空賊必須スキルなんですか???
「乾杯!」
「かんぱーい!!」
クレイの音頭でジョッキがぶつかる。
中身はお酒ではなく水だが、あまりにも美味しくていくらでも飲める。しかもこちらも氷がたくさんで、それだけでテンションが上がった。
これは絶対に氷室があるのだろう。その証拠にメニューもケテルに比べて数が多い。氷があれば肉や野菜を新鮮な状態で保存が出来るからだろう。
隣の地域だから対して変わらないだろうと舐めていたけど、所変わればなんとやらの方だ。
「絶対に氷作れるようになろう。…ん?」
美味しいウサギシチューを食べていると、隣に座るクレイが神妙な顔で後ろを気にしていた。
「どうしたの?」
「しっ」
話し掛けると、クレイに静かにとジェスチャーされる。なんだろうと、俺も【千里眼/見通し】を発動して後ろの状態を確認した。
すると、俺達のすぐ後ろの席に探索者達が酒を片手に何かを話していた。
もしかして聞き耳を立てているのか。
俺も真似をして耳を済ませてみたけど、雑音が多くて聞き取れない。
もしかしたらクレイは聞き取りが出来るスキルを持っているのだろう。空族ならそういうスキルを持っていても不思議ではない。何せ飛行船の甲板にいる間、声が強風で聞こえなくて、俺は両手を耳に当てていたのに団員達はそんな素振りをしていなかったから。
後で何の話だったのか聞こうと、そう思いながら俺はまたシチューにスプーンを差し込んだ。
「あー!食った食った!」
ドルチェットがお腹を擦りながら満足そうに言う。そんなドルチェットをジルハがため息を吐きながら注意した。
「下品だよドルチェット」
その言葉にドルチェットはムッとしたのか、ジルハに言い返した。
「なんだよお前、親父みたいなこと言うな」
「え…、いやいや…誰だってそういうよ」
「えー??」
言う言わないの二人の攻防を後ろから見ながら宿へと戻る途中で、先ほどのやり取りを思い出して、クレイに訊ねた。
「そういえばさ、さっきのアレ、なんだったの?俺じゃあ聞き取れなくてさ」
「ああ、アレか」
みんなが何だとクレイの方へ意識を向ける。
「探索者達の噂話だ。彼らの言うことには、この近くに首都大迷宮へ繋がる通路を発見したっていうやつさ」
「首都大迷宮??」
なにそれ、と俺が聞き返せば詳しく説明をしてくれる。
「コクマーの首都、アイーアツプスが管理している地域の大多数を占める大迷宮の事だ」
「ほー」
大迷宮はよく聞くが、首都が管理しているのは知らなかった。
「でもそれが何なの?」
そこまで噂されるようなことなのか、俺は全く分からなかった。
だけど、アスティベラードは何か思い付いたことがあったようだ。
「…もしや、首都はその大迷宮に潜る物に支払いを命じておるのでは?」
どういう事だ?と視線でアスティベラードに続きを促す。
「さすれば首都は効率よく儲かり、一攫千金を夢見る者は仕方なく払う。更には手に入れた宝の何割かは献上しなければならない、というのもあるかもしれんな。それを仮定して考えれば、恐らく噂の真意はこうだろう」
ふ、とアスティベラードは口許に笑みを浮かべる。
「ただで宝の山へと踏みいることが出来る素晴らしい場所が見つかった。そうであろう?」
おお、とクレイが感心した。
「アスティベラード大正解だ」
クレイに誉められて得意顔のアスティベラード。そうであろうそうであろう、とアスティベラードの幻聴が聞こえてくるようだ。
だけど、俺はそこで疑問がひとつ浮かんだ。
「でもそれ俺達に関係ないんじゃない?」
こちらは迷宮には興味がない。行く目的もないのだ。
しかしクレイは「いいや」と否定する。
「実はそうでもない。繋がっている、ということはだ。その大迷宮から流れてくるモンスターもいるはずだ。大迷宮は大きい分、モンスターの種類もレベルも質も桁違い。それをちょっと狩るだけでも金になる。なにも宝はとる訳じゃないんだ。悪いことではない。だろ?」
だろ?とクレイに同意を求められた。
考えた。確かに盗人の真似をするわけでもないし、何なら害虫駆除をするようなものだ。
「……そうなのかな??」
念のためにもう一度考える。しかし考えれば考えるほど分からなくなったのでアスティベラードに振った。
「そうなの?」
「私に聞くな」
宿に戻り、明日の準備をしようとしたところで、突然マーリンガンから通信が入った。。
「はい、もしもしディラです」
「『はいはーい!マーリンガンだよー!今どこら辺かな?』」
お馴染み小型マーリンガンが現れて、寝台の上で腰に手を当てながら辺りを見回す。
「『ふむ、造形が少し違うね。無事にコクマーに着けたようで何よりだ』」
よいしょと俺も寝台に座る。
「ところで何か用なの?」
マーリンガンが「ああ、そうそう」と言いながら寝台に座る。
「『実は頼みたいことがあってね。迷宮の中にあるとあるものを探してほしい』」
そう言ってマーリンガンはイラストを見せてきた。
そこに描かれていたのは真っ黒の四角い、いや、長方形の物体だった。




