テストルーム
メグルたちは、魔術師協会の本部へと向かった。
魔術師協会――それはこの国における魔法使いたちを管轄する組織であり、魔法の研究や教育、そして計測のための専用機器も取りそろえた専門機関である。
エデューは協会の窓口に向かい、テストルームの空き状況を確認した。
本日はすでに予約で埋まっていたが、明日なら使用可能とのことだった。
ひとまず、その日は協会を後にすることにした。
***
その晩、宿屋の一室にて。
メグルは、図書館で出会った青年のことをエデューに話した。
「言い忘れてましたけど……図書館で、同じ境遇の人に会いました」
「別の世界に戻りたがっているやつか?」
「それは定かじゃないです。……たぶん、戻りたくないんだと思います」
窓から差し込む街灯の光の中、メグルはつぶやく。
「でも、間違いなく……同じ国の出身です」
「すごい偶然だな。捜して、一緒に帰るつもりか?」
「そこまでは……でも、もし戻り方が分かったら、何らかの方法で伝えられたらいいなって」
「……ふむ。いい考えだ」
***
翌日――。
二人は魔術師協会に再び訪れ、テストルームの前に立っていた。
しかし、ドアの向こうから何やら賑やかな物音が聞こえてくる。
器具が動き回る金属音と、部屋中を歩き回る足音。
どうやら誰かが先に入っているようだった。
「この時間帯は、私が予約入れたはずなんだがなぁ……」
エデューが頭をかく。
ドアをノックすると、中から陽気な声が返ってきた。
「ただいま、両手が満員さんでしてね~。どうぞ入ってください!」
その声を聞いて、エデューが苦笑いする。
知り合い、なんだろうか……。
メグルがそう思っていると、エデューが扉を開けた。
「寂しいじゃないか。首都に来たのなら顔くらい見せてくれてもいいだろうに」
そう言って振り向いたのは、一人の男だった。
中背、がっしりとした体格に、白衣の裾をひるがえしている。
「知り合い……ですか?」
メグルがエデューに小声で尋ねる。
「ああ、同期だよ」
「おいおい、“親友”だろうが!」
男が明るく笑って否定する。
「まあ……友達ではあると思うが」
エデューが気まずそうに答える。
男はメグルに視線を向けた。
「初めまして。魔術師協会員のドーキンスだ。よろしく」
その表情は、研究者らしい好奇心に満ちていた。




