妖怪よどかけババアVS適応障害ブラザーズ
序章
静かな山間の村に伝わる「よどかけババア」の怪談。古びたひしゃくから濁った水を振りまき、心の弱い者を絶望の淵へ追い込む恐ろしい妖怪だという。この村を訪れたのは、都会から休息を求めてやってきた兄弟、しん(37歳)とりょう(32歳)。二人は現代社会のストレスで疲れ果て、心の拠り所を探してこの村に辿り着いたのだった――。
第一章:兄弟の来訪
兄のしんは長年企業の管理職として働き、責任の重さと激務から不安障害を抱えるようになった。弟のりょうは転職を繰り返し、次第に自分に自信を失い、対人関係に疲れ果てていた。
「自然の中でしばらくのんびりすれば、少しは気持ちが軽くなるかもしれないな」としんが言えば、「何か変わるかわからないけど、とりあえず来てみたんだし」とりょうが応える。どこかぎこちない空気のまま、二人は村に滞在することになった。
そんな中、地元の老人が語る怪談が二人の耳に入る。
「夜道には気をつけろ。よどかけババアに会えば、心の弱い者ほど呪いに飲み込まれる。」
しんは「そんなの迷信だろ」と笑い飛ばすが、りょうはどこか不安げだった。そして、その夜、二人は運命に巻き込まれることになる。
第二章:ババアの襲来
夜遅く、村外れの林道を歩いていた二人は、どこからともなく湿った音を耳にする。濃い霧が立ち込め、突然目の前に現れたのは「よどかけババア」。古びた着物をまとい、乱れた髪の下から鋭い目が二人を睨みつけていた。
「お前たち……濁った心を隠しても無駄だぞ。その弱さ、もっと濁らせてやろう!」
そう言い放ち、ひしゃくから濁った水を振りかけるババア。その瞬間、しんは胸が締め付けられるような苦しさを感じ、りょうは恐怖でその場に座り込んでしまう。二人の頭の中にはこれまでの後悔や不安が次々と浮かび上がり、心がどんどん押し潰されていく。
第三章:兄弟の絆
「もう無理だ……俺たちには勝てない……」と呟くりょうを見て、しんは必死に声を振り絞った。
「りょう、お前はこんなところで終わるやつじゃない!一緒に乗り越えるぞ!」
しんの言葉にりょうは涙を流しながら顔を上げる。
「でも、俺、いつも迷惑ばっかりかけて……」
「迷惑なんて思ったことない。お前がいたから、俺も頑張れたんだ!」
兄の言葉に勇気づけられたりょうは、震える手でしんの手を握り返した。その瞬間、二人の間に温かな光が生まれた。それは、お互いの弱さを受け入れ、支え合うことで生まれる絆の力だった。
「何だ、その光は!」と叫ぶよどかけババア。光は濁った水を弾き返し、ババアの体を包み込む。
最終章:ババアの消滅
光に包まれたババアは、力を失いながらこう呟いた。
「強い絆……そんなものがあったとは……」
やがて霧とともに姿を消したババア。兄弟は重苦しい呪いから解放され、夜空を見上げながら静かに立ち上がった。
エピローグ
村を後にしたしんとりょうは、それぞれ新たな決意を胸に都会へ戻った。しんはプレッシャーを軽減するため仕事のやり方を見直し、りょうは周囲との繋がりを少しずつ取り戻していく努力を始めた。二人の経験は、「適応障害ブラザーズ」として苦しむ人々に寄り添う物語となり、語り継がれることになった。
教訓
「どんなに歳を重ねても、心の弱さは誰にでもある。それを認め合い、支え合うことで人は前に進むことができる。」