答えられますよね
メグル、エデュー、ドーキンスの三人は、協会内の部屋に集まっていた。
「――お前さんの“血”に、興味を持ってたってわけか。あの男は」
エデューの言葉に、メグルが頷く。
「この首都、どうやら安全とは言えないようだな」
ドーキンスが呟いた。
「すぐにここを発とう。……いや、闇に紛れるのは逆に危ない。明日、朝一で出るぞ」
エデューが判断を下す。
「ヤツ……姿を自由に変えられるようです。この作戦は、三人だけの秘密にしておきましょう」
「賛成だ」
三人は、それぞれに準備を済ませ、翌日に備えて床についた。
***
翌朝7時。
街の城門が開く時刻、旅人と商人たちで溢れかえる市街地の通りを、三人は歩いていた。
エデューが先頭、すぐ後ろにメグル、そして少し距離を取ってドーキンスが後方を歩く。
「君たちの様子を少し後ろから見張っている。何かあればすぐに対処する」
ドーキンスがそう言って、さらに数歩離れた。
雑踏の中を、警戒しながらも自然に歩く。門が見えてきた、その時――
「メグル、こっちだ」
背後から突然、肩を叩かれた。
振り返ると、そこにはドーキンスの姿があった。
「裏門に案内する。混雑を避けるための抜け道だ。エデューにはすでに伝えてある。すぐに合流できる」
そう言って、脇道へと手招きする。
メグルは一瞬立ち止まり、その目でドーキンスの瞳をじっと見つめた。
「……名前。おれ、自分の名前がちょっと苦手なんです。……理由、覚えてますか?」
「……今聞くことか? 急がないと――」
「いいえ。今だからこそ聞いてるんです。答えられますよね、ドーキンスさん」
男の目線が逸れる。
――“響きが女の子みたいで、もっと男っぽい名前が良かったんですけどね”
「古風で年寄りくさいのが嫌だった、だっけ?」
「……違うよ。“女々しい”だよ、偽物!」
メグルが印を組む。
その瞬間、ドーキンスの顔がぐにゃりと崩れた。代わりに現れたのは――
フィンを殺したあの男、グリクス・イシュメールだった。
「さすがに……二度目は騙されなかったか」
グリクスも呪文の構えを取る。
そして、魔法が激突した。
***
メグルの魔法が放たれる。しかし、グリクスが即座に打ち消す。
そこに――
「グリクス・イシュメール……!」
エデューが戻ってきた。
「誰ですか、そいつ」
メグルが問う。
「ティア1の魔法使いだ。……さて、何の目的でメグルを狙う」
エデューがグリクスを睨みつける。
「知りたいなら、力づくで聞くことだな」
グリクスが呪文を叫ぶ。
「《トーモス・カルラ》!」
螺旋の炎がエデューを襲う。
「《テラス・カーキネン》!」
光の壁が、激突する炎を防ぐ。
「十字に挟みこむぞ」
エデューが小声でメグルに囁く。
メグルは即座に移動。斜めから射線を作る。
三人の攻防が始まった。
攻撃、打消し、防御、再配置――。
だが、いずれも決定打には至らなかった。
やがて、グリクスがじわじわと後退を始める。
火炎魔法を連射しながら、戦線を後方へずらしていく。
その動きに応じて、メグルとエデューも追撃する。
「落ち着いて。退かせてどうする気だ……?」
エデューが呟いた、直後――
頭上から爆音が響いた。
グリクスが狙ったのは、上にあった見張り台。
打ち込まれた魔法により、瓦礫が崩れ落ちてくる。
「危ない!」
エデューがメグルを突き飛ばす。
次の瞬間――
大量の瓦礫が降り注ぎ、二人の間を隔てた。
視界が、音が、すべてが一瞬にして断ち切られた。




