必要最低限の死者数
メグルが目を覚ますと、そこはベッドの上だった。
「おはよう。お寝坊さん」
聞き覚えのある声が、メグルに呼びかける。
声の方を向くと、ドーキンスとエデューが腰掛けていた。
「ドーキンスさん……。俺、なんで寝てるんでしたっけ……?
確か、グリクスと戦って……なんとか撃退して。
そのあと、ワタリが来て。戦ったところまでは覚えてるけど……」
「――お前さんはワタリと戦って、彼の攻撃を食らい、気を失った」
エデューが説明する。
「そのあとは――」
「――僕が協会の仲間を連れて現場に向かった」
ドーキンスが続ける。
「あの青年は君を連れ去ろうとしていたが、君を抱えたままでは僕らを退けることができないと判断し、逃走に切り替えた。
もちろん捕えようとしたが、彼の反撃にあい失敗した。
彼の苛烈……というよりも、ゴリ押しによる攻撃は厄介だった。
逃走が目的だったため、被害者は出なかったが――
倒す目的で仕掛けてきたら、死者が出てもおかしくなかっただろう」
「死者……」
メグルがつぶやく。
「死者? あ、そうだ!
なんでドーキンスさん、生きてるんですか。
あいつ――グリクスに……」
「そうだな。それについて話そう――」
***
メグルたちと分かれていたとき、ドーキンスは見張りをしていた。
その際に、グリクスから奇襲を受け、路地裏に引きずり込まれた。
目的は、メグルを拉致する際に障害となるドーキンスを排除すること。
そして、彼の容姿を奪い取るためだった。
グリクスがドーキンスの顔を鷲掴みにし、呪文を唱える。
「《ダツ―・サーバウ》」
グリクスの顔が徐々に変形し、やがてドーキンスと同じ顔になる。
「このような呪文が存在していること自体は、一部の人間は知っているようだが……
実際にお目にかかるのは初めてだろう」
と、グリクスが語る。
「姿はそっくりだが、声は似てないな」
ドーキンスが答える。
「そんなはずはない。
口調はともかく、声質から変身がバレたことはない。
……そんなことはどうでもいい。
お前にはここで死んでもらう。
ドーキンスが二人いては困るからな」
「俺が始末しておきますよ」
グリクスの後ろから、ワタリが現れた。
「早く行った方がいい。逃げられますよ」
グリクスが去っていった。
「なぁ」
ドーキンスがワタリに問いかける。
「本当に僕を始末するつもりなのか」
「すぐにわかるさ」
「最後に一つ聞きたい。
僕はあんな声しているのか?」
「そうだよ。おっさん」
その言葉を最後に、ドーキンスの記憶は途切れている。
意識を取り戻したときには、ロープでぐるぐる巻きにされ、その場に倒れていた。
大声を上げ、周囲の人に助けを借り、ロープを解いてもらった。
その後は、協会の人間に声を掛けながら、メグルたちを探して回った。
***
「――で、騒ぎを聞きつけて行ってみると、エデューは倒れているし、
メグルはワタリに連行されそうになっているし……。
まぁ、相手が撤退を選んだから、割と穏便に済んだわけだが」
「よっと」
メグルが立ち上がる。
「寝すぎて体がだるいので、ちょっと歩いてきます」




