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風景から魔力を  作者: hato-ryuji
山地編
33/52

下へまいります

 メグルの案内で、二人は岩と樹木の入り混じった小道を進む。


「この辺り、見覚えがあります。大きな倒木の形、思い出しました」


 目的地までは、もう少しだ。


 バツ印が描かれた看板が、今にも倒れそうな角度でたたずんでいる。

 左手には谷へと真っ逆さまに落ちる断崖絶壁。右手には、こちらを見下ろすような茂み。


 メグルが振り返ると、ゴーレムの群れが迫っていた。

 最後尾には、あの《ボス》がいる。


 だが――


 「後から行く」と言っていたコッチネラの姿が見えない。


 メグルは立ち止まり、《チビ》たちを迎え撃つ。

 《チビゴーレム》は、通常の炎魔法でも対応可能だ。

 ……問題は、あのデカブツ。


 一歩一歩、重厚な足取りで《ボスゴーレム》が近づいてくる。


 攻撃圏内に入った瞬間、ゴーレムが低く構えた。

 まるで、飛びかかる前にエネルギーをためるかのように。


「今です!」


 メグルが叫んだ、その瞬間。


 崖上の茂みから、コッチネラが飛び出す。


「《トーモス・シン・アニマ》!」


 巨大な《虎》が頭上から、《ボスゴーレム》に飛びかかる!


「バツ印の看板の意味、知ってるか?――『襲撃注意』さ!」


 《虎》が組み付き、ゴーレムを崖際まで押しやる。

 だが《ボスゴーレム》は抵抗の気配すら見せず、両手を天に掲げた。


「引け!」


 コッチネラの声で、《虎》が一度飛び退く。


 《ボス》が両腕を振り下ろした瞬間、周囲に瓦礫が飛散した――

 その破片は空中で《チビゴーレム》へと姿を変える。


 二人は再び囲まれた。


***


 《虎》が崖を三角飛びし、再度《ボス》に襲いかかる。

 しかし、崖に突き落とすには至らない。


 《ボス》はまたしても、両手を高く掲げた。


「そのままで――最後の一押し、かけます!」


 メグルが走る。


「《トーモス・ミタマ》!」


 チビゴーレムを瓦礫に変え、踏み台にして跳躍。

 さらに、跳び箱の要領で次のチビを飛び越えて――


「《カイナ・オウ》!」


 衝撃を真下にぶつけ、跳躍距離を稼ぐ。


 ようやくコッチネラの元にたどり着く。


 彼女の手の甲に、メグルが手を重ねた。


「いっけぇえ!!」


 ありったけの魔力を“流し込む”。


 《虎》の四肢から、炎が吹き上がる。

 一気に後方へ噴射――二つの巨体が、空中に放り出される。


 《虎》は空中で魔力の霧となり霧散し、《ボスゴーレム》はそのまま谷底へ。


 落下した瞬間、サワラネ鉱の鉱石に激突。


 衝撃が爆発的に広がり――

 耳を劈くような高周波とともに、振動がゴーレムを塵へと変えていった。


***


 だが、一安心する暇はなかった。


 《チビゴーレム》たちが、二人を取り囲む。


 魔法で反撃するも、手が回らない。


 拳が振り下ろされようとした、その瞬間――


「《ハーモ・ツガーミ》!」


 崖の上の茂みから、蔓が伸びてくる。

 メグルとコッチネラを囲み、バリケードとなる。


 チビたちが接近すると、蔓が巻き付き、次々と締め落としていく。


 崖の上から、蔦の坂道が形成され、エデューがゆっくり降りてきた。


「おいおい、どうしたお前ら」


 エデューが出迎える。


「その傷はなんだ」


「先の戦の、跡片付けを少々……」


 メグルが息を整えながら答える。


「あはは……」


 コッチネラが静かにこぼす。


「やっぱり……一緒に悩んだり、勝利を喜んでくれる人が、そばにいてほしいな」


「一緒に来ますか?」


 メグルが問いかける。


「いいよ。どうせ、すぐに帰っちまうだろ?」


「さあ、どうですかね。……とりあえず首都に行けば、何かしら情報が見つかるかもしれませんし」


「できるよ。あたしの予感、けっこう当たるんだ」


「様子を見る限り……何かをつかんだみたいだな」


 エデューが、二人の手を順に取って、崖上へ引き上げる。


「数日、手の様子を見て問題なければ――出発しよう」


 三人は、ブラッド・ロータスの拠点へと帰っていった。

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