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気分は的当てゲーム

 

 夜中、俺はのっそりと起き出した。


「……ポットンか…、怖いな」


 みんなを起こさないようにハンモックから下り、扉に下げられているランタンを手にトイレに向かう。

 扉を開けると、この世界で見慣れたトイレだった。

 違いはといえば個室なのに風があることか。


「こわいこわい…」


 そういいながらも何事もなく終えて部屋に戻ると、隣のハンモックで寝ているジルハに違和感を覚えて見てみた。

 頭まですっぽりとタオルケットを被さっていたジルハだが、今はそのタオルケットがずれていた。その時、何故だかジルハに違和感を覚えた。

 なんだろうか。


「?」


 思わずスキルの【夜目】を発動。すると、ジルハの頭に見慣れない物体がくっついていた。それは一見すると獣の耳のようなものだった。

 手の方も見ると、人の手にしては爪が長く、掌と指に肉球のようなものがある。

 なんとなく獣人みたいだなと思いながら俺はジルハのずれていたタオルケットを直して、自分のハンモックに戻ると夢の中に戻っていった。




 翌朝。

 目が覚めた俺はなんとなく隣のハンモックのジルハを眺めた。顔色は良くないけどいつものジルハだ。

 夜中にジルハの頭に獣の耳のようなようなものが付いていた気がするけれど夢だったのかな。

ハンモックから降りてジルハのタオルケットをそっと捲ると、いつも通りの何もない頭だった。


「なんだ夢か」


 捲ったタオルケットを戻すと、朝の景色を見ようと部屋を後にしたのだった。









 山脈越え、2日目。

 朝の雑用をこなし、一旦部屋に戻って朝御飯を摂っていると、突然船内が慌ただしくなった。まだドルチェットとノクターンはダウン中の為、アスティベラードと、ようやく回復したジルハと音のする上部を見上げていた。


「どうしたんだろ」

「クロイノがざわついておる」

「クロイノが?」


 アスティベラードのすぐ側で、小型クロイノが上を見上げて尻尾をしきりに振っていた。まるで小鳥を狙って変な声を上げる猫のようだ。

 天井を見上げていたジルハが、何かに気が付いたように窓へと視線を向けた。


「羽音がする」

「羽音?」

「たぶん、鳥みたいな……けど、凄く大きいやつ?」


 こんな、と、ジルハは目一杯両腕を広げた。

 それだけで既に俺の頭にある、鳥候補が全滅した。

 とすると残ったのはモンスターだ。


「……ちょっと様子見てくる」




 甲板に上がると一見コウモリのような巨大な鳥に囲まれていた。

 顔はフルーツコウモリなのに翼は鷲。けれど鍵爪が翼から伸びていて、それを使って攻撃を仕掛けていた。


「ズキーヴチだ」


 そのモンスターの名前はズキーヴチ、別名山脈の番人。普段は大人しいモンスターだが、ある条件で豹変する。

 それは子育てのタイミングで、縄張りに侵入すること。


 相手をしつこく追い回して、鋭い爪で仕掛けてくる。


「気嚢から離せ!!落とされるぞ!!」


 船員が叫んでいるのを聞いて、俺は気嚢に目を向ける。

 気嚢に三頭ほどズキーヴチが纏わり付いていて、鋭い爪を引っ掻けて破こうとしていた。

 気球を引っ掛かれて穴を開けられれば墜落する。

 幸いにも、気嚢に防幕を張っているからまだ耐えられてはいるけれども、それも長くは持たない。

 船員が指示を出しながら矢を射ってズキーヴチを落とそうとしていた。

 軽い音を立てて矢が飛んでいく。何かの魔法が付属しているのか、気嚢を滑るように飛んでいき、ズキーヴチのすく側を通過した。

 風が強いせいかうまく当たらないようだ。


「そっち行ったぞ!!!」

「やばい!破かれる!!」


 特に大きな個体が甲板から離れて気嚢にしがみつき、鍵爪で激しく蹴りをいれている。その攻撃で防御用の魔法陣が掠れるのが見えた。


 すぐさまエクスカリバーを展開し、大きな個体へと向けて矢を放つ。矢は真っ直ぐに飛び、大きな個体の胸と頭に命中した。

 ぐらりと体勢を崩してズキーヴチが落ちていく。


「次!」


 すぐに近くの別の個体にも次々に命中させていき、ズキーヴチに狙いを定めた。

【回避】を発動し、ズキーヴチを回避しながら矢を射ていき、最後にズキーヴチを狙ってきた巨大な鳥をも仕留めると、ようやく飛行船から離れていった。

 ふぅー、と息を吐く。


 船員から一斉に歓声が上がる。


「すげーなお前!見直したぜ!!」

「見た目によらずやるじゃないか!!」

「クレイみたいだったぞ!!」

「うわわわ!!」


 揉みくちゃにされ、盛大に称賛された。

 胴上げの最中、船の前方にある建物、操縦室の方からダッチとクレイが駆けてきたのが見えて視線で助けを求めたが、状況を察して途中で足を止めたクレイに保護者のような暖かい視線を向けられるだけで終わったのだった。


 その事件の後、信用度が上がったのか監視の目が緩んだ。

 結果オーライである。




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