飼い犬になってワンと言われそう ⑧
落ち着きを取り戻した私たちは、遊園地のベンチでお互いの話を始めた。
私は平凡な家庭で平凡に暮らしてるだけ。
でも、めぐみ、食い入るように聞いてくる。
憧れみたいな目で私を見つめてて、普通の家庭の話が、彼女にはキラキラ映ってるのかな。
めぐみの父親は、もう別の女と家庭を作ってた。
邪魔者扱いのめぐみは、一人暮らしを押し付けられた。
生活費は毎月もらってるけど、困らないだけ。
父親が顔出すことなんて、一度もなかった。
病気で寝込んでも、何も変わらない。
もう父親に、めぐみへの愛情なんて残ってなかったんだ。
愛情を知らずに育っためぐみ、人との接し方が分からない。
他人への怖さもあったのかも。
どう接していいか分からないから、誤解されちゃう態度になっちゃう。
初対面の人に、めぐみの生い立ちなんて分かるはずない。
変な態度、好いてくれる人なんていないよね。
だからめぐみ、ずっと孤独だった。
傷つかないように、仮面をかぶって。
「ねえ、めぐみ…これ、私と交換しよう」
私はツインテールの片方のゴムを外して、めぐみに渡した。
そんで、めぐみのツインテールの片方のゴムと交換。
「これね、ずっと一緒の証だよ」
「うん…」
私に見せるめぐみの顔、表情豊かで、鉄仮面なんてどこにもない。
心を開いてくれてる証だろって、私は信じてる。
二人の絆が、ずっと固く繋がってるって、私、強く信じてた。
END