殺されかけた時の光景が。
魔物の正体は――オーガ。
B-ランクの魔物で非常に凶悪で好戦的な性格をしており、人間を喰う。
正直、力に関して言えばランク以上の魔物だと謙信は考えていた。
謙信が現代日本で襲われた時もそうだが、この階層ではあまり見かける事のない魔物である。
『ここでイベント発見キターーーー!! まるでラノベだな……。つーいーにーハーレム要員がクルーーー!!』
心なしか、サフィがいつもより興奮しているように感じるが今はそのような事を考えている場合ではない。
何の因縁か、相手はオーガ。
そして今にも殺されて喰われてしまいそうな探索者がいる。
助けない理由などない!
謙信はプラチナソードを抜き放つと全速力で女性とオーガとの間に滑り込んだ。
振り上げられていた巨大な棍棒が叩きつけられる。
得物と得物がぶつかる音がした。
しかし澄んだ音などではなく鈍いそれが耳だけでなく体全体に伝播する。
「大丈夫か!?」
突如として目の前に現れた闖入者にオーガが混乱している。
この通り彼らは頭に関して言えばあまりよろしくはない。
謙信が庇ったのは女性と言うより、どちらかと言えば少女――大人と子供の間くらいだろうか。
掛けられた言葉に震えながらコクコクと頷いている。
『謙信様、ただのオーガではありません。オーガ2体、オーガキング1体です』
その声はいつにもまして真剣であった。
オーガキングと言えばAランクに指定される程の魔物だ。
「(俺のトラウマ……いつまでも俺の心を恐怖で支配するなよッ!)」
:第20階層でオーガキング?
:特別種とかか?
:こんな場所には出んぞ
:うp主終了のお知らせ
:逃げた方がいい
:頑張れ謙信さん!
:カードで勝てるぞ
「おい、アンタ! とにかく逃げろッ!!」
『おーーーーっと! 主人公らしいセリフがキタコレ!! 私も一度言われてみたーーーい!!』
彼女は腰が抜けて中々立ち上がれずにいたが、何とか地面を這いずってオーガ達から離れていく。
オーガのヘイトも謙信に向けられたようで、攻撃を仕掛けるべく別の1体が戦斧を振りかぶった。
棍棒でもきついのに戦斧などを剣で受けてはいられない。
大きく後方へ飛ぶとカード装備の魔法を発動する。
「【轟火撃】!」
地獄の業火すら連想させる程の大火球が棍棒を持っていたオーガに直撃して爆炎を周囲に撒き散らし、もう1体のオーガをも巻き込んだ。
カード装備の魔法も普通にMP消費があるので、連発する事はできない。
声を出す必要もないのだが、自身の確認の意味でも魔法名を口にしておく。
『残虐な愚物、神の御子たる人間をも喰い殺す野蛮なド畜生に、謙信様からの裁きの極炎が降り注ぐぅぅぅぅ!!』
謙信は全身を丸焼きにされて、いよいよ盛んに暴れ出したオーガを差し置いて、のろのろと走ってくる戦斧のオーガを迎え討つ。
力に任せて振り回すだけだが、そのプレッシャーは計り知れない。
額に汗しながらも謙信は一瞬の隙を衝いて、すれ違いざまにオーガの脇腹を薙ぎ斬った。
:勝てそう
:がんばえー
:勝ってくれえええええ
:あの一番でかいのが動かないのが不気味なんだが
:オーガキングとか絶望でしょ
:深層部の奴よりは弱いはずだからワンチャン
:カード使えよカード!!
:謙信さん今度はオーガ!?
『怒りの斬撃がオーガの腹を薙ぎ斬る!! 綺麗に決まったぁぁぁ!! え? これもうクリティカルヒット判定でいいでしょ……』
直ぐに振り返った謙信は背中を晒すオーガを背後から斬る。
思いきり全体重を乗せた攻撃に堪ら絶叫がほとばしる。
そして未だに火達磨になっている方のオーガにカード装備の【演舞のカードⅡ】を放った。
更に悲鳴を上げて痛がってはいるが、やはりそのタフさには呆れさせられる。
本当なら一番最初に魔物の指揮官を倒すのがもっとも良い方法なのだが、如何せんソロプレイだと中々に難しい。
指揮官を狙う理由はステータスにある[指揮]の影響だ。
☆が多い程、指揮下の魔物のステータスが強化されてしまうのである。
「(タフ過ぎるッ……カード使うか……)カードよ!!」
いつも通り虹色に輝き、デッキのカードが周囲に展開すると煌めくカードが一枚出現する。
カードの種類は――物攻・魔攻強化カード。
「まぁ良し!! 発動!!」
謙信の体が緑と赤色の光に包まれる。
すぐさま、カードを引く体勢にはいる。
「カード! 来い!」
カードの種類は――魔物カード。
「くそッ! 発動!」
現れたのはオーク1体。
こればかりは仕方がない。
カードの補充が魔物の落とした武器ばかりになってしまいかねないので、魔物を弱体化したら『カード化』の能力を魔物に使用しているからだ。
謙信の感覚的にはカードのドロップ率はそこまで低い訳ではなさそうだが、それでもレアカードが排出される可能性は低いのだ。
『カードセットの貧弱ぅさがここに来て大打撃だーーー!! しかもこのオーガ、タフ過ぎぃ!!』
「【轟火撃】!」
装備した魔法を発動、着弾し、ようやく棍棒を持っていたオーガが大地に倒れ伏した。
オークがオーガに勝てる訳がない。
壁役にすらならないだろうが気を引いてくれればそれでいい。
謙信の焦りが募っていく。
残りのカードで期待できそうなのは、召喚獣カード2枚と魔法カード3枚くらいだ。だが、それは最後の如何にも強そうなオーガキング戦に残しておきたい。
:一匹倒した!
:やったか……?
:フラグやめーや
:この魔物強いねー
:わしが魔法を使ってやりたいのう
:謙信さん、首刎ねて首!
:魔核破壊に切り替えろ!
最早、ボードのコメント欄を確認している余裕すらない。
残ったオーガの大振り一撃を紙一重で躱して懐に入り込むと心臓目がけて剣を深く突き刺した。魔物によって魔核の位置はバラバラだが、人型であれば心臓付近にある事が多い。
その願いが通じたのは、オーガはビクンと体を震わせると、その3m以上もある巨躯を大地に横たえた。地響きが起こるほどの質量に、突撃された時の事を想像して冷や汗が止まらない謙信。
『オーガ2体討ち取ったーーー!! だが動かない! 動かないぞ、オークキングーーー!!』
「よし……俺は俺を殺しかけたオーガを殺した。俺は勝てる! やればできる!」
謙信は自分を殺していたはずの因縁の相手――オーガを倒して高揚する。
だがここで――ようやく。
同胞とも言える2体の死を見届けると、5m近いオーガキングが遂に動き出した。
:ここからオーガキング戦とかきつくない?
:撤退した方がいいと思います
:でも後ろの女の子まだ震えてるよ?
:俊敏さで逃げられるやろ
:残りのカード何があるんや
:こいつ……動くぞ!
『遂に動き出したーー!! どうなる謙信! 負けるな謙信! 全てはカードの引きで決まるぞーー!!』
「(撤退すべきだ……だが少女を見捨てると言う選択肢はない。俺が俺であるために必要な事!)」
「グガアアアアアアアアア!!」
体が硬直してしまうかのような絶叫を上げて、謙信へと突撃を敢行するオーガキング。これは自分の体躯の使い方を知っている戦い方だ。
先程まで戦っていたオーガとは比較にならない程、俊敏な動きで持っていた大剣を振り下ろす。
それは最早、斬ると言うより叩き潰すと言った方が表現として正しいレベル。
「【轟火撃】!」
地面に大剣をめり込ませたオーガキングにカード魔法を叩き込む。
当然、大した効果はないはずなので大爆発を起こした瞬間に魔物の体をひたすら攻撃する謙信。
オーガキングが取った行動は回避ではなかった。
「ウルグァァァァァァ!!」
覇気を感じる程の絶叫が火炎を掻き消す。
そして大剣を引き抜くと重量を乗せた回転の一撃を謙信に見舞った。
慌てて回避しようとするが間に合わず、剣を割り込ませて何とか斬り刻まれるのだけは避けたものの、大きく吹き飛ばされてしまった。
『これ程かぁぁぁ!! 位階26にしてこの有様かぁぁぁ!! ちょっと強過ぎだろーが!! オイコラすぐに管理神呼んで来い!!』
途端、闇が生まれた。
漆黒なる闇が――暗黒よりなお深い漆黒なる闇が。
オークキングの体が闇のオーラに包まれていく。
「グラアアア! ニ、ニンゲン……コロコロ、コロス」
「!?」
『……!!』
:ェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!
:しゃべったあああああ!!
:しゃべったぁぁああぁあ!!
:魔物ってしゃべるの?
:しゃべらんよ
:これは異常ですね
:よくある特殊個体って奴か
:それ噂ですよ?そんな個体は少なくともコノート王国じゃ見つかってない
:ラノベあるあるきた?
:日本でも見つかってねーよ
:これ、やべーヤツや
:これは拡散するべき
闇のオーラに包まれて異形と化しつつあるオーガキングはゆっくりと謙信の方へ歩き始めた。
『……謙信様、撤退しましょう』
サフィの呟きが謙信の耳の中で反響する。
突然の出来事に謙信は固まって動けずにいた。
ありがとうございました。
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明日も12時の1回更新です。
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