結果発表
試験の翌日。
メグルとエデューは『魔術師管轄室』の掲示板の前にいた。
そこには、昨日行われた試験の結果が貼り出されている。
「……下から二番目か」
メグルがつぶやいた。
――ティア4、暁メグル。
その評価を見て、メグルはわずかに肩を落とす。
だが、事務員の女性がすかさず声をかけてきた。
「そんな顔しないでください。ティア4は、初登録としてはかなり上位なんですよ。
特にストック量は群を抜いています。ティア2の上位相当です」
(……加減はしたんだよな)
そう言いたげな視線をエデューがメグルに送る。
メグルは小さく、二度うなずいた。
「エデューさんのティアは、いくつなんですか?」
メグルの問いに、エデューがニヤニヤしながら返す。
「聞きたいか?」
「別に……」
「私のティアはな――」
「ティア1、ですね。下位ですけど」
事務員が淡々と補足し、冊子を手渡してきた。
「よければ、名簿もどうぞ」
メグルは冊子を受け取り、ページをめくっていく。
――そして、ある肩書きが目に留まった。
「ティア1、《魔術師殺し》……グリクス・イシュメール。すごい二つ名ですね」
その名を口にした瞬間、エデューの顔が陰る。
「知り合いですか?」
「有名人さ。特に、“対魔術師戦”においては最強と呼ばれている」
さらに下の欄に、もう一つの名があった。
「生死不明、ティア1……ヨグルフ・エルドリッチ。……どこかで聞いたことが」
「まだ“生死不明”扱いなのか?」
エデューが事務員に尋ねる。
「はい。先の戦いの後、消息が分かっていませんので」
「そもそも、奴が“人前”に姿を現したことがあったか?」
「ありません。記録に残っている全ての発言は、傀儡を通してのものでした」
メグルの脳裏に、ふと面接時の一言がよみがえる。
――最近、色んな国から来る人が増えてるよね。
「……最近登録された魔術師の中で、“初めて聞く国”の出身者って、どの方ですか?」
メグルは冊子を事務員に差し出す。
事務員がぱらぱらとページをめくり、該当箇所を開いた。
そこに書かれていた名前は――
ティア4 ニシノソノ・ワタリ
出身地:ジパング
「やっぱり……同じです」
「でも、メグルは“ニッポン”って……」
「“ジパング”は、日本の古い呼び方です。あくまで一説ですけどね」
***
一方――。
真っ暗な部屋にて、一人の男が“声”に耳を傾けていた。
それは、脳内に直接響く声だった。
依頼主の姿を見たことはない。おそらく、今後も会うことはないだろう。
だが、仕事が完遂される限り、それで十分だった。
「……標的の情報は?」
――男。年齢は十代後半から二十代前半。そちらにいる彼と同じくらいだ。
部屋のランプが灯る。
部屋の隅に、青年が立っていた。
「ずっと……いたのか」
「ええ。ずっと」
青年は淡々と答える。
「どうやって特定すればいい?」
男が再び声に問う。
――今から、標的を特定するための魔具を送る。
テーブルの上が歪んだかと思うと、蜃気楼のように一つの物体が現れた。
それは、黄緑色の液体が入った試験管だった。
――薬液に“標的の血”が触れれば、金色に輝く。
「……承知した」
――カンナラビでの“起動”から察するに、そろそろ首都にたどり着いているころだろう。
――頼んだぞ、《魔術師殺し》、グリクス・イシュメール




