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つまり俺が馬車革命の父である

 そんな時、ノクターンの後ろに控えていたロエテムが立ち上がり俺の所へ来て、気を引くように肩を叩いた。

 

「なに?」

 

 肩を叩いたロエテムを振り返ると、今度は腕をグイグイと引っ張って立ち上がらせようとする。

 何だろうかと素直に立ち上がると、今度は何処かへ引っ張って連れていこうとしたので俺は焦った。

 

「なになになに??どこに行くの???」

 

 目的も分からないまま着いていけないと立ち止まると、ロエテムが腰に装備している首から下げたノートに文字を書いた。

 そこにはこう書かれていた。

 

『グラーイとおはなしをしよう』

 

 と。

 




 みんな揃って馬車の預かり場へ向かう。

 さて、何て言おうかと歩きながら考えたが、一向に良い案が浮かんでこない。そもそも俺が相手を説得する為の話術なんて持ち合わせてはいないのだ。

 やはりここはいつものリーダーに任せるかと、思考を放棄した所で預かり所へと到着した。

 すると預かり所の主がやってきた。やや、背が低い彼はドワーフなのだろうか。

 

「おやおや、いらっしゃい。今日の分のお金は貰ったがどうしました?」

「今日は馬に会いに」

 

 クレイがそう言えば主は納得した。

 

「そうでしたか。こちらです」

 

 案内された場所は厩舎だ。

 普通の馬に混じってグラーイが繋がれてた。

 

「ちゃんと馬扱いしてくれてる…」

 

 人形だから食べもしないし出しもしないのでモノ扱いかと思いきや、馬と同等の扱いに驚いた。だけどやはり人形なのでその一角だけ凄く綺麗だった。

 ロエテムがやって来たことにグラーイが気付いて尻尾を振る。

 じゃあ説明をと、クレイが行こうとするとロエテムがやって来て違う違うと止めた。

 

『製作主はディラさんなので、この人の言うことの方が納得する』と書かれていた。

 

「んんーー~」

 

 なるほど。今回はリーダーカードを使えない、と。

 

「じゃ、ディラ頼む。オレは主に馬車が売れるところを聞いてくる」

「……気が進まないけど、わかった」

 

 仕方がないと咳払いをして、グラーイの元へ行くと、俺がが近付いてくるのを感じてか、グラーイが「お!」という感じでこちらを見た。

 さて、どうしようか。変に誤魔化すのも良くないだろう。

 ここは正直に言ってしまおう。

 

「えーと、……、グラーイ、ちょっと聞いて欲しいことがあるんだ」

 

 グラーイに全て説明した。

 馬車を手放さないといけなくなったという言葉でグラーイが耳を後ろに倒して怒っていたが、なんで手放さないといけないのかを丁寧に丁寧に説明すると怒りを納めてくれた。

 

「もちろん君は一緒に来て欲しいんだ。そのー、君が嫌じゃなかったら…」

 

 好きなものを他人の都合で手放させてしまうので、嫌われてしまうかもしれないと思っていた。

 人形とはいえ、個人的には所有物とは思ってないし、仲間だからと思っている故の発言。

 端から見れば馬、人形に何言ってんだろうこいつとか思われるだろう。

 すると、グラーイが鼻からブシュと音を出す。

 毎回思うけどどうやって音を出しているのか。

 ロエテムが俺の肩を指先でつついてノートを見せてきた。

 

『グラーイは仕方無いから許してやる、といってます』

「本当に!?」

『その代わり要求を一つ聞いてもらいます』

 

 予想外の返答に戸惑う。

 

「……な、なに?」

 

 一発蹴らせろとかじゃないだろうな。

 ドキドキしながら返事を待っていると、グラーイは予想外の要求をしてきた。

 

『口を作れと言ってます』

 

 口を??

 見間違いかと思いもう一度見る。

 やはり口を作れと書いている。

 思わずグラーイに訊ねた。

 

「口、欲しいの??」

 

 頷くグラーイ。

 

『ついでにベロも欲しい』

「ベロ…」

 

 どうやって作ればいいのだろうか。

 全く案が浮かばない。

 

「………マーリンガンに何で作った方がいいのか相談しながらで良いですか??」

 

 グラーイからオーケーの許可が降り、馬車は売りに出されていった。

 納得したもののグラーイの寂しそうな背中を見て珍しくジルハが一言。

 

「そのうちまた馬車買いません?」

「そうだね」


 それに俺は返事をしながら、今度はグラーイの意見も聞こうと思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 クレイが宿に戻ってきた。

 

「スッゲー高値で売れた」

 

 そう言ったクレイの手にはパンパンな袋が握られていた。

 にしては何だか予想していたよりも袋が大きい気がした。

 

「多くないか?」

 

 ドルチェットがそう聞くと、クレイが理由を説明してくれる。

 

「購入したときの二倍で売れた」

「マジかよ」

「そんなことあるの」

 

 俺とドルチェットが驚きながら見せろ見せろとせがむと、クレイは机にお金を広げてみせた。二倍の話は本当だった。

 おかしい。中古品だから普通は値が下がる筈なのに、何故高値で売れたんだろう。

 その答えは単純だった。

 

「車輪の改造が値を吊り上げたっぽい。買い取りたい業者複数で競り合いしていたから、買取価格が二倍になったんだ」

「なるほど」

 

 道理で高く売れた筈だよ、と俺は納得した。

 購入してすぐに馬車の揺れの酷さにげんなりした俺は、勝手に馬車を改造したのだ。勿論マーリンガンの魔道具の力も借りてだけど、馬車の揺れはほぼ消すことに成功していた。

 この世界にはまだ板バネすら普及されてないらしいから、揺れない馬車なんて革命的だっただろう。

 というか。

 

「みんな、馬車の揺れ嫌なんだね」

 

 そう言えば、みんな「だろうな」と同意した。

 俺は考えた。これ、もしかしたら後付けできる揺れ吸収バネとか作ったら相当売れるのではなかろうか。

 が、ここで名前が広がったら教会がすっ飛んでくるかもしれない可能性に俺は頭を振って考えを消し去った。

 そういうことはもっと上手い人がやればいい。

 

 

 

 後にこの時に売った馬車の揺れ吸収の仕組み、板バネが元となって馬車革命時代が到来するのだが、それはまた別の話である。

 


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