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風景から魔力を  作者: hato-ryuji
山地編
28/52

刃物は使いよう

 訓練場にて、コッチネラがメグルに説明をしている。


「まずは《トーモス》系統の中で、一番基本的な魔法――《トーモス・イフキ》――から始めるよ」


 ――確か、ブーリアンの塾を襲った奴らが使っていた魔法だな。

 そう思い出し、メグルは苦い顔をする。


「何さ、その表情は」


「いえ、なんでもないです……」


「思い出した。どこぞのチンピラが同じ魔法を使ってたってやつでしょ?」


 コッチネラが肩をすくめる。


「でもさ、『嫌いな奴が使ってた技を使わない』なんてルールを自分に課してたら、最終的に何も使えなくなるぜ」


「頭ではわかってますよ。……気持ちでは、まだ受け入れ切れてないけど」


「それにな。火炎魔法ってのは、どれくらいの威力があるか客観的に判断できる魔法なんだ。

 つまり、相手にぶち込む前に、そいつが白旗を上げる。……だから、むしろ戦いたくないお前向きだよ」


 そう言って、コッチネラが《トーモス・イフキ》の説明を始める。


「《トーモス》系統に代表される“赤魔法”は、山、高木、塔――空高くそびえる風景に適した魔法だ。

 その中でも《トーモス・イフキ》は、前方に炎を噴射するシンプルな魔法だよ」


 印の形は、五本の指を前方に向けた構え。


「さ、やってみな」


「《トーモス・イフキ》!」


 メグルが唱えると、一瞬だけ炎が前方に立ち上がった。


「上出来、上出来!」


***


 翌日、訓練場。


 コッチネラが、メグルに再び説明を始めた。


「最低限、覚えてもらわなきゃならない魔法がもう一つあるんだ」


「最低限って……どういうことですか?

 攻撃なら、先日教わった《トーモス・イフキ》で何とかできそうですけど」


 コッチネラは、積み上がった瓦礫の山を指さす。


「じゃあ、試してみて。昨日の《トーモス・イフキ》で、あそこを狙って」


「了解」


 メグルは印を組み、《トーモス・イフキ》を唱えた。

 炎が瓦礫をなめ、表面を黒く焦がす。


「見ての通り、《トーモス・イフキ》は熱によって焼くことはできるけど、爆発や衝撃はほぼゼロ。

 つまり、耐熱性のある相手には効きにくい」


 そして、コッチネラは右手に炎を集めた。


「――で、そういうときに使うのがこいつ。《トーモス・ミタマ》!」


 彼女が炎の球を瓦礫の山に向かって放ると、

 ドンッという爆音とともに、瓦礫が吹き飛んだ。


「使い分け、か……」


 メグルがつぶやく。


「《トーモス・ミタマ》!」


 メグルが同じ呪文を唱え、炎の球を出現させる。

 それを地面に向けて投げると、爆発が起きた。


「前に戦った時、時間が経ってから爆発してた気がするんですが……あれって別の呪文なんですか?」


「同じ魔法だよ」


 コッチネラが答える。


「魔力の込め方で、爆発のタイミングを調整できる。一度炎の球を作ったあとに、殻をかぶせるイメージかな」


 メグルがもう一度《トーモス・ミタマ》を唱えた。

 今度は、しばらく経っても爆発しない。


「不発かな……?」


 様子を見に行こうとしたメグルを、コッチネラが慌てて止めた。


「ちょっと、待った! 一旦、休憩入れようか」


 二人が部屋を出た、その瞬間――


 ドガァン!


 背後で爆音が鳴り響いた。


「……な? 近づかなくてよかったでしょ」

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