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暇潰しを強奪しました


 

「出立!!!」

 

 飛行船が浮き上がる。

 丸窓から見る景色が下へと流れ、飛行船が浮上しているのが分かった。

 アジトを出ると、さっきまで晴れていたのに結構な量の雲が出ている。その雲に紛れるようにして上昇し、ある程度の高度に至ると、前進し始めた。

 風の影響からかとても揺れる。

 

「ひぃ…、…お、小川に揺れる木ノ葉舟は、ゆらりゆらりと揺蕩って、見知らぬ地へと至るため、波に帆を立て走り出す…、一筋の光る道よ、惑うな揺れるな前を向け、走れ走れ果てへと至れ…[イーサマズィヨーイ]…、うっぷ…」

 

 ノクターンが必死に酔い止めの魔法を唱えているが、効き目は弱いらしい。

 これはノクターンに聞いた話だが、魔法の発動において効果を最大に引き出す条件というのがあるらしい。

 まず一つは熟練度。

 意外なことだが魔法にも熟練度、レベルが存在するらしくそれは正しく使えば使うほど経験値が溜まってレベルが上がり、一定のレベルに至ると更に効果の上がる詠唱が見えるようになるらしい。そうしていくことでその魔法の精度、効果を上げていくんだとか。

 それともう一つは集中力。

 魔法を発動する際にちゃんと集中してなければ弱くなってしまう。なんとなくスキル発動時と同じようなものなのだと理解した。

 実はスキルを発動するのにも消費するのがある。

 魔力少量と、(※)気力だ。

 ※ブリオンではSPと表記されていたそれにはゲージがあり、スキルを発動すれば消費される。魔力と違うのは、これが尽きると異常状態“無気力”が発生し、最悪死ぬ。

 これの消費、ノクターン曰くイメージの注入が鮮明なほど魔力がしっかりと肉付いて効果を最大に発揮する。

 ところが今回は船酔いが酷くて集中がうまく出来ずに効きが悪い、というわけだ。

 

 俺はあまり酔わないために、マーリンガンからそういった魔道具の製作法方を教わらなかった。

 教わっとけば良かったなぁとか思いつつ、気休めになるならとエクスカリバーを起動して、医療システムスキル【回復薬】を発動し、対象者をノクターンに設定しておいた。

 これで魔法を発動できるくらい回復すれば良いんだけど。

 俺の持つこのスキルは、自分以外に指定すると、その効果は半分程度まで落ちてしまう。しかも俺はこのスキルよりも回避ばかりを育てたので、ノクターンにとって実質このスキルは低レベル。焼け石に水ほどの効果しかない。

 でもやらないよりはマシかなと、思ったゆえの行動だった。

 

 だが、時間が経つに連れてますます船の揺れば酷くなった。

 思ったよりも激しい揺れにノクターンと、予想外のドルチェットが早々にダウン。

 そして意外なことにジルハが顔色を青くしてハンモックへと横になって耐えるようにして目を瞑っていた。船酔いかと思ったのだが。

 

「どうしたの?ジルハも船酔い?」

 

 ジルハに代わってグロッキー状態のドルチェットに「そいつは気圧病……」と一言返された。

 なんなのだろう、その気圧病とやらは。

 

「ノクターンはこうなればしばらく使い物にならん。私も疲れたゆえ、少し寝る」

 

 そしてアスティベラードは疲れたらしく、寝るといってハンモックへ横になるとすぐに寝てしまった。ロエテムもノクターンの側の床で寝転がり、クレイは先程やってきた船員に呼ばれて行ってしまった。

 床に胡座をかいて、俺はポツリと呟いた。

 

「……暇だな」

「ケイケーイ」

「お前は楽しいか?何も見えないだろ?」

 

 いつもはアスティベラードかノクターンのどちらかと居るトクルが、窓際で外を見ている。

 俺も暇潰しに窓から外を見るが、ずっと雲のなかを飛んでいるようで常に白一色でつまらない。

 でもトクルは鳥だからこの景色が懐かしかったりするんだろうか。

 

「……俺も寝よ」

 

 仕方ないので安定するまでは大人しくするかと、俺もハンモックへ寝転がり目をつぶった。

 

 

 

 

 

 ようやく安定し始めたらしく、揺れが収まってきていた。

 窓を見ればまだ白い。未だに雲の中を進んでいるようだ。

 俺は大きく欠伸をしながら伸びをする。

 

「暇だーぁ」

 

 先程も同じ言葉を言った気がするが、それ程までに暇だった。

 皆理由は様々だけど寝てしまっているので相手もおらず、本気で暇をもて余していた。

 どうしたものかと頭を捻り、唐突に良い案が浮かんだ。

 暇ならば、暇潰しもかねて掃除くらいすれば、少しは警戒が緩むのではなかろうか。

 

「よし!そうしよう!」

 

 そうと決まれば俺の行動は早かった。

 部屋から出て、見つけた船員に俺は駆け寄る。

 うわ!と嫌なものを見たような目をされたけれど俺はめげない。

 

「暇なので何か仕事をください」

「ハァ?」

 

 何かの冗談か?と言いたげな視線に俺は同じ言葉を繰り返すと、船員は冗談でないことを理解した。

 

「んじゃ…、これでもやってろよ」

 

 心底嫌そうな顔をしながらも、船員から掃除道具を渡された。

 望んでいたものを渡されて、俺はその船員にお礼を言うとすぐに掃除を開始した。

 

 失敗しないようにすごく慎重に、それでいて出来る限り徹底的に細かく掃除をした。ちょうど良い暇潰しに夢中になっていれば、あっという間に時間が過ぎていく。

 

 

 

 

 

「ちょっと休憩しよーっと!」

 

 掃除道具を片付けて部屋に戻ると、ちょうどクレイと部屋の前で遭遇した。

 手には机と、大きめのかごがあった。

 

「ちょうど良かった。昼御飯を持ってきたんだ。扉開けてくれ」

 

 


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