飼い犬になってワンと言われそう ⑦
めぐみの衝撃的な告白に、私はビックリしてた。
この先、聞いていい話なのかも分からない。
私を見る彼女の顔、悲しそうだけど、どこか微笑んでる。
複雑な家庭環境って分かったら、私、どうすればいいんだろって悩んだ。
「驚いた? 小2の時、母を亡くしてるの」
めぐみ、自ら話し出した。
夕暮れの淡い光に包まれたその姿に、私は言葉を失った。
物心ついた頃、めぐみの家はもう崩壊してた。
裕福なのに、中は氷みたいに冷たい。
父親は家に寄りつかず、別の女に夢中。
母親は寂しさからか酒に溺れて、めぐみに愛情なんて向けられない。
そんな両親の下で育っためぐみ、親の愛って何だか分からない。
使用人に任せっきりで、両親に見向きもされない。
放ったらかしで独りぼっちのめぐみは、感情を出さなくなった。
そんで、冷え切った夫婦に疲れたのか、母親は自ら命を絶った。
詳しいことは分からないけど、ぶら下がった母を見つけても、めぐみ、涙も出なかった。
現実がピンとこなかったのか、母への思いが湧かなかったのか。
幼いめぐみは、ただぼんやりその光景を見てただけ。
『仮面の家族』――私の頭に浮かんだ言葉。
鉄仮面の始まり、きっとここだろ。
話し終えためぐみの顔は、いつの間にか感情ゼロの鉄仮面に。
悲しい真実を語ってるのに、何も感じてないみたい。
「辛かったね!」
我慢できなくて、めぐみをギュッと抱きしめた。
そしたら、私、わんわん泣いちゃった。
「何で貴女が泣くの?」って顔で、めぐみ、呆然。
「もう我慢しなくていいよ!」
その言葉で、めぐみの涙がダム決壊みたいに溢れ出した。