しばらく
メグルが通い始めて五日目の早朝。
この日も、ブーリアンは塾の扉に貼られた張り紙を発見した。
昨日と同じ場所。しかし、内容は違っていた。
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無視していれば、諦めると思っているのか?
言い出すのが怖いなら、俺たちが手伝ってやるよ。
ガキどもの命と天秤にかければ、お前だってもう少し素直になれるだろ。
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書かれている内容を本気で行うつもりだとしたら……。
「なんですか? その張り紙は?」
ブーリアンの後ろから声が響く。振り返ると、そこにはメグルが立っていた。
「ああ、メグルか。見ての通り――
この『イナーボ魔法塾』の存在が気に食わないやつがいるらしい」
メグルは張り紙の文面を読んだ。
「これが本当だとしたら、みんなも……」
「だから、塾は今日で最後だ。
塾生たちが来たら、適当に理由をでっちあげて、塾をたたむと説明する」
「張り紙の内容は伝えたくないってことですか」
「そうだ。――あいつらの前では、“先生”でいたいんだ」
ふたりは無言のまま、塾の中に入っていった。
***
教室にブーリアンと塾生たちが全員集まっている。
「すまない、みんな」
ブーリアンが神妙な面持ちで口を開いた。
「しばらく、塾はお休みになる」
教室がざわつく。
「《機関》から呼び出しがあってな。しばらくの間は、首都で仕事することに――」
その言葉が、爆発音にかき消された。
音の方向は――塾の扉。
枠から外れた扉が床に倒れ、粉塵が舞う。
その向こうに、複数の人影が見えた。
五人の男たちが、室内へと侵入してくる。
ブーリアンは塾生たちを庇うように前へ立ち、メグルに目配せする。
メグルはゆっくりと教室の後方へ移動した。
リーダー格の男が一歩前に出る。
「しばらくぶりじゃねぇか。ブーリアンさんよぉ」
「入塾希望者ですか?」
ブーリアンが飄々と応じる。
「残念ながら、しばらく休業する予定なんです。一身上の都合によりましてね」
「まだ、心優しい先生を演じるつもりかよ……。気に入らねぇな」
リーダーの男が、ブーリアンに手をかざす。
五本の指すべてを根元からまっすぐに広げ、五角形のような形で向ける。
「《トーモス・イフキ》」
指の間から、火炎が放たれた。
「《ナギ・ゼクー》」
ブーリアンが打消し魔法でそれを打ち消す。
「どうした? あの時みたいにやってみろよ。簡単だろ、本性を見せてみろよ」
リーダーはさらに火炎魔法を連発する。
ブーリアンはすべてに打消し魔法で応じた。
「埒が明かねぇ! お前らも、ぶちかませ!」
リーダー格の男が叫ぶと、他の襲撃者たちも火炎魔法を撃ち始める。
ブーリアンは次々と打ち消すが、一発――火炎が抜ける。
「《ナギ・ゼクー》!」
塾生のネグラが放った魔法が、それをかき消した。
他の塾生たちも、次々と加勢に加わる。
防御網は強固になった。だが、ブーリアンの目には不安が浮かぶ。
「この飽和攻撃じゃ……こちらの集中力か魔力が切れたら終わりだ……」
ちらっと塾生たちを見て、決断する。
「――こちらから攻撃に転じて、一気にケリをつける」
「先生って、攻撃魔法は使えないはずじゃ……」
「説明は、はぐれ魔法使い共を片付けてからだ」
ブーリアンが、教室の後方に目線を向ける。
メグルと視線が合った。
「防御は任せたぞ。――得意分野で戦え」




