空想が現実化した世界で
現在は週1、2くらいで更新中です。
いつもお読み頂きありがとうございます。
新連載です。よろしくお願い致します!
異世界&現代ファンタジーのダンジョン配信ものです。
異世界と地球(世界)の両世界でダンジョン攻略の様子を同時実況配信されてしまうお話。
そして色々な争いと陰謀に巻き込まれていきます。
6話目からですが、水晶球のサフィさんの実況解説動画を是非ご覧ください。
投稿開始は18時からで本日は3回更新予定です。
是非読んでみてもらえると嬉しいです。
何卒、何卒、よろしくお願い致します!!
ホントに読んでみて欲しいです!!
空想や願望が実際に現実のものとなることは多い。
それは大抵が人間の努力の積み重ねによって起こるもんだ。
現実ってのはそう言う風にできている。
だが何故だかは知らねーが例外もあるらしい。
事実は小説よりも奇なり。
俺――武田謙信もそんなことを思い知った人間の一人だ。
いい歳したおっさんだが漫画やラノベを読むのが大好きで結構購入してたりする。
それが結構ストレス発散になったりするんだ。
そんな事を言うと現実から逃げてるだの、いい大人が見っともないだの、読むのは陰キャだの言う人もいるんだけどな。
でもそれもいいんじゃないかと俺は思う訳よ。
要は節度を持って自分自身が楽しめりゃあ、それでいいんじゃないかな?
そんな訳で今、よく目にするジャンルと言えばコレ。
最近のトレンドは現代ファンタジーダンジョン配信系小説だ。
現実世界に突如として現れたダンジョン。
そしてレベルやステータス、スキルなんかの超常なる力を得たり、ダンジョンでファンタジーなモンスターを倒して魔核やらアイテムやら鉱物やらを得たりなんかする。つまり現代ダンジョンに潜った冒険者がモンスターを倒して地下階層を制覇していく風景を配信する系の小説なんかが流行っている。
いや、いた。
で冒頭に戻る訳だが――
まさに空想の世界が現実になっちゃったんだな。
これには俺も驚いた。
と言うか全世界が泣いた……もとい驚いたって事だ。
最初は世界に激震が走り、大混乱が起こったらしい。
突如として世界各地に地下洞窟が出現した上、その内部には見た事もないような未知の生物がウヨウヨいたからだ。
それだけじゃない。
内部には未知の素材が眠っており、そこはまさにフロンティアであった。
日本はそれを魔物がいる洞窟――魔物洞窟(魔窟)と名付けたが、今ではダンジョンと言う名称が一般的になっている。
世界が中々順応できない中、日本は何故かすんなり受け入れて、突如現れたダンジョンを探索する者が出てきた。
もちろん政府も動いたけどな。
流石はファンタジーが溢れ、空想、妄想が蔓延る国、日本だよ。
次々と各地でダンジョンが発見される中、発見当初、政府は命の危険を考慮してダンジョンを進入禁止にした。
だが政府は全てを把握する事はできなかったようで、情報が出てこない事に焦れた色んな人達が実際にダンジョンを探索して検証を始めてしまった。
それで想像通りと言うか何と言うか、現実に人間に位階や職業、技能などの超常的な力が備わり、更には能力がステータスとして数値化されてしまった事が判明。
お陰で人間の能力値が数字として分かるようになり、初めの内は分かり易くて良いと言う意見が出た程だった。しかし何にでも功罪があるように、そのせいで人間の中で明確な階級が出来あがり、時代錯誤なカースト制が顕在化した。
最早、人種差別や民族差別と言うレベルではなく、人間個人の差別となり人類皆平等などと言う考えは根底から覆されてしまった。
人々はそれを世界大変革と呼んだ。
動画配信サイト『うptube』にはダンジョン配信動画が溢れ返り、動画の収益化や新素材や未知のアイテムなどの売買で大金持ちになった者が爆増した。
最初はモンスターを殺すグロ動画として垢BANされていたが、いくら消しても登録者が減らなかったため、いつしかそれもなくなってしまった。
反社会勢力や不法滞在外国人による強盗殺人などの凶悪事件が増加し、無法がまかり通るようになった。
政府は早急な対応を迫られて魔窟省を作り、探索者を管理するために日本ダンジョン公社を設立。
更に良い職業や技能、高いステータスによって犯罪を起こす者に対しての組織――警視庁特殊能力者対策課が創設される。
対魔物には同様に警視庁魔窟対策課が創設された。
逆に大した力を授からなかった者達は、最下層と見なされて社会の底辺として生きる事になったのだ。
それでも工夫と努力によって動画配信を成功させた者も稀にだが存在したし、ダンジョン産の新素材の研究やそれに伴う開発で成功者になった者もいる。
え?
俺はどうだったかって?
それは愚問だ。
何たって何にも授からなかったんだからな。
位階はともかく、職業は無職、技能もなし、才能、特性なーんにもなし。
唯一持っているのは装備の武器【鉄の長剣Ⅰ】のみ。
それでも社会を回すためには様々な人達が必要なのは変わらない。
探索者の適性がない者は、ごく普通の会社に就職して普通に働いている。
先程の、新素材や新鉱物などの恩恵を受けた者も存在するし。
とは言え、普通に働くにもステータスが高い者の方が有利なのは当然の話であった。
俺のステータスもひどいものだったから、努力して普通に大学院を卒業して普通にSEとして就職したんだが、それも長くは続かなかった。
社内で権力闘争に巻き込まれた挙句、陰湿なイジメに遭っていた同僚を庇ったら、上司に目をつけられて激務の重労働環境に飛ばされて明るく眩しい蒼い空を眺める事すらできなくなるお仕事。
同僚のためにもしばらくは頑張ってみたのだが、もうストレスがマッハだった事もあって、こんな会社はさっさと辞めてやったよ。今時ブラック労働なんて流行らない事を続けるよりももっと有意義に過ごしたい。
そんな訳で無謀と知りつつもダンジョン配信者になったのだが――現実は甘くない。
無能者で戦う術が物理で殴るくらいしかできなかったのだから当たり前と言えば当たり前だった。
動画配信サイト『うptube』にアップした動画もほとんど視聴される事もなく、チャンネル登録者は10人。
ってかなんで登録したの?って聞きたいレベル。
励みにはなったけどね。
いつもコメントしてくれる人もいたから。
それにライブ配信にも同接5人とかあったし。
まぁ1回だけだけどな……。
やっぱり再就職しようかなと考えながらも懲りずにダンジョンで配信活動をしていたある日、それは起こった。
珍しく同接が3人もいて張り切ってしまった俺は、普通は行かない(行けない)地下第3階層まで降りてしまった。
そこでゴブリンの群れに遭遇した。
言わずと知れたゲームや小説界隈での最弱モンスターだ。
それは別に問題ではなくて、俺はいつも通り素手で殴り殺していたんだが、運の悪い事にオーガが現れちゃったんだな。コレが。
流石に剣よりも戦いやすいから素手で戦っていた訳だが、体長が3m以上は優に超える化物には敵わない。
ネットの情報だと地下第3階層にはオーガなんか出てこないって話だったから「あ、死んだ」と思ったね。
ネットの情報は迂闊に信じちゃいけないと言う教訓を得たけど、もう意味はなかったわ。喧嘩には自信があったから、しばらくは自慢の俊敏さを生かして大振りな攻撃を躱してたんだが、あの重量が迫って来たらもうどうしようもない。
殺られた!って思った瞬間、配信動画のコメントが見えた気がした。
『死なないで!』ってさ。
嬉しかったよ。死ぬ直前だってのにな。
恐らく動画配信ドローンが生きていただろうから、殺されるところを見せてしまう事になってしまったのは申し訳なかったと思う。
それで何故かは知らないが、目を覚ましたんだけど、これがよく分からない場所だったんだよ。
それこそ、小説に出てくる白い空間としか言いようがなかった。
そしたら居たよ。
所謂、女神様ってヤツがな。
◆ ◆ ◆
『ちょっと貴方!! 不甲斐ないんじゃないの!! もっとしっかりプレイしなさいよね!!』
出会い頭の一発は意味の分からない言葉だった。
何言ってんだコイツ。
それが謙信が抱いた最初の感想。
「えっと……どちら様?」
『あたしは女神様よ!! 女神様!! どう? 凄いでしょう!』
女性の中には一人称が自分の名前の人がいる事がある。
それもどうかと思うが、自分に様を付けるのも如何なものかと思ってしまう。
謙信が二の句を継げずにいると、焦れた女神が畳み掛けてくる。
『ホンット役に立たないわね。貴方のせいであたしは大損よ! お・お・ぞ・ん!!』
「意味が分からないんですが、それは」
せっかくの美人顔なのに眉間に皺がよっており、まさに怒髪天を衝いていると言った感じだ。
だが流石に二言だけではまだまだ意味が分からない。
その呆気に取られた謙信の表情を見て、呆れた様子で女神がこぼす。
『鈍いわねぇ……あたし達、至高なる神々の間で今プレイしてるゲームの話よ』
「神様もゲームやるんですね。知りませんでした。しかも金賭けてるとか……」
謙信はドン引きしながらも何となく察するものがあった。
もしかすると、もしかするかも知れない。
『せっかく地球を使った壮大なゲームにしたのに……あんなにお膳立てまでしてさぁ。システム創った担当神も疲れたって言ってたわよ?』
それを聞いて直感が正しかった事を確信する。
あんな世界に誰がした?
お・ま・え・ら・か!
決して正義感が強い訳でもないが、謙信の闘志に火が付いた。
「なるほどな……地球をあんな世界に変えたのはアンタらって訳か。神様が創造した世界だって言うんなら干渉するのはまぁ仕方がない。でもお遊びするのは頂けねーな」
『当然じゃない。それよりも貴方よ貴方! ちょっと弱過ぎなのよ! 今日もまさかあんなところで死にかけるとは思わなかったわ』
全く悪びれる様子もなく平然と言ってのけるが、そこに痺れないし憧れもしない。
だが、彼女の言葉から謙信は自分はまだ死んでいない事に気が付いた。
どうやら目の前の女神様とやらに助けられたと言う訳だ。
「プレイしていたと言ったな。って事は俺をプレイヤーとして使ってたのがアンタって事なのか?」
『そうよ。人間にしてはよく気が付いたようね。あれは自分のプレイヤーをカードを使って強化しながらモンスターを倒し多くのポイントを得た神が勝利すると言う育成カードゲームなのよ! ついでにお金賭けてたのに貴方が弱いもんだから……』
「あーそう……俺が何も授からなかった訳が分かったわ……要はアンタのカードの引きが良くなかっただけじゃねーか!!」
つまりそう言う事なのだ。
初期のステータスはともかく、職業も個技も戦法も技能も才能も特性もなかったのは彼女のせい。
彼女の運が悪かっただけの簡単なお話。
『違うもん!!』
「違わんわ!!」
『嘘だッ!!』
「嘘じゃねーよ!!」
いい性格をしている女神だが、他の神々もこんな感じなのだろうか?
もしかして小説に出てくる神様みたいなのがわんさかいると言うのか……?
そう考えるだけで頭がくらくらする。
『ふーんだ。いいわよいいわよ! あんた、ダンジョン探索者の中で最弱だったのよ? 貧弱ぅ貧弱ぅ! もっと努力してればステータスもちょびっとは上がったのに。ぷぷぷのぷー!!』
「(なんか急に砕けた話し方になっとるがな……こっちが地か?)」
ステータスに関しては謙信もそんな気がしていた。
体力作りに励んだらステータスが微増してた事があったし、ネットの情報では低位階では倒せないとされているモンスターを倒した経験もあったのだ。
「(それにしても煽りがウゼーな)まぁそれはもういいよ……何はともあれ俺を死の淵から救ってくれたんだろ?」
『まぁそう言う事になるわねッ!! 少しは感謝しなさい?』
この状況で大威張りして踏ん反り返り、その豊満な胸が強調されるが、ちっともそそられない。
こいつは駄目だ。駄女神だけに駄肉なんだろう。
「はいはい。ありがとさん。それで俺はこれからどうなるんだ? 異世界転生とか? 小説でよくあるチートな力ってのが貰えるのかい?」
『んなわきゃないっしょ!! どうしてあたしがそんな事しなきゃいけないワケ? それにどうしてくれるワケ? お陰でこちとら大損こいてるのよ!!』
結局は金か。神様も俗っぽくなったもんだよ。
それを知ったら世界中の敬虔な信者の方々も嘆くってもんだよ。
それとも元からと言う線も捨てきれないか?などと考える謙信。
「そりゃ自業自得やろがい!ってかもっと良い力を授けてくれれば良かっただけだろ!」
『だーかーらー! 良いカードを引かなきゃ勝てないのよ!』
「だーかーらー! アンタの運が悪いだけじゃねーか! 引きが悪いから負けてんだろ!!」
今まで地団太を踏みながら子供のように体をバタバタさせていた女神だったが、核心を何度も突かれて少し神妙になる。
しかしそれも一瞬の事。
あくどい笑みを浮かべながら上から目線で、無慈悲にも謙信に通告する。
『それはまぁ置いといて……よくもあたしに恥をかかせてくれたわね! 罰として異世界転移強制修行の刑よ!! しかも監視付きでねッ!!』
「修行……? 監視……? 完全な逆恨みじゃねーか! アンタみたいなのを持ってないって言うんだよ! ハハッ笑えるわ」
『言ったわねぇぇぇ!! じゃあ、あんたもカードを使って生き延びてみなさいよ!! 喰らいなさい!!』
逆上した女神が意味有りげな事を叫ぶと両手を天に掲げた。
そこに魔法のような渦を巻いた煌めく真球が出現する。
「ええ……ホントに異世界転移させられるのかよ……」
『飛んでけーーー!! 逝って来い! 異世界! バ○ルーラ!!』
「理不尽だーーー!」
『強くなるまで帰ってくんなぁぁぁ!!』
そして武田謙信27歳は強制的に異世界へと転移させられた。
唯一、技能、【カード】の力だけを付与されて。
ありがとうございました。
また読みにいらしてください。
明日は6時、12時、18時の3回更新です。
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