何を教わってたんだよ
メグルはブーリアンに向かってうなずいた。
「《ナギ・ゼクー》!」
打消し魔法を唱えながら、頭の中で思考を巡らせる。
――防御は任せたぞ。得意分野で戦え。無尽蔵の風景。練度の低さ。
ブーリアンの言葉が脳裏に浮かぶ。
魔法自体はほぼ無尽蔵。だから継続して魔法を使い続けることはできる。
だが――相手の攻撃すべてを一人で同時に打ち消すことは不可能だ。
そして、塾生たちはこのままのペースで魔法を使えば、いずれ魔力が枯渇する。
――ならば。
「おれが片っ端から打ち消すから、みんなは“打ち漏らした”やつの処理だけを頼む」
メグルが塾生たちに声をかける。
塾生たちは無言でうなずき、配置についた。
敵の魔法が再び飛んでくる。
寄せては返す波のように、メグルは右手のひらで空を扇いだ。
青白い靄が現れ、赤い火炎とぶつかって霧散する。
――思いつく限りの“水に関連する風景”を、片っ端から思い出す。
それでも打ち漏らした火炎が、メグルの目の前に迫る。
「《ナギ・ゼクー》!」
塾生のネグラがそれを打ち消す。
「片手じゃ、間に合わない……!」
メグルは左手も扇の印を組む。両手使いの打消し魔法。
だが、魔力供給が間に合わない。
扇いでも、靄が出ない瞬間が出てくる。
――いちいち風景を切り替えている暇はない。
だったら、映像にすればいい。
メグルは思い出す。
海岸沿いの道をドライブしていた時の風景。
車窓から流れていく、延々と続く波と空と水平線。
“移り変わる風景”を一本の映像のように繋げ、脳内で再生し続ける。
すると――
両手から放たれた青白い靄が、翼のように広がり、教室全体を覆い尽くすほどの量となった。
それを見た襲撃者たちは、思わず後ずさる。
こんな量の靄を生み出すには、常識外れな――桁外れな――魔力が必要なはずだ。
“相手の魔法を、より少ない魔力で打ち消す”
――それが、本来の打消し魔法のセオリー。
その常識を完全に無視して、圧倒的な物量で押し切る。
「こいつ、ブーリアンから何を教わってたんだよ……」
襲撃者の一人が、素で漏らす。
「……あんなの、見掛け倒しだ!」
リーダー格の男が吠えた。
「すぐに魔力が尽きるに決まってる! このまま押し潰せッ!」




