呪われてしまったようです
「みんな集合してくれ」
クレイの集合の号令が掛かる。
「先に進む前に確認したいことがある」
難しい顔をしながらクレイの指が何もない頭上を指した。
「みんな、これ見えてるか?」
コレ、という単語ひとつで理解した。クレイにもやっぱり見えているのか。と。
みんなもかなと見渡すと、みんなもやはり見えているらしい。各々頷いたり、ああ、と返事をした。
特にドルチェットなんか分かりやすく、数字のある箇所をガン見してる。ガン見通り越してガンを付けているんじゃないかと思う程人相悪く睨み付けている。
そんなドルチェットを眺めながら、良かった俺だけじゃなかった、と安堵した。
「なんなんだこの数字」
とドルチェットが言った時、突然数字が変わった。
「……動いてるな」
「ほんとだ」
変化するのか、これ。
しばらくその数字を見ていると、数字がまた変わった。
どうやら大きい数字から小さい数字へ、一定感覚で動いているらしい。
それを見て、なんとなくカウンターのようだと思った。
「カウンターみたい」
そう言えばクレイが同感した。
「お前もそう思うか、オレもなんとなくそんな気がしてた」
「どういう事だ」
アスティベラードが訊ねてくる。
それにクレイが答えた。
「つまりは、このカウンターがゼロになると、さっき表示された呪いが発動するか、もしくは途中で発動してゼロになると完全に対象が機能しなくなるとか?」
「うっげぇ!マジふざけんな!」
ドルチェットの怒りの声にノクターンが肩を跳ねさせた。
「むう…」
「困ったなぁ」
本当に困る。
どうしたもんかと腕を組み考えていると、ジルハが挙手をする。
「とりあえずみんなの呪い確認しませんか?」
ジルハの提案で確認することになった。
ディラ『視力喪失』
クレイ『特定スキル封印』
アスティベラード『声喪失』
ノクターン『記憶混濁』
ドルチェット『利き腕感覚喪失』
ジルハ『完全獣化』
完全獣化??どゆこと?とみんなの視線がジルハに向かう。
気まずそうなジルハの隣に居たドルチェットがその視線に気付き、んあ?と不思議そうな声をあげ、次いでハッとした。
「あー、言ってなかったな、こいつこう見えて獣人なんだわ」
突然のカミングアウト。
それにジルハが怒って珍しくドルチェットに怒りの声を上げた。
「ちょっとドルチェット!なに勝手に」
「いーじゃねーか!遅かれ早かれバレるんだ。なら今バレたって同じだろーが!」
「心の準備ってのがあるじゃん!」
前に見たジルハの頭に生えていた獣の耳。あれは夢じゃなかったのか。
俺はドルチェットと喧嘩をしているジルハを改めて見た。
獣人だと言われたところで、今はとても獣人には見えない。
以前見た獣人は完全に獣の姿だったけど、ジルハの姿はどう見たって人だ。
こんな姿で獣人だと言われたところで、あの夜の事がなければ意味がわからなかっただろう。
「それにみんなは差別とかしないだろーしな」
ドルチェットの言葉に俺は訊ねた。
「差別?なんで?」
「種族格差とかを掲げているアホな連中がいるんだよ。そういう連中は混ざりものと、亜人種を下に見るんだ」
「ふーん。変なの」
そうなんだ、と納得するも、なんでだろうと俺は不思議に思った。
獣人かっこいいと思うんだけど、とブリオンで活躍する亜人種を思い出す。
ブリオンでは人間種だけではなく、その他の種族、例えばエルフやオーガ(鬼)、獣人、竜人、数は少ないけど亜人種として活動していた人もいた。
それぞれステータスが違っていて、たまに協力したりして大物を倒したりするのが楽しかったりしていた。
だけど、この世界にとっては違うみたいだ。
なんでだろうな。
ドルチェットは恐らくこの世界でも少数派なんだろう。
「ま!ジルハは普通の獣人じゃないがな!」
「まぁ、そうだけど…」
最後はジルハの獣人として?を誇らしげにして喧嘩は終了した。
それにしても普通の獣人じゃないってどういう意味なんだろうか。
そもそも俺には普通の獣人がどんなか分からない。
もしかして漫画に良くある人間に限りなく近い獣人とか。そこでジルハの耳の感じを思い出した。あれは恐らく狼だった。ということは、さては狼男か!
「そんなジルハの呪いが完全獣化か」
きっとかっこいい狼男になるんだろうな。
……あれ?獣人化じゃなくて獣化は普通の動物になるってことなのか?
「これ、僕になんのデメリットが?」
ジルハの反応からしてもしやメリットしかないパターンなんだろうか。初めはかっこいい狼男を想像していたんだけど、某映画の山犬みたいだったら最高だな。
そう思っていたんだけど、ドルチェットの「喋れなくなるとかじゃね?」で某山犬は消え去った。
「それは困るなぁ」
と、ジルハが嫌そうにしていたけれど、困る基準そこなんだ。




