やっぱり迷宮って危険ですね
いくつかシミュレーションしてみる。
例えば俺がスキルを発動させてゴーレムを破壊する。
だけどもここはゲームの迷宮ではなく、きちんとした建造物だ。こんなに狭かったら間違いなく攻撃の余波による迷宮の壁崩壊エンドがどうしても脳裏にちらつく。
クレイの盾もダメなら、もう逃げるしかない。
とりあえずゴーレムは俺達よりも動きが遅いから逃げきれるかも知れないけど、このままだと本来の目的地から遠ざかってしまう。ていうかこれ、正規の進路から逸れたら現在地マークどうなるんだ??
そんな事を思ってると、クレイがハッとしたような顔でアスティベラードに助けを求めた。
「アスティベラード!!!なんとかならないか!??」
「なんとかなるなら、もうしとるわ!!!」
クレイにアスティベラードが怒鳴り返す。軽くキレているらしい。
どういう意味だとアスティベラードの後方にいるクロイノをみると、ゴーレムにビビってた。
真っ黒なのに、明らかに耳が下がっているし、尻尾もいつもより太い。
おまけに「なに!?なにあれ!?」とでも言っているかのように頻繁にゴーレムを振り返っていた。
物理攻撃効かなさそうなのに、なんでクロイノが怖がってるんだあれ。
かわいいな。
全然そんな状況じゃないのに勝手にクロイノに癒されていれば、だんだんと勝手に走るスピードが増してきた。
何でだと思えば、景色が変わらなかったから気が付かなかったが、いつの間にか緩やかな坂道になっていたらしい。
これゴーレムバランス崩して転がってきたらヤバいんじゃないだろうか。
前方を走っていたジルハが何かに気が付いてキョロキョロと辺りを見回し始める。
「どうしたの?罠?」
だいたいジルハがこうする時は罠やモンスターの場合が多かった。
なので訊ねた。
「いえ、人の声がします!」
ジルハの回答にクレイが焦る。
「どこだ!?前方か!?」
前方だったらまずい。タイミング次第では大事故が起こる。しかし、ジルハは否定した。
「いえ、ゴーレムの後ろです!あとなんか変な音がします!」
「変な音?」
「んー?」
確かに耳を澄ませてみると、ものすごい轟音の合間に人の声が混じっていた。しかも「ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!」ととても焦った声が複数聞こえる。
なんだと振り返った。
声はゴーレムの後ろからどんどん近づいてきているようだ。
「んんー?」
一体なんだろうと千里眼の遠視を使うと、ゴーレムの隙間から冒険者3人が凄い形相で走ってきてた。
見た目はベテラン風だけど、表情は危機感迫った感じになっていてアンバランスなのが面白い。
こちらに駆けてくる人達の一人がゴーレムに気が付いた。
「おい!前ゴーレムだ!!」
「腕と破片に気を付けろ!!」
「ひいいいいっっ!!」
3人は慣れた様子でゴーレムの腕のタイミングを合わせて切り抜け、追い越し、そして全力疾走してきた。
なにこの迷宮の人達、ゴーレム慣れてるのすげえな。
その人達はゴーレムの前方にいる俺達に向かって大声を張り上げてきた。
「どけーーー!!!転石トラップだーーー!!!」
「岩がころがってくるぞーーーー!!!」
「ひいいいいい!!!」
警告だけして俺達をも追い抜いていくと、あっという間に姿が見えなくなった。
それにしても足が早すぎないか?もしや何かしらの魔法か、魔道具でも使用しているのか。
いやいや、それよりもまず気になる発言をしていた。
「今、転石トラップっていった?」
「言ってたな。まずいぞディラ、これが本当だとしたら──」
言い終える前に凄まじい音が近付いてくるのに気が付いて青ざめた。
正直嘘であって欲しかった。
錆び付いたブリキのようになりながらも振り返って確認すると、後方のゴーレムが後ろからの大質量の物体によって一瞬の内に木っ端微塵になった。舞い上がる粉塵や残骸の中から現れたのは、廊下いっぱいの転がる岩であ
「は? はァ!???」
それを目撃していた俺とクレイは顔を見合わせた。
「「いや無理ィ!!!!」」
悲鳴をあげながら速度を上げる。
ロエテムに抱えられているノクターンが泣きそうになりながら防御力増加の魔法を必死に唱えてくれていた。
きっと最悪な事態を想定しての事だろうが、ゴーレムを木っ端微塵にする岩に轢かれて無事なはずが無い気がするのは俺だけだろうか。
坂道ということもあって、後ろの岩がどんどん速度を増しているのが解る。
このままだと確実に引き潰される未来しか見えない。
その時、前方に通路と扉が見えてきた。
「みんな!!!近くの通路か部屋に飛び込め!!!」
クレイの合図でみんな横に飛んだ。俺は近くの部屋に、みんなは通路や反対側の部屋に。
幸いにも内扉だったから素早く避難できた。
入る際に慌てすぎて盛大に転んだが、痛みよりも安堵で息をつく。
後ろで大質量の岩が転がっていく音と、ゴーレムの残骸だろうモノが転がったり跳ねたりする音が聞こえた。
とりあえず、危機は去ったらしい。
「ふへぇぇぇ……、たすか……、ん?」
徐々に明るくなっていく室内に首をかしげた。
しかも、床から光輝いている。
嫌な予感がして視線を地面へと移すと、床一面に魔法陣が設置されており、どうやらそれが光始めたらしい。
「……」
これもしかしてまずいのでは?そう思い、ちゃんと確認するとさっき見た転移の魔法陣だった。
跳ね上がるように立ち上がって扉に向かって駆け出した。大丈夫だ。光ってから発動までには猶予があったはずだと、もう出られるという瞬間、一気に光に飲まれた。
「しま──」
ぐおんと浮遊感の後、光が収まる。目の前の扉は変わらないが、俺は間違いなく確信していた。
青ざめながら地図を確認すると、当然のごとく数が減っていた。
終わった。




