はるばる何の用ですか
メグルたちは高台から見えた灯台のある岬を目指し、港町に踏み入れた。
宿を物色しながら、潮風の香る石畳を進む。
メグルたちは岬にたどり着いた。
二人は馬を繋ぎ、周囲を見渡す。
真っ白の灯台。その右隣には、同じく真っ白の石造りの建物がある。
灯台から少し左には、二件の建物が並んでいた。
手前の建物には『イナーボー魔法塾』と看板が掛けられていた。
耳を澄ますと、子供たちの声と、それに混じって男性の声が聞こえてくる。
エデューがドアをノックする。
建物内の音がやみ、ドアから青年が出てきた。
「イナーボー魔法塾のブーリアンです。なんのご用――」
言いかけたところで、相手がエデューであると気づく。
「はるばる何の用ですか、エデュー師匠」
「せっかく立ち寄ったので、かつての弟子が元気にしてるかどうか、顔を見に行こうと思ってな。
ついでに、一つ頼み事をしたいのだが」
「ついで……ね。どっちがメインの用事なんだか……」
ブーリアンがメグルに目を移す。
「もしかして、頼み事はその連れについてですか?」
「察しがいいな」
「塾を切り上げてくる。少し待っててくれ。細かい話は中でしましょう」
そう言ってブーリアンは塾に戻っていった。
しばらくすると、子供たちが次々と出てきた。
「中にどうぞ」
ブーリアンが戻ってきて二人に告げる。
「ようこそ『イナーボー魔法塾』へ」
***
魔法塾内にあるブーリアンの仕事部屋で、二人の魔法使いは言い争いをしていた。
その内容は、メグルを魔法塾に入れるかどうかだ。
「うちの塾生、見たでしょ? うちは児童が対象だ。そいつは年齢的に対象外ですよ」
ブーリアンが反対する。
メグルは先ほど目にした塾生たちを思い出す。確かに、みんな子供だった。
「入塾申請書の条件には、年齢については書いていないぞ」
エデューは手に持った入塾申請書をひらひらさせながら反論する。
ちなみに、入塾申請書はブーリアンの机に積まれていた未使用の中から、エデューが勝手に一枚拝借したものだ。
ブーリアンはエデューの手にしている申請書の項目を指さす。
「年齢はひとまず良しとしますよ。『保証人』『契約者との関係』はどうするんですか。エデュー師匠」
「もちろん。保証人はエデュー・ジェザーヴィーヌ。契約者との関係は師匠だ」
「ほぼ他人……」
ブーリアンはため息をつく。
「そもそも、君はどこの出身? 翻訳魔法をかけているようだけど」
ブーリアンがメグルに質問する。
「おれは日本人で、こことは別の世界から来たんだと思います」
メグルの返答を聞いて、ブーリアンがエデューの耳元でささやく。
「あんたが言わせていたり、正気を失ってるってわけじゃないよな?」
「いいや、彼が言っていることは本当だよ。
そんなわけで、彼に身を守る術を教えてやってくれないか」
ブーリアンが渋々承諾する。
「わかった。メグルの入塾を認めよう。明日の十時から開始だ。遅れるなよ」




