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風景から魔力を  作者: hato-ryuji
港街編
20/52

しばらく

 メグルが通い始めて五日目の早朝。


 この日も、ブーリアンは塾の扉に貼られた張り紙を発見した。

 昨日と同じ場所。しかし、内容は違っていた。


――――――――――――


 無視していれば、諦めると思っているのか?

 言い出すのが怖いなら、俺たちが手伝ってやるよ。

 ガキどもの命と天秤にかければ、お前だってもう少し素直になれるだろ。


――――――――――――


 書かれている内容を本気で行うつもりだとしたら……。


「なんですか? その張り紙は?」


 ブーリアンの後ろから声が響く。振り返ると、そこにはメグルが立っていた。


「ああ、メグルか。見ての通り――

 この『イナーボ魔法塾』の存在が気に食わないやつがいるらしい」


 メグルは張り紙の文面を読んだ。


「これが本当だとしたら、みんなも……」


「だから、塾は今日で最後だ。

 塾生たちが来たら、適当に理由をでっちあげて、塾をたたむと説明する」


「張り紙の内容は伝えたくないってことですか」


「そうだ。――あいつらの前では、“先生”でいたいんだ」


 ふたりは無言のまま、塾の中に入っていった。


***


 教室にブーリアンと塾生たちが全員集まっている。


「すまない、みんな」


 ブーリアンが神妙な面持ちで口を開いた。


「しばらく、塾はお休みになる」


 教室がざわつく。


「《機関》から呼び出しがあってな。しばらくの間は、首都で仕事することに――」


 その言葉が、爆発音にかき消された。


 音の方向は――塾の扉。


 枠から外れた扉が床に倒れ、粉塵が舞う。

 その向こうに、複数の人影が見えた。


 五人の男たちが、室内へと侵入してくる。


 ブーリアンは塾生たちを庇うように前へ立ち、メグルに目配せする。

 メグルはゆっくりと教室の後方へ移動した。


 リーダー格の男が一歩前に出る。


「しばらくぶりじゃねぇか。ブーリアンさんよぉ」


「入塾希望者ですか?」


 ブーリアンが飄々と応じる。


「残念ながら、しばらく休業する予定なんです。一身上の都合によりましてね」


「まだ、心優しい先生を演じるつもりかよ……。気に入らねぇな」


 リーダーの男が、ブーリアンに手をかざす。


 五本の指すべてを根元からまっすぐに広げ、五角形のような形で向ける。


「《トーモス・イフキ》」


 指の間から、火炎が放たれた。


「《ナギ・ゼクー》」


 ブーリアンが打消し魔法でそれを打ち消す。


「どうした? あの時みたいにやってみろよ。簡単だろ、本性を見せてみろよ」


 リーダーはさらに火炎魔法を連発する。

 ブーリアンはすべてに打消し魔法で応じた。


「埒が明かねぇ! お前らも、ぶちかませ!」


 リーダー格の男が叫ぶと、他の襲撃者たちも火炎魔法を撃ち始める。


 ブーリアンは次々と打ち消すが、一発――火炎が抜ける。


「《ナギ・ゼクー》!」


 塾生のネグラが放った魔法が、それをかき消した。


 他の塾生たちも、次々と加勢に加わる。


 防御網は強固になった。だが、ブーリアンの目には不安が浮かぶ。


「この飽和攻撃じゃ……こちらの集中力か魔力が切れたら終わりだ……」


 ちらっと塾生たちを見て、決断する。


「――こちらから攻撃に転じて、一気にケリをつける」


「先生って、攻撃魔法は使えないはずじゃ……」


「説明は、はぐれ魔法使い共を片付けてからだ」


 ブーリアンが、教室の後方に目線を向ける。


 メグルと視線が合った。


「防御は任せたぞ。――得意分野で戦え」

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