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風景から魔力を  作者: hato-ryuji
首都編
41/52

インターン

 認定試験から三日後――。


 メグルは、魔術師協会の研究室に呼び出されていた。


「インターン……ですか?」


 ドーキンスの言葉を聞き返す。


「ああ。簡単に言えば実地研修みたいなものだ。さっそくだが、紹介しよう。出てきてくれ」


 部屋の奥から一人の青年が姿を現す。


「あ、どうも。僕はフィン。よろしく」


 メグルも軽く会釈を返した。


「君たちには一件、軽い任務をお願いする」


 ドーキンスはそう言って、内容を簡潔に説明した。


 ――協会宛てに届けられた小包の中に、“呪具”と思われる物品があった。

 送付元の所在確認と、危険性の有無を調査。

 もし本当に危険がある場合は、速やかに回収・封印を行うこと。


***


 任務地への移動中、フィンが口を開いた。


「協会ではね、基本的に任務は“二人以上”で行動することが推奨されてる。理由、わかるか?」


「有事の際に、二人で対処できるように……とか?」


「まあ、それがプランAだな。挟み撃ち、相互支援、死角のカバー。戦術的にも合理的だ」


「ってことは、Bもあるんですか?」


「あるとも。プランB――危険が発生したとき、片方が“囮”になって、もう片方が報告に戻る」


 メグルの顔がひきつった。


「……それ、聞かなきゃよかったかも」


「大丈夫さ。今回の任務は、そこまで危険なもんじゃない」


***


 目的地に到着すると、そこは木造二階建ての古びた民家だった。


 チャイムを押すと、扉を開けたのは白髪の老婆だった。


「あらあら、お疲れでしょう。どうぞお上がりなさいな」


 二人は居間に通され、お茶が振る舞われた。


「このたびは、お手数をおかけしてしまって……。不審な荷物が届いたもので、どうにも不安で……」


 老婆がそう言いながらティーカップを差し出す。


 メグルが口をつけようとした、その瞬間――


「痛っ――!」


 カップが突然砕け、メグルの手のひらに裂傷が走った。


「これは……いけませんね」


 老婆はすぐにハンカチを取り出し、傷口を押さえた。


「手際がいいですね」


 フィンがぽつりと呟く。


「ええ、一人暮らしなものでね。何事もシャンとしてないと」


 老婆はメグルの手当てをしながら言い、やがて立ち上がった。


「包帯を取ってきますね」


 そう言って、階段を上がっていった。


 彼女がいなくなるのを見計らって、フィンが小声でつぶやいた。


「まるで、最初からメグルが怪我することを知ってたみたいだな」


「まさか……そんな」


「ちょっと様子を見てくる。戻ってきたら、適当にごまかしてくれ」


 フィンは立ち上がり、静かに階段を昇っていった。


***


 二階の廊下を抜け、一つだけ開いた部屋の前に立つ。


 扉の奥からは、わずかに光が漏れていた。


 フィンはノックもせずに扉を開け、中に踏み込む。


 部屋の中央には卓。そして、その向こうに背を向けた“老婆”の姿。


 だが、フィンはすぐに違和感に気づいた。


 ――部屋の隅に、服が脱ぎ捨てられている。


 いや、服じゃない……そこには、老婆の“本物の身体”が横たわっていた。


「お前……誰だ?」


 フィンが静かに問う。


 卓の前にいた“老婆”が、ゆっくりと振り返る。


 その顔が、みるみるうちに変貌していく。

 皺だらけの皮膚が引き締まり、骨格が再構成される。


 次の瞬間、そこに現れたのは――


 グリクス・イシュメール


「久しぶりに……獲物が来た」


 男が、フィンに向かって手を伸ばす。

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