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風景から魔力を  作者: hato-ryuji
山地編
32/52

打開策

「とりあえず、洞窟には入ってこないようですね」


 洞窟の入口を見て、メグルが口を開いた。


「状況はかなりまずい。今のあたしたちじゃ、あのデカブツは倒せない」


 コッチネラが、洞窟の出口で待ち構えるゴーレムを指さす。


「さっきの……あの大きい虎? あれなら互角に張り合ってたじゃないですか?」


「あれは“互角”とは言えない」


 コッチネラが顔をしかめる。


 ――牙は体表を滑り、傷つけるには至らない。


「こっちの牙が通じない以上、いずれ魔力が尽きて、それで終わりさ」


「でも、さらに続けていれば、もしかしたら――」


「ふん。勝てもしない勝負に出て、意味もなくくたばるほど、あたしは馬鹿じゃないよ」


「でも……」


「以前言っただろ? “無謀さは周囲を傷つける”って」


 コッチネラの唇がわずかに吊り上がる。

 笑っているようにも見えるが、その表情は冷えきっていた。


「――その無謀な馬鹿が、あたしだよ」


 淡々と、だが重く言葉が続く。


「味方の仇? 勝利への貢献? ……ただ、“一人前として認めてほしかった”んだ。

 その結果、生き残ったのは、あたしだけだった」


「でも今回は、コッチネラさんの決断で、二人ともまだ生きてます。

 このまま、二人で切り抜けましょう」


 その言葉に、コッチネラの口元にいつもの不敵な笑みが戻った。


「……当たり前だ」


「そのために最大呪文を中断したんですもんね」


「あと一回だけなら撃てる。でも、正面からは無理だ。攻撃力をプラスする必要がある」


 二人は視線を交わし、静かに打開策を探り始めた。


***


「“流し込み”は?」


 メグルが問いかける。


「……微妙なラインだな。さっきの交戦時に頼もうかと思ったんだが、どうも嫌な予感がしてな。

 あたしの予感は、けっこう当たるんだ」


「単純に出力を上げるんじゃ、解決しない気がするんですね」


「そう。完全に“別レイヤー”の力を使う必要がある。

 敵の特性を利用する……」


 何か。あのゴーレムの特徴――固い、でかい、重い――。


 その時、再び洞窟の入口が力強く叩かれ、振動が響く。


 ――最大の特徴は、衝撃が当たった瞬間に振動することだ。

 ――その衝撃が大きければ大きいほど、強い反発が発生し、対象を破壊する。


「……あの谷に、突き落とせばいいんだ」


 メグルの目に閃きが宿る。


「魔法の牙が通じないなら、大地の牙を使えばいい」


「サワラネ鉱のことか。なるほど、あそこに突き落とせば、ワンチャンあるかも」


「道順は覚えてます。案内できます」


「よし、任せた!」


***


「で、どうやって出ます? 入口はあれが塞いでますよね?」


 メグルが、洞窟の入口をにらみつける。


 コッチネラが手を上げ、メグルの言葉を止めさせる。


 目を閉じ、両手を広げ、空気の流れに神経を集中させる。


「……こっち。風が通ってくる。たぶん、出口か、壁が薄い場所だ」


 コッチネラが洞窟内を先導する。


 20メートルほど進んだ先――薄明かりが、岩の隙間から漏れている。


 だが、その時。周囲から「ガサッ、ゴソ……」と不穏な音が響く。


「獣……ですかね。それとも……」


「どのみち、やるしかない」


 メグルが火球を放ち、壁を破壊する。


 その向こう――現れたのは、人間サイズのゴーレムだった。


「きみ、縮んだね」


 メグルがそれを指さす。


「違うって……ほら、周囲に――」


 視線を巡らせると、二人は無数の《チビ》ゴーレムに囲まれていた。


 そして――全員が一斉に、甲高い金切り声を上げる。


 その振動が空気を震わせた刹那。

 巨大な影が、こちらへと歩を進めてくる。


「あいつ、《ボス》を呼びやがった。……《チビ》どもは偵察ってわけか」


 コッチネラが舌打ちする。


「全部相手してる暇はない! 通せんぼしてる《チビ》を倒しながら、あの落とし穴まで向かう」


 彼女は炎の構えを取り、振り返らずに叫ぶ。


「後から行くから、道案内、よろしく!」

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