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風景から魔力を  作者: hato-ryuji
山地編
29/52

向いている技術

 訓練場にて、三日目の訓練が始まった。


「これから教えるのは、一番アンタが身につけるべきテクニック」


 コッチネラが説明を始める。


「自分の魔力を他人の魔法に流し込む技術で、一般的に『流し込み』って言われてる」


「確かに、風景のストックが大量にあるおれ向きですね」


 メグルがうなずく。


「やり方は、相手に触れた状態で風景を思い浮かべるだけ。

 普段魔法を使うときのルーチンから、呪文と〈印〉を取り除いたものって感じかな」


 コッチネラが、メグルに近寄るように合図を送る。


「じゃあ、早速やってみようか」


 メグルが手を伸ばしかけたが、ふと動きを止めた。


「……何してんの?」


 コッチネラが眉をひそめる。


「どこに触れればいいのかなと」


「じゃあ、ここにしな」


 そう言って、左手を差し出す。


 メグルはコッチネラの手の甲に、自分の掌を重ねた。


 コッチネラが《トーモス・イフキ》を唱え、メグルは風景を思い浮かべて魔力を流し込む。


 魔力の量に応じて、炎が大きくなったが――

 時折、勢いがふっと弱まった。


「……時々手が離れるから、魔力が安定しないんだってば」


 コッチネラがぼやきながら、メグルの手を振り払う。

 そのまま逆に、彼の手をぐっと鷲掴みにした。


「変におどおどしながら触れてる方が、かえってやらしいんだよ」


 冗談めかして言いつつも、魔力の流し込みは安定し、炎の勢いが戻る。


 しばらくしてから、コッチネラが魔法を止めた。


「『流し込み』については、こんなもんかな」


***


 メグルとコッチネラは、山道を歩いていた。


 道中、奇妙な顔のような岩石が地面に埋め込まれているのが見えた。


 その顔の額と思しき部分には、タコのような彫刻が施されている。


 下には文字があったが、風化していて断片的にしか読めない。

 ――ヨグ……エル……リッチ?


「この顔、何ですか?」


 メグルが石像に触れながら尋ねる。


「ブラッド・ロータスの人たちが作ったんですか?」


「あたしたちとは無関係。

 戦争のときに使われた兵器――今となっては休眠中のゴーレムさ」


 兵器と聞いた瞬間、メグルがビクッと手を引いた。


「怖がりだなぁ」


 コッチネラが笑う。


「そいつらは、もう動かないって。

 一般的にゴーレムってのは、術者の“血液”が動かすための鍵になってるんだよ」


 そう言って、彼女は腰に携えたナイフに手を伸ばした。


「一応、あたしの血でも試してみたけど、1ミリも動かなかった。

 だから、アンタが撫でたくらいじゃ起きやしない。試しにやってみる?」


「嫌ですよ。単に切り傷が増えるだけじゃないですか」


 そう言いながらも、メグルの警戒心は解けきっていなかった。


「やろうと思えば、あたしの魔法でもぶっ壊せるし」


「じゃあ、壊しておけばいいじゃないですか」


「まあ、実害はないし。

 あと、結構固いんだよ。そいつ。面倒だから、やりたくないの」


 二人は、石像たちを横目に見ながら、再び足を進めた。

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