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風景から魔力を  作者: hato-ryuji
山地編
30/52

起動可能・制御不可能

 メグルの特訓の成果を確認するため、二度目の模擬戦が行われた。


 序盤こそ優勢だったメグルだったが、攻めに夢中になるあまり、背後を取られて紙風船を割られてしまった。


「なぁ、エデューさん。アンタはどう思う?」


 コッチネラが尋ねる。


「そうだな……“勇敢すぎる”、というところか。

 前回はパニックになりながらも、周囲を冷静に見ようとしていた。

 だが今回は、自分の勝ちに執着するあまり、早とちりとも言える行動が多かった」


「相変わらず優しいな。あたしに言わせりゃ、それは勇気でもなんでもない。“無謀”だよ」


「何もそこまで言わなくても……」


 メグルが口を挟むが、コッチネラは聞き流すように続けた。


「無謀ってのは、自分だけじゃなくて、周囲の人間も巻き込んで傷つける。

 自分の心のコントロールもできない奴は――ずっと独りでいればいいんだ」


***


 メグルとコッチネラは、土砂崩れで倒木が散乱している山道を歩いていた。


 コッチネラが先導し、二人は倒木を踏み越えながら進んでいく。

 地面に手をつきながら慎重に足場を探す。


「地盤が緩んでるらしいね。ゆっくり進むよ」


 コッチネラが注意を促す。


 倒木のエリアを抜けようとしたその時――


「つ……」


 メグルが小さく声を上げる。


「おいおい、大丈夫か?」


 先行していたコッチネラが振り返る。


「大丈夫です……」


 メグルは顔をゆがめながら立ち上がる。


「確か、ゴーレムが置いてある近くに沢があったはず。

 そこで傷口をきれいにしよう」


***


 二人は、かつて奇妙な石像があったエリアにたどり着いた。


 メグルの歩いた後には、一滴、また一滴と血が垂れている。


 やがて、清流のある沢に到着する。


 メグルは澄んだ水で傷口を洗い流す。


「よし、見せてみな。……骨には異常なさそうだね。止血するか、さてと」


 コッチネラが自分のシャツをつかみ――ビリッ。


 勢いよく布を裂き、メグルの傷口に巻き付けた。


「このパターンで他人の服の布を使う人、初めて見ました……」


「何か文句でも?」


「いえいえ。ありがとうございます……」


 その時、不意に地響きが響いた。


「ゴーレムがいた方角だ」


 コッチネラが顎をしゃくる。


***


 進むたび、地響きは大きくなっていく。

 内臓に響くような重低音。まるで、地面そのものがうなっているかのようだった。


 たどり着いた先で――


 巨大なゴーレムが、もがくようにして立ち上がろうとしていた。


 周囲の地形と一体化していた四肢を、一本ずつ開放していく。


 ――一般的にゴーレムってやつは、術者の“血液”が動かすための鍵になっている。


 メグルは、かつてコッチネラが話してくれた言葉を思い出した。


 そう、“血”がトリガーだ。

 でも、コッチネラさんの血では動かなかったはず――。


「おい! あんたが起動させたんだろ! 何とかしてよ!」


 コッチネラがわめく。


 メグルは、ゴーレムに向かって制止を命じる。


「止まれ! 動くな!」


 しかし、ゴーレムはまるで反応を見せなかった。


「……言っても聞かないなら、力ずくで止めるだけさ」


 コッチネラが息を深く吸い込む。


「なぁ、行けるだろ。ブラッド・ロータスのコッチネラ」


 二人は無言でうなずき合い――

 魔法の構えを取った。

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