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風景から魔力を  作者: hato-ryuji
首都編
47/52

世界の広さを知れ

「何をしてるんだよ」

 メグルがワタリに問いかける。


「こっちにはこっちの事情があるんだよ。

 それともなにか、先を越されて悔しかったのか?」


「そんなわけないだろ。ワタリ」


「あれ? お前には名乗った覚えはないんだが……ああ、協会の名簿からか。

 ストーカーみたいだな」


「お前たちには言われたくない」


 メグルが火炎魔法の《印》を構える。


「どうした?」

 ワタリが手招きする。

「構えてるだけじゃ何も起きないぜ。来いよ、腰抜け」


「《トーモス・ミタマ》!」


 メグルが火球を放つ。

 ワタリは左手を脱力し、軽く拳を握った。


「《テラス・ジューン》」


 小さな光の盾が左手に出現し、火球を裏拳で弾き返す。

 火球は放物線を描き、後方の石畳に落下した。


 メグルは次の一手をためらう。――この防御は初見だ。

 下手に撃ち込めば周囲に被害が出る。


「ちゃんと考えてから行動しろよ。連戦してる分だけ、お前の方が不利なんだぜ」


 そう言いながら、ワタリは右手を肩に掲げる。


「《アモル・ライコウ》」


 手に握られた雷が、メグルへと飛ぶ。

 メグルも呪文で応戦する。


「まあ、万全の状態でも負ける気はしないけどな」


 二人の攻防が続く。

 やがて、メグルの風景ストックが尽き始める。

 日本全国を旅して得た記憶、そのうち残りはわずか二県分。


「なんで……なんで量で渡り合えるんだ。おれにはこれしかないのに……!」


 思わず、口から弱音が漏れる。


「今、日本全国って言ったか?」

 ワタリが鼻で笑う。

「そんなちんけなスケールで俺に勝てると思ったのか?」


「まさか……」


「お前が日本の風景だけに頼ってる間に、俺が使える風景は――世界だよ」

 ワタリの口元が吊り上がる。

「バックパッカーと旅してりゃ、そりゃもう色々――」


 その言葉を遮るように、メグルが突っ込んだ。


 二人の距離が一気に縮まる。手を伸ばせば触れるほど。


「《カイナ――」

 メグルが呪文を唱え始めた瞬間、ワタリがさらに踏み込み、左手でメグルの手を内側から弾く。

 魔法の射線が逸れた。


 即座に、ワタリが右手で空間を鷲掴みするような《印》を作り、メグルの首元に軽く触れる。


「《アモル・アクシー》」


 閃光。電撃。メグルの身体がぐらりと傾き、前方に崩れた。

 ワタリがその身体を支える。


「――で、これからどうすれば?」


 脳内に《声》が響く。


 ――アジトに戻れ。


「了解」


「させるか……!」


 声とともに、エデューが立ち上がる。


 ワタリがエデューに呪文を構える。


「う……ぐ……」


 エデューは呻き、再び崩れ落ちた。


 ワタリは周囲に耳を澄ませる。


「こっちだ! 戦闘があったのは!」


 複数の足音が近づいてくる。魔法使いたちの一団。

 その先頭には、ドーキンスの姿があった。


「早いんだよ……目を覚ますのが」

 ワタリが忌々しげに吐き捨てる。


 彼はメグルの身体を手放し、脇道へと飛び込んだ。

 ドーキンスたちは追いすがるが、ワタリは周囲の建物に雷を放ち、通路を塞ぐ。


 逃走中、再び《声》が脳に響いた。


 ――なんですか。荷物を背負ったままじゃ、あの人数からは逃げられない。

 ――だから撤退しました。問題でも?


 ――いや。それが正しい判断だ。これ以上、貴重な駒を失いたくない。


(自分で切り捨てといてよく言うよ)


 ワタリは心の中で毒づいた。

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