起動可能・制御不可能
メグルの特訓の成果を確認するため、二度目の模擬戦が行われた。
序盤こそ優勢だったメグルだったが、攻めに夢中になるあまり、背後を取られて紙風船を割られてしまった。
「なぁ、エデューさん。アンタはどう思う?」
コッチネラが尋ねる。
「そうだな……“勇敢すぎる”、というところか。
前回はパニックになりながらも、周囲を冷静に見ようとしていた。
だが今回は、自分の勝ちに執着するあまり、早とちりとも言える行動が多かった」
「相変わらず優しいな。あたしに言わせりゃ、それは勇気でもなんでもない。“無謀”だよ」
「何もそこまで言わなくても……」
メグルが口を挟むが、コッチネラは聞き流すように続けた。
「無謀ってのは、自分だけじゃなくて、周囲の人間も巻き込んで傷つける。
自分の心のコントロールもできない奴は――ずっと独りでいればいいんだ」
***
メグルとコッチネラは、土砂崩れで倒木が散乱している山道を歩いていた。
コッチネラが先導し、二人は倒木を踏み越えながら進んでいく。
地面に手をつきながら慎重に足場を探す。
「地盤が緩んでるらしいね。ゆっくり進むよ」
コッチネラが注意を促す。
倒木のエリアを抜けようとしたその時――
「つ……」
メグルが小さく声を上げる。
「おいおい、大丈夫か?」
先行していたコッチネラが振り返る。
「大丈夫です……」
メグルは顔をゆがめながら立ち上がる。
「確か、ゴーレムが置いてある近くに沢があったはず。
そこで傷口をきれいにしよう」
***
二人は、かつて奇妙な石像があったエリアにたどり着いた。
メグルの歩いた後には、一滴、また一滴と血が垂れている。
やがて、清流のある沢に到着する。
メグルは澄んだ水で傷口を洗い流す。
「よし、見せてみな。……骨には異常なさそうだね。止血するか、さてと」
コッチネラが自分のシャツをつかみ――ビリッ。
勢いよく布を裂き、メグルの傷口に巻き付けた。
「このパターンで他人の服の布を使う人、初めて見ました……」
「何か文句でも?」
「いえいえ。ありがとうございます……」
その時、不意に地響きが響いた。
「ゴーレムがいた方角だ」
コッチネラが顎をしゃくる。
***
進むたび、地響きは大きくなっていく。
内臓に響くような重低音。まるで、地面そのものがうなっているかのようだった。
たどり着いた先で――
巨大なゴーレムが、もがくようにして立ち上がろうとしていた。
周囲の地形と一体化していた四肢を、一本ずつ開放していく。
――一般的にゴーレムってやつは、術者の“血液”が動かすための鍵になっている。
メグルは、かつてコッチネラが話してくれた言葉を思い出した。
そう、“血”がトリガーだ。
でも、コッチネラさんの血では動かなかったはず――。
「おい! あんたが起動させたんだろ! 何とかしてよ!」
コッチネラがわめく。
メグルは、ゴーレムに向かって制止を命じる。
「止まれ! 動くな!」
しかし、ゴーレムはまるで反応を見せなかった。
「……言っても聞かないなら、力ずくで止めるだけさ」
コッチネラが息を深く吸い込む。
「なぁ、行けるだろ。ブラッド・ロータスのコッチネラ」
二人は無言でうなずき合い――
魔法の構えを取った。




