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のっぺらぼう事件

 

 

 いよいよ本番がやってきた。

 

「じゃ、作戦通りに」

「うす」

「うむ」

 

 クレイの合図で馬車の床にある小さな収納スペースにクロイノが潜り込み、続いて俺も入り込んだ。

 普通なら人一人が入ることなど不可能はそこは、クロイノというチートが存在して初めて成せるものだった。

 クロイノがきちんと俺を収納したのを確認すると、上から穴にピッタリの板を乗せて、さらにその上から荷物を乗せて蓋をする。

 これでまさかこんなところに人が隠れているとは思うまい。

 

「 止まれ 」

 

 検問所へ着いたらしい。知らない男の声が聞こえる。

 一言二言クレイと言葉を交わしている。

 本当ならこのままスムーズに終われば良かったのだが、そうはいかないらしい。

 途中で「なんだこの馬は?」と質問を投げられられていたが、ノクターンが人形使いのスキルを持つ魔術師だと伝えて事なきを得た。

 これで終わりかと思いきや、男はさらに続ける。

 

「 乗員の顔を皆見せて貰おう。今指名手配犯を探しているのだ、協力してくれるな? 」

 

 真っ暗な中でビクリと俺は身を固まらせた。

 手で口を塞ぎながら、俺は出来うる限り気配を消した。

 良かった。さすがに顔をしっかり見られたら【隠密】が機能しなくなっていた。

 

 皆確認し、ロエテムの兜を無理やり上げたらしい男が軽く悲鳴を上げていた。

 そりゃそうだ。人間かと思ったら、兜の中身は木製ののっぺらぼうだったら誰でも驚く。

 その後少し揉めたが、ここで「あの…、ワタシの人形です……」と悲しそうな声でようやく理解したらしい男が「ったく紛らわしい!さっさと行け!」と解放してくれた。

 これは、ロエテムも一緒に隠れていた方が良かったんじゃないかと俺はクロイノの中で思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「よいしょ」

 

 ずるりとクロイノから這い出ると、これでもかと落ち込むノクターンとロエテムがいた。

 

「すまんな、まさかそっちの方に被害が出るとは思わなかった」

「元気出せって」

「今度ディラさんにロエテムさんの顔作って貰いましょう」

「あの男め!歩く度に小石で小指を突く呪いを掛けてやるわ!」

 

 そんなノクターンを慰める面々。ノクターンにとってはとんだ災難であった。

 そこに俺が向かい、ロエテムの肩を叩いた。

 振り替えるロエテム。

 これだけ見れば人形とは思わない。反応が人だ。

 

「マーリンガンに顔の作り方教えて貰うね」

 

 そう言うと、ロエテムは無言で万歳をした。

 

 

 

 

 

 

 アオゾアに到着し、すぐさま宿に籠城した。

 教会の連中の中には【特定】なんていうスキルを持っている者もいるらしい

 この特定は隠れているものを探すスキルで、要は【隠密】で動く人物を【特定】して暴く、弓兵職や暗殺職にとっての天敵スキルだ。

 出現率が低いスキルだけど、きちんと手順を踏めばちゃんと発現できてしまうスキルを警戒して、今回は本当に宿でお留守番になってしまった。

 今までは滞在時間も短かったし、何よりもそこまで教会関係と遭遇していなかった。

 

窓際から街を見下ろすと、すぐ下の道を教会関係社らしき人が横切っていた。

 手には紙袋。買い物をしていたようだ。

 そこから上へと視線を移せば大きな教会が顔を覗かせている。

 

 規模はこの世界に召喚されたときに見た教会と良い勝負しそうな程に大きい。

 皆はそれぞれの用で出掛けてしまったせいで俺は完全に暇を持て余していた。

 暇だな、暇だからマーリンガンにロエテムの顔について相談しようかなと耳に手を当てた時、ガチャリと扉が開いた音がして俺はそちらへと顔を向けた

 そして盛大に驚いた。

 

「ちょっと!どうしたのそれ!?」

 

 そこにいたのは頬を腫らしたクレイと、心配そうな顔でチラチラとクレイを見るジルハであった。

 


 

「どどどどうしたの???喧嘩でもした???」

 

 慌てて駆け寄ってクレイの頬を確認すると明らかに殴られた痕だった。そこでハッとし、まかさと思いながら俺はジルハを見た。もしかして殴りました?と視線で訴える。

 するとジルハは俺の視線に気付いて「違います違います!」と首を横に振る。

 違うらしい。

 俺とジルハの様子で勘違いしていると察したクレイが訂正する。

 

「ああ、これの事か」

 

 腫れた頬を指差す。

 改めて見るとやはり痛そうだ。

 

「喧嘩とかじゃない。ちょっとしたケジメをつけてきただけだよ」

「ケジメ…?」

 

 俺は怪訝な表情を浮かべた。

 なにをどうケジメをつければ頬を腫らすことになるのか。それにしてもケジメとは、一体何をやらかしたのか。

 だが、クレイは詳細を説明することなく話を続けた。

 

「まぁ、とにかくその結果飛行船に乗せて貰う事になったから。詳しい話は皆が帰ってきてからだ。二度も同じ報告するよりか、揃った方が効率が良いしな」

 

 そんなわけでクレイの腫れた箇所を手当てしながら待つ事になった。

 手当てしていて、怪我をしたのは頬だけじゃないことが分かった。鳩尾も内出血していた。

 鞄からマーリンガンお手製湿布薬を貼り付ける。

 盾職のクレイは、職業補正で【防御力(大)】や【常時発動/頑強】などのスキルがあるそうだけど、それなのにこの腫れ様は驚くしかない。

 スキルをあえて切っていたのか、それとも相手もそれを無効化するスキル所持者だったのか。

 どちらにしても俺はまだ会ってもない人物に恐怖を覚えた。

 

 


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