突然のマーリンガンクエスト
「………羊羮??」
俺がそう思うのも仕方がないといえよう。何せそのイラストは一見、縦にした羊羮にしか見えないからだ。
そんな俺の言葉を無視してマーリンガンは続ける。
「『で、見つけたこれに石をひとつ置いてくれないかい?』」
石とは、ばら蒔くようの石だろう。しかし、そんな所に置いて何になるのか。疑問は残るが頷いた。
「まぁ、いいけど。迷宮ったって地域全体が迷宮じゃん。宛なく探し回るとか無理なんだけど」
「『そこは心配いらない。君の鞄の中に地図をいれておいた。それを使うといい』」
「……地図?」
そんなものあったかなと思いながら手を突っ込むと、地図が出てきた。
しかも迷宮の地図で、目的の場所にご丁寧に星マークが描かれている。
その他にも変なマークがあったり謎の隙間があったり数字が描かれていたりと変な地図だったけど。
何でもありになってきたなこの魔術師とディラが小型マーリンガンを見ると、ドルチェットが何かを見つけた。
「ん?おいこれ都市大迷宮の地図じゃないか?」
「どこ?」
「ほら、ここに書いてる」
ドルチェットが指差す地図の右上に都市大迷宮と記載されていた。
「げっ!まさか都市に向かえとか言うんじゃないよね?」
教会に近付きたくないので心底嫌そうにそうに訊ねると、マーリンガンは笑いながら首を横に振った。
「『ははは、いやいや、そんなわけ無い。入り口の方に町の名前があるだろ?そっちの方が行きやすいから、そこから向かってくれないかな?』」
町の名前?そんなものあったかなと、もう一度地図を見てみると、今滞在している町の名前が紙の下側に書いてあった。
その事に俺は小型マーリンガンに質問する。
「…監視カメラか盗聴機でも仕込んでる?」
「『いや?仕込んでないけど?』」
疑惑の目を向けた俺に、マーリンガンは訳の分からなさそうに首を傾けた。本当に仕込んでいないのか。
「まぁ、いいけど。いいかな?」
念のためにみんなに訊ねると、「いいよ」と承諾された。
「『いやぁ、ありがたい。ああ、そうそう。注意事項がひとつあってね』」
小型マーリンガンが俺の持つ地図を指差した。
「『この道一方通行だから、戻れないから気を付けてね。じゃあ、よろしく!』」
ちょい待てと引き留める前に小型マーリンガンは消えた、
再度通信を試みても繋がらない。
「とりあえず、その噂のところに行ってみよう。問題は素直に話してくれるかどうかだが…」
クレイの言葉にジルハ挙手した。
「それなら僕に任せてください!」
ジルハは自信たっぷりだった。本人がやれると言うなら否定するまでもない。
「じゃあよろしく頼むよ」
クレイが頼むと、ジルハは元気に「はい!」と返事をした。
翌日、本当にジルハは場所を特定してきた。
「やっば。どうやったの?」
俺が訊ねると、ジルハは胸を張って答えた。
「簡単ですよ。追跡してきました」
「…あーー…本職…」
忘れてたけど暗殺者だったこの人。
「じゃあ案内しますね」
ジルハの案内のもと辿り着いたのは険しい横穴だった。正確に言えば、崖の途中に空いた穴。
そこに行くために簡易的なロープが張られている。
みんなで下を覗く。結構な高さがあって、気を付けなければ事故が起こるのは間違いなかった。
「こりゃあ…」
思わずクレイが言葉を詰まらせた。
恐らくみんな思っているのは同じだろう。
「……一旦戻るか」
宿屋にて会議を始めたが、みんな沈黙をしていた。
先にクレイが気まずげに口を開く。
「……、あー、その。みんなもなんとなく感付いているとは思うが…」
チラリとノクターンを見る、そしてノクターンは俺を見ていた。
クレイとノクターンの視線の意図を察した俺は、確認するように口に出した。
「あーと、うん。マーリンガンの用件を達成するには馬車を捨てないといけないって事だよね」
クレイが頷く。
折角みんなで買って、メンテナンスや改造を施した馬車を手放さないといけない。
何よりもグラーイが気に入っているものを取り上げないといけない事実に一同気まずくなっていたのだ。
グラーイは人形とはいえ、今じゃ立派な仲間だ。それを自分達の都合で取り上げるのが気が進まなかった。
アスティベラードが提案をする?
「他の所から向かうってことは出来ぬのか?」
「俺もそう思って地図を見返してたんだよ。回り道になっても行けそうな所がないかなって」
本当ならそうした方がいい。だけど、それが出来ない理由があった。
「なんだけどさ、これ見る限り本当に一方通行なんだよね。というより、これ以外の道が記載されてないんだよね。あとこれ恐らくなんだけど広大な道のりを無理やりこの一枚に詰め込んでいるっぽい」
ヒラヒラと地図を振り、みんなに見えるように広げて机に置いた。
「そもそも大迷宮の地図がこの一枚に丸々収まるの無理がある。それにマーリンガンがこの地図寄越したってことは多分意味があるんだろうし」
わざわざ地図に道順を書いてる。手間だろうにそこまでするのはきっと意味があるんだろう。
「確かに、あやつが直接言ってきたからには何か意図があるのかもしれぬ。ノクターン」
「……、…………」
ノクターンは複雑そうな顔をしていた。
きっとノクターンが悩んでいるのはグラーイの事でだろう。
言っていることは分かるが、納得できないという顔だ。




