果たし状
グリクスとの戦闘から一夜明けた朝。
メグル、エデュー、ドーキンスの三人は卓を囲み、そこに置かれた一通の手紙をじっと見つめていた。
今朝、協会に届けられたものだ。
差出人や住所などは一切記載されていない。
唯一書かれていたのは、受取人が「暁メグル」であるということだけだった。
「なんか……嫌な予感がする……」
メグルがぽつりと呟く。
「だが、無視すればもっと面倒なことになるかもしれん」
エデューが腕を組みながら言った。
意を決し、メグルが封を開ける。
中に入っていたのは、二つ折りの一枚の紙だけ。
表面はすべて白紙だった。
メグルが紙を開くと、中には何も書かれていなかった。
唯一あったのは、うっすらと浮かぶ朱色の透かし模様――ナイフと、それから滴る液体。
……血を思わせる意匠だった。
「……血を鍵にした、密書だな」
エデューが低く言う。
「つまり……これ、血を垂らせってこと?」
「その通りだ」
「指紋認証感覚で血液求めてくるのやめてくんないかな……。
グリクスも血液からゴーレム起動してたし……」
ぶつぶつ言いながらも、メグルはナイフを取り出し、指先に軽く刃を滑らせた。
ぽたり、と一滴の血が紙面に落ちる。すると――
血が静かに発火し、焦げた跡で文字を描き始めた。
――――――――――――
決着をつけよう。二人きりで。
日付は夏季六の月の九日、十五時。
場所は白楼砦。
――複数で来てもいいが、その時は我が主、ヨグルフ・エルドリッチが応対する。
――――――――――――
「……果たし状、だな」
メグルが低く言った。
「夏季六の月の九日ってことは――」
「七日後だな」
ドーキンスが引き継ぐ。
「白楼砦は首都から二日ほどの場所にある。
昔の戦争で使われていたが、今は完全に廃墟になってるはずだ」
「……戦っても、勝ち目はないです。
たぶん、正面から行けばこっちが負けます」
「なら、どうするんだ?」
「――だから、勝たない。でも、負けない。
プランがあります。聞いてください」




