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風景から魔力を  作者: hato-ryuji
首都編
44/52

プランA

 エデューとグリクスが対峙していた。

 呪文と呪文がぶつかり合う。応酬は刹那の読み合い。火花が飛ぶたび、周囲の空気が焦げついた。


 だが、エデューの防御に異変が起きた。


 ……風景から、魔力が引き出せない?


 連想したのは、故郷の草原だった。しかし、何も感じない。魔力の脈動が、そこにない。


 グリクスが歩み寄る。


「分かるか? 君は今、“無力”だ。偶然じゃない。これは必然だ」


「――知っているさ。お前の能力は、相手が使う風景を先に使って潰すこと」


 “魔術師殺し”の異名は、まさにそこから来ている。


「さすがに察していたか。つまらんな」


 エデューは唇を噛む。


(このままじゃ押し切られる。――なら、最高の一手をぶつけるだけだ)


 彼は大きく息を吐き出し、そして吸い込んだ。


 思い浮かべるのは――大陸最古の巨樹。

 人知れず生き、千年を超えて大地に根を張る、高さ百メートルを超える聖なる樹。


「《ハーモ・クグノチ》!」


 大地を突き破り、巨大な蔓が天へと伸びる。


***


 一方――

 瓦礫でエデューと分断されたメグルは、街の通りを全力で走っていた。


「早く合流しないと……!」


 人混みをかき分け、音のする方角へと進む。


 その時――


 地響き。

 街路を突き破って、巨大な蔓が空へと伸びる。


「巨大な蔓……か? きっと、あの下にエデューさんが!」


 続けざまに、もう一本の蔓が地面を貫いた。


 メグルは迷わず、蔓を追って駆け出した。


***


「どうして、この風景を知っていた」


 エデューが問う。


 グリクスが笑い、顔を変化させる。

 ――少年の顔に。


「こいつが教えてくれたのさ。お前の可愛い弟子、アプレンがな」


「……!」


「最後の最後までお前を庇おうとしていた。だが、残念だったな。俺が殺したよ」


 二本の巨大な蔓が、ゆっくりと絡まり合い、そして朽ちていく。


 もう、切り札は使ってしまった。なら――削るだけだ。


 エデューは奥歯を噛みしめ、魔力を両手に込めた。


「《ホフル・ギロン》!」


 グリクスの左手に、黒い刃が形成される。


「《カイナ・ハフム》!」


 空間がねじれ、見えない力が左手を挟み込む。


 メキッ。

 骨が砕け、黒い刃が砕け散った。


「ちっ……《トーモス・ミタマ》!」


 怒りにまかせた火球が炸裂し、エデューは壁に叩きつけられた。


「もう魔力も体力も限界だろう? 詰みだよ、エデュー」


***


 その時――


 火球が横合いから飛んだ!


「《トーモス・ミタマ》!」


 物陰から飛び出したのは――メグルだった!


 火球をいなしながら、グリクスが目を見開く。


「貴様……!」


「エデューさん、プランAです」


 メグルの声が、エデューの意識の端に届いた。


 ――プランA……。


 それは、“共闘による反撃”を意味する、合言葉だった。


 そして、エデューの視界は、静かに暗転していった。

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