首都ミカドニア
カンナラビ地方のコッチネラの元を出発して、五日が経った。
メグルとエデューがいるのは、首都ミカドニアを中心に広がる平野部――ミカドニア地方だ。
遠く、霞むように首都を取り巻く巨大な城壁が見える。
***
その日の夕方。
メグルが魔法の自主練をしていると、エデューが声をかけてきた。
「どうだ、調子は」
「……切り替え? が、うまくいかない感じです。
青と赤、それぞれに専念することはできるんですけど」
「自分でそこに気づいたのか。なら話は早いな」
そう言うと、エデューはメグルに一つの戦闘スタイルを教え始めた。
その名は《カウンターバーン》。
メグルにかけられている翻訳魔法では、そう訳されていた。
特徴は――両手を使った分業制。
左手で徹底的な《打消し》。
右手で相手の隙を突く《火力》。
攻防の切り替えではなく、同時運用による“即応性”を重視した型である。
「つまり、左右で分けるんですね」
「そうだ。慣れれば、“防ぎながら攻める”という行動が、反射的にできるようになる」
メグルは早速、《カウンターバーン》の訓練を開始した。
***
やがて、メグルたちは首都ミカドニアに到着した。
巨大な城門が、昼の光を受けて開かれている。
行き交う人々の数に、メグルは思わず息を呑んだ。
「相変わらず、すごい人だかりだな。眩暈がしてきそうだ……」
エデューがこぼす。
「田舎の方が好きなんですね」
「ああ。静かな方が、物事をよく考えられる」
人混みを避けるように、エデューは建物の陰になった広場のベンチに腰を下ろす。
鞄から地図を取り出し、広げた。
「えーと、図書館がここで……今の場所は――」
「たぶん、ここですね」
メグルが指差したのは、地図の一角に書かれた『日溜まり市』の文字だった。
「ここが『日溜まり市』か」
エデューが辺りを見回す。
近くには、比較的新しい四階建ての建物が建っている。
どうやらその建物が、日溜まりを日陰に変えてしまっていたらしい。
「五年ぶりだと、街もずいぶん変わるものだな」
二人は腰を上げ、図書館へ向かって歩き始めた。
その途中、道案内の看板を見つける。
そこには、こう書かれていた。
『下生え市(旧:日溜まり市)』
「……名前まで変わってるんですね」
メグルがつぶやく。




