ワープは禁術
地図を見ながらひたすら進むと、またしても訳の分からない表記のされた箇所が近付いてきた。
「んんー??」
なんだこれと唸りながら地図を睨んでいれば、ジルハが「どうしました?」と訊ねてきた。
「どーにも変な描かれ方のした道があるんだよ。しかも一個じゃないの」
「どれ、見せてみろ」
クレイが地図を覗き込み、俺がここと示した所を確認した。
またしても道が途切れていた。しかしさっきのと違って分かれ道はない。その代わりにすぐ横、まるで並走するように突然道が現れて道の続いていた。
「本当だ。しかもあれだな。さっきの行き止まりとは違って、すぐ横に道が続いている…?」
「壁をぶち抜けって事ですか?」
「洞窟だぞ?そんなことしたら崩壊するだろ」
「だよねぇ」
良かった、やれと言われなくて。
さすがの俺も壁をぶち抜いたらどうなるかはだいたい想像がつく。
「ならまたクロイノの出番か?」
そうかな、と思ったところで、ふと俺は首をかしげた。
「…………いや、ちょっと待って。なんか見たことあるなこれ」
頑張って記憶を手繰り寄せて、気が付いた。
もしやと思いもう一度地図を見直すと、途切れた道の横に三角から丸やらの記号が小さく描かれていた。
しかもそれは一つじゃなくて、セットでだ。
これはブリオンでのワープ関連箇所のマークだ。間違いない。
「あ、分かった。ワープだこれ」
「ワープ!?」
「見間違いじゃないのか!?」
なんだかみんなの反応がおかしい。何でそんなに驚いているのか。
それにアスティベラードも疑いの表情を浮かべている。
「なんでそんなに驚いてるの?」
「いやいやいや、ワープって、伝説の魔法だろ!?」
クレイから衝撃的な言葉が飛び出してきた。
伝説の魔法ってなんだ。
「大袈裟じゃない?だって結構使ってたよ?」
そう言えば、ドン引きされた。
「お前の世界やべぇな。一応言うけど、ここじゃあそのワープっていうのは大昔に製造された伝説のモノだし、人がホイホイ使えるようなもんではない」
そうだ、とアスティベラードがクレイに同意する。
「そもそもワープ自体禁術になっておる。のう?ノクターン」
ノクターンが頷いた。
魔術師のノクターンが魔法に関して嘘を吐くとは考えてずらい。ということは本当なのだろう。
「へぇー。なんで禁術なの?使えた方が便利じゃない?」
せっかくだから理由をきいておきたいので訊ねると、ノクターンは説明を始めた。
「…その…、色々説はあるのですが…。ワープ自体が危ないからと言われてます…」
「危ない?どこら辺が?」
「消費魔力があまりにも多く…、そもそも人一人が扱える代物ではありません…。仮に複数人で発動させたとしても成功率が低いので…。あとは…教会がワープは神人が使うものだから人が使うのはあまりにも不敬となり…そのまま技術や知識も廃れたとも言われてます…」
ここではワープはい気軽に使えるものでは無いらしい。
確かに成功率も低い上に死ぬ可能性が高いんじゃ普及しないよな
そういえば俺も此処に来てワープ使ってないけど、そもそも使えるんだろうか?
ブリオンではワープ地点を登録しておけばいつでも使えたもんだが。
試しに念じてみたけど何も変わらなかったので使えないのかと一人納得した。
ワープが禁止なのは一般常識なんだけどなと、ドルチェットが言っていたけれど、うちではそうじゃなかったから仕方無かろう。
「そっちでは一般的なのか?」
「うん。都市から都市の移動はだいたい使ってたよ。特に迷宮探索とかは必須だったかな」
「狂ってんな」
ドルチェットの一言がストレート。
でも負けない。そもそも世界が違うんだし。そう俺は気を取り直した。
「いやいや、ていうかこことシステム自体が違うっぽいし。都市ワープも条件とかあったし、個人で使うのなんか基本道具使ってたからね」
その道具だって手に入れるのは苦労するし、回数制限があるが何処からでもワープできる道具は結構なお値段がしていた。
そういえばブリオンではワープは魔力を使わなかった気がする……、あれは魔法ではなかったのか?
俺がふとした疑問に考え込んでいたが、先程の俺の答えにクレイは納得したらしい。
「所変わればっていうが、ここまで違うと変な感じだな」
「ですね」
あれ?そういえばアレはどうなんだ?
更なる疑問が湧いてきてしまったが、思考はドルチェットによって中断された。
「そんで、その地図のそれが仮にワープだとして、どうするんだ?まさか使うのか?」
「……うーん」
確かにこれに表記されているモノがワープならば、皆が怖がるだろう。
禁術だし、下手したら人が死ぬというのはどうしても忌避勘がある。
とはいえ俺のワープに対しての認識はそこまでではない。
なにせ、ブリオンでは死に戻り出来るし、それを活用した地図の虫がいたので(ブリオンの未開拓は地図に空白が出来るからそこを調べ尽くす人)完成された地図が配布されて積極的に使っていたからだ。
けれど、死に戻りが出来なかったら確かに無闇に乗らないかも。
でも、やっぱりマーリンガンが記しているということは、何かしら意味があるようにも思う。
「……マーリンガンのこの地図しかないし、さっきの通路みたいに上手く使えるから描いたって気もするから」
俺はクレイを見る。
こういう場合はリーダーの指示を仰ごう。
「積極的に使っていきたいと思うんだけど、どうかな?リーダー」
クレイは頬を掻きながら少し考えていた。
「ディラの言うことに一理ある。ましてや依頼主も地図をくれたのもマーリンガンだ。ここは信頼していこう」




