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風景から魔力を  作者: hato-ryuji
首都編
39/52

魔術師試験

 メグル、エデュー、ドーキンスの三人は、テストルームから出て廊下を歩いていた。


「さて……戻る方法は、惜しいところまではいったがな。現状の条件じゃ、人が通れるサイズの《門》は開けられそうにない」


 エデューが渋い顔をする。


「とりあえず、魔術師協会に登録してみたらどうだ? 仕事を探すときにも何かと便利だからな」


 ドーキンスが提案する。


「そうだな……確かに悪くない」


「なら早速、申請しに行こうか」


 三人はその足で『魔術師管轄室』へ向かった。

 ここでは、魔術師の登録と管理、試験の受付が一括して行われている。


 窓口で職員から登録用紙を渡され、必要事項を記入する。


 ドーキンスはその間に職員と会話し、振り返って言った。


「能力測定、明日に入れておいたぞ。僕も試験官のひとりだからよろしく」


「ずいぶんと急ですね……」


 メグルが驚き混じりにつぶやいた。


***


 翌日――魔術師試験当日。


 メグルとエデューは、協会の廊下を並んで歩いていた。


「魔力の総量……つまり風景のストック数を測るテストは、手を抜け」


 エデューが小声で助言する。


「えっ、なんでですか?」


「それが、お前さんの切り札だからだ。得意分野に引きずり込めれば、格上の相手でも倒せる。でも、その武器を最初から晒してしまったら――誰もその土俵に乗ってこなくなるだろ?」


「ああ……つまり、手の内を見せるなってことか」


「そういうことだ」


「他の項目も、手を抜いたほうがいいですか?」


「抜くのは“風景量”だけでいい。他まで手を抜くと……仕事が来なくなるぞ」


 エデューは笑いながら、メグルの背中を軽く叩いた。


「頑張ってこい」


***


 試験が終わった夜、宿の食堂で夕食を食べながら、メグルは試験の感想をエデューに語った。


「まず最初に面接があって――面接官は三人でした。その中に、ドーキンスさんも混じってて」


 ドーキンスはほとんど相槌専門だったが、途中で他の面接官に促されて、ようやく質問を口にした。


「そういえば、変わった名前だけど、どんな意味なんだい?」


 自己紹介からだいぶ時間が経った後の、唐突な問いだった。


「『暁』は夜明け、『巡る』は旅をしてまた戻ってくるって意味です。……響きが女の子みたいで、もっと男らしい名前がよかったんですけどね」


 メグルの返答に、面接官のひとり――女性が反応する。


「ニホン……か。初めて聞く国名ね」


「……そうですよね」


(そりゃ、世界が違うんだから)


 メグルは内心で苦笑した。


「最近、いろんな国から来るわよね。この前も、聞いたことのない国の子が受けに来てたわ」


***


 面接のあとは、使用可能な魔法の棚卸しが行われた。


 一つずつ、実際に魔法を唱えていく。


「《カイナ・オウ》、衝撃波。

 《スミル・シャガン》、水流。

 《ナギ・ゼクー》、打ち消し。

 《トーモス・イフキ》、火炎放射。

 《トーモス・ミタマ》、火球爆発」


「以上、五つだね」


 ドーキンスが確認する。


「はい」


 メグルは、ひとつだけ“意図的に”漏らしていた。

 ――《トーモス・シン・アニマ》


 固有風景から召喚される、秘密の炎魔法。

 それを知っているのは、今のところコッチネラと自分だけ。


***


 次に行われたのは、魔力総量の測定だった。

 いわば、「風景ストックがどれほどあるか」の確認だ。


 メグルは、事前の打ち合わせ通り途中で嘘をついた。


「これで限界です」


 実際には、まだ半分以上残っていた。


「――ここまでとは。正直、もっと少ないと思ってたよ」


 ドーキンスが目を細める。


「魔力量だけで言えば……ティア2。いや、ティア1の下位にも届いてるかもしれない」


「ティア?」


「1から5までの等級があってね。数字が小さいほど優秀な魔法使いってことさ」


「つまり、格付けですね」


「そんなところ。結果は明日出る。楽しみにしていてくれ」

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