燃えたのは誰のせい?
ブーリアンは、単独で襲撃者たちの方へと歩を進めた。
構えたのは手刀。
「《ナギ・イナス》」
呪文とともに、両手が青白い光に包まれる。
左足を前に出し、半身で構える。
火炎が飛ぶ――手の甲でそれを受け流す。
一寸の隙もない。
最小限の動作と魔力で、火炎の軌道をほんのわずか逸らしていく。
受け流された魔法は打ち消されたわけではない。
ただし、ブーリアンは振り返らず、攻めに転じる。
襲撃者たちの間に割って入り、背中側に“味方”がいる配置を作った。
「ほら、やってみろよ」
火炎魔法の射線上に、仲間が並ぶ。
リーダーの男が顔をしかめ、最大出力で火炎を放った。
ブーリアンはそれを滑らせるように逸らす。
――火炎は、そのままリーダーの“手下”の一人へ。
男は火だるまになった。
「この野郎……! 目にもの見せてやる!」
男は右手を突き出し、宙を掴む。
あたかも地面から伸びた太い柱――ちょうど人の首の位置にあるそれを、鷲掴みにするような仕草だった。
ブーリアンはそれを見て、何を唱えようとしているか察する。
「……まだ出し惜しみすんのか? “お前は”知ってるはずだろ」
その魔法は――《ホフル・カウシュ》。
黒魔法の一種。
対象の首を絞めて、息の根を止める魔法。
現在は反戦協定により、使用が禁じられている。
ブーリアンは一歩踏み込み、右手を握りしめる。
リーダーとの距離を詰め、直接触れられる間合いへ。
リーダーの口が動く。
「《ホフル――」
その言葉を遮るように、ブーリアンが呪文を放つ。
「《シンギ・ケッカイ》」
ブーリアンの親指が、リーダーの眉間に突き当たる。
鍵を回すように、手首を捻る。
リーダーの身体がびくりと跳ね、全身が痙攣した。
そのまま、のろのろと仲間の方へ手を伸ばす。
「《トーモス・イフキ》……」
震える声で放たれたのは――火炎魔法。
直撃を受けた襲撃者の一人が、炎に包まれた。
それを見て、仲間たちは混乱する。
「おい、お前何して――」
「《トーモス・イフキ》」
再び放たれた火炎。
――同士討ち。
次々と、仲間たちが、仲間の魔法で焼かれていく。




