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風景から魔力を  作者: hato-ryuji
首都編
42/52

プランB

 建物全体が揺れるような爆音が――二階から轟いた。


「フィンさん――!」


 メグルが階段を駆け上がった。二階からは、断続的な戦闘音が響いてくる。


 到着した部屋の入り口。そこではフィンが、一人の男と対峙していた。


「口封じが必要だな」


 男が冷たく呟く。


「やれるもんなら、やってみろよ」


 フィンが応じる。男が放った雷撃が走り、フィンがそれを打ち消す。


「助太刀します!」


 メグルは咄嗟に飛び出そうとした――が。


「ダメだ、メグル! プランBだ、走れ!」


 フィンの声が鋭く空気を裂いた。


 プランB――

 危険が発生したとき、片方が囮になり、もう片方が本隊に伝令へ走る作戦。


「っ……わかりました!」


 メグルは振り返り、階段を駆け下りた。


***


 フィンは目の前の男――正体不明の魔術師を睨みつけた。


(誰なのかは知らない。でも……僕のやるべきことは一つ)


 時間を稼ぐ。

 それだけが、今できる最大の仕事だった。


「《テラス・マートー》!」


 防御魔法。光の膜がフィンの全身を包み込む。


***


 その頃――。


 メグルは、肩で息をしながら魔術師協会の門をくぐった。


 壁に手をつきながら歩くメグルを、エデューが見つける。


「どうした!? その様子……まさか任務中か!?」


 エデューが駆け寄ると、メグルは途切れ途切れに報告する。


「謎の男……フィンが危ない……依頼主が……老婆が化けてて……とにかく、早く助けに――」


「分かった! すぐ行くぞ!」


 エデューがメグルを肩で支え、そのまま協会の魔術師たちとともに現場へ向かった。


***


 一方のフィンは、依然として戦場にいた。


 男――グリクス・イシュメールは焦っていた。


 まずい……メグルが仲間を連れて戻ってくる。


 時間がない。グリクスは攻撃を加速させる。


 雷撃、火球、鋭い呪文が飛ぶ。


 一発、二発、三発――


 だが、フィンは全てを受け止める。


 一部は打ち消しで、残りは光の膜が弾いた。


「《テラス・マートー》!」


 攻撃の合間すら、フィンは防御の再展開に使っていた。


 反撃の隙など一切見せない。

 それは、まるで“戦うことを放棄した戦術”――時間稼ぎのためだけの防戦だった。


 グリクスが焦れる。


「かくなる上は……《ホフル――》」


***


 そして――メグルたちが現場に戻ってきた時。


 戦いはすでに、終わっていた。


 部屋の中央には、フィンが着ていた衣服が残されていた。

 その周囲には、大量の砂が散らばっている。


 魔術師たちが周囲を取り囲み、静かに見守っていた。


「フィンは……どこに?」


 メグルが小さく尋ねる。


「……身体だったものは、そこにある」


 エデューが砂を見つめ、空を見上げた。


「魂は、きっとあっちだろう」


「一緒に戦っていれば……」


 悔しげに拳を握るメグルに、エデューが静かに告げた。


「たぶん、それでもダメだった。

 フィンは守りに特化していた。時間稼ぎには、あいつが最適だった」


 協会の魔術師たちが、現場の調査を開始する。


 遺品、魔具、呪痕の痕跡――全ての記録を取り、回収していく。


「ここから先は、彼らの仕事だ。……協会に戻ろう」


 エデューがメグルに声をかける。


「……はい」


 メグルは部屋の中を、もう一度だけ見渡した。


「ありがとう、フィンさん。……忘れません」

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